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380、新しい隠れ家

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「ええ、ここよラエサル。少し離れていて、私が扉を開けるから」

 ララリシアのその言葉にラエサルは頷いた。

「頼んだぞ、ララリシア」

「うん! ラエサル」

 まるで父と娘のような雰囲気の二人に、アンジェは相変わらず複雑な表情だ。
 ララリシアに向けられる眼差しが、自分に向けられるものとよく似ているのが原因だとは分っている。

「なによ、ラエサルったら!」

 不機嫌になりながらも、他人から見れば自分もあんな風に大事にしてもらっているのだと思って少し嬉しい気もした。
 一方で、ララリシアは壁に右手を当てて何かを探るように目を閉じている。

「だいぶ古くなってるわね、でも……」

 ララリシアの指先が形を変える、それは液体状に変化して壁の隙間に染み込んでいく。
 青い髪の少女は暫くすると何かを感じた様子で、瞳の光で3Dホログラムで映像を作り上げるとそれを操作していく。
 エイジは思わず尋ねた。

「大丈夫か? ララリシア」

「任せて、今この施設のメインシステムに入り込んでいるところ。直ぐに内側からここのドアを開けるから」

 暫くすると、エリスとリアナが驚いたように目を見開く。

「見て! あれを!!」

「壁が……」

 通路の壁には、人が通り抜けが出来る程の大きさの黒い穴が開いていた。
 そして暫くすると、先程壁に染み込んでいったララリシアの体の一部が小さなスライムのように現れて彼女の体に戻っていった。
 オリビアが感心したように言った。

「凄いわね、ララリシア。一体どんな仕組みになってるの?」

 そう言って、先程液体状に変化したララリシアの指先を見つめていた。
 彼女は首を傾げると。

「さあ、私にも分からないわ、生まれた時からこうだったんだから。それよりも早く中に入りましょう。リカルドのことだってあるし、せっかくの隠れ家が誰かに見つかってしまったら意味ないもの」

「え、ええ。そうね」

 そう言いながらオリビアはララリシアと共に中に入っていく。
 ラエサルやキーラ、そしてエイジたちも後に続いた。
 それを確認したかのように、開いていた黒い扉はしまっていく。
 ララリシアが操作しているのだろう。

(さっきの施設もそうだったけど、入り口が小さくて隠されているのはレジスタンスのアジトだからか)

 敵に知られないように作られた拠点なのだろう。
 だが一方で中は立派なものだ。
 ララリシアが何らかの動力を稼働させたのだろう、辺りに光が満ちていくとここが先程の拠点に見劣りしない程の施設だと言うことが分かる。
 エリスとリアナ、そしてアンジェは思わず声を上げる。

「うわぁ! 広いわね」

「ほんと、さっきの場所と変わらないぐらいだわ」

「へえ、中々いい場所じゃない!」

 エイジも頷いた。

「ああ、確かにな!」

 ララリシアが得意げに頷いた。

「そうでしょ! 私が選んだんだから間違いないわよ」

 そんなララリシアにオリビアが尋ねた。

「ねえ、ララリシア。ここにもお風呂はあるのかしら?」

 エリスとリアナもそれを聞いて目を輝かせる。
 そして、ララリシアに駆け寄った。

「どうなの? ララリシア!」

「さっきの場所でお風呂に入れるんじゃないかって思ったのに、あんなことになったものね」

 そんな様子を眺めながらラエサルはため息をつく。

「全くお前たちときたら」

「いいじゃない、ラエサル。女は好きな男の前ではいつだって綺麗でいたいものよ」

 キーラのその言葉に、エリスたちは少し頬を染めてエイジを見る。
 すると、ララリシアは施設の奥にある一角を指さして言った。

「ええ、あそこが寝室や浴室になっているはずよ」

 それを聞いてエリスたちは、顔を見合わせると一斉に駆けだした。
 エイジは慌てて後に続く。

「おい、みんな! 待てって、安全かどうか確かめるからさ」

 休憩所のような場所になっているそこは、近未来のカフェのような雰囲気になっている。
 そしてその奥には、内部が白く流線型になっている大きな部屋があった。
 中には何も置かれていない。

「ここは?」

 エイジが思わず尋ねると、ララリシアが部屋の壁についているパネルに右手で触れた。
 すると壁の中からいくつものベッドが現れて、綺麗にセッティングされる。

「ここは寝室よ。貴方たちの人数の何倍もあるから安心して」

 ララリシアの話では使用後は自然に壁の中に入り、汚れは浄化されて再利用されるらしい。
 エリスとリアナがそれを聞いて目を丸くする。

「驚いたわね……」

「本当に凄いのね魔法科学って!」

 ララリシアはちょっと自慢げにそのベッドに腰を掛けると、更に奥にある部屋を指さした。

「浴室はあそこよ。私たちだけで使うには大きすぎるかもしれないわね」
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