上 下
226 / 254
連載

381、体を包む光

しおりを挟む
「浴室はあそこよ。私たちだけで使うには大きすぎるかもしれないわね」

 ララリシアの言葉に、エリスたちは目を輝かせる。

「そんなに広いの? ララリシア」

「ふふ、こんな迷宮の奥でゆったりとお風呂に入れるなんて夢みたい」

「本当ね! でも、魔法科学文明のお風呂ってどんな感じなのかしら?」

「そうね、そう言われると確かに気になるわね」

 女性陣は興味津々と言った顔で、寝室の奥にある浴室への扉を眺めている。
 ララリシアはそんな彼女たちに言う。

「ついてこればわかるわ。ふふ、エイジも一緒でいいわよ、安全を確認したいんでしょ?」

「え!? お、俺が一緒に?」

 ララリシアの思わぬ言葉に、動揺するエイジ。
 エリスとリアナも顔を見合わせた。

「ちょ! ララリシア、それはまずいわよ」

「うん……」

 ララリシアは肩をすくめると一同に言う。

「いいから、装備品はそこに置いてついてきて」

 ララリシアがそういうと、壁から白いテーブルが現れる。
 エイジは鎧や剣を外しながら言う。

「分かった、これでいいのか? ララリシア」

「ええ、エイジ」

 テーブルの上に次々と置かれる鎧や剣、そしてエリスとリアナの魔法使いの杖。
 それを見てララリシアは頷くと、奥に進んだ。

「じゃあついてきて」

 一同は顔を見合わせて、奥の扉に向かうララリシアの後に続いた。
 彼女が壁に手を当てると静かに目の前の扉が開く。
 すると前方には10m程の通路が見える。
 エイジは首を傾げた。

「ここが浴室? そうは見えないけどな」

 エリスとリアナも同意する。

「そうね」

「ただの通路に見えるけど」

 アンジェとオリビアも首を傾げながら。

「この通路の先に浴室があるのかしら?」

「ええ、きっとそうだわ」

 すると……
 エイジは自分の服が淡い光を帯びていくのを見た。

「な、なんだこれ!?」

 エイジだけではない、エイジの両隣で歩くエリスもリアナも、自分たちのローブが淡い光に包まれていくのを呆然と眺めていた。
 その光は、二人のローブだけではなく体を包み込んでいく。

「きゃっ!!」

「やだ!!」

 エリスとリアナは思わず声を上げた。
 突然、自分が身に着けているローブが消えていくのを感じたのだ。
 まるで、その場に裸で立っているような感覚に二人は思わず胸を隠す。
 エイジは、その悲鳴に慌てて二人を見つめた。
 それがさらに二人の美少女の悲鳴に拍車をかける。

「いやっ!!」

「エイジの馬鹿! こっちを見ないで!!」

「そ、そんなこと言われたってさ……」

 エイジは、自分の服も消え去っていくのを感じて動揺する。
 今はまだ光が体を包んでいるが、もしこれが消えたら。

(何だこれ……どうなってるんだ!?)

 慌てて二人から目をそらすと、同じように光に包まれているアンジェやオリビアと目があった。
 二人はやはり悲鳴を上げる。

「ちょ! 見ないでエイジ!!」

「いやぁあああ! エイジの馬鹿! エッチ!!」

 片手で胸を隠しながら、オリビアが思い切りエイジの頬を平手打ちする。

「痛ってぇええ!!」

 エイジは思わず目をつぶりながら頬をさすった。
 そして叫ぶ。

「お、おい! ララリシア、一体どうなってんだこれ!?」

 ララリシアがクスクスと笑っている。

「エイジ、目を開けても大丈夫よ。みんな裸になったわけじゃないから」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

黙秘 両親を殺害した息子

ミステリー / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:2

本当にあなたが運命なんですか?

BL / 完結 24h.ポイント:205pt お気に入り:578

人工知能でif歴史〜もしもの歴史シミュレーション〜

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:248pt お気に入り:0

付き合ってもいないのに振られた男

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:46

こんな寒い夜には側にいて欲しい

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

スピリット・マイグレーション

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:1,274

ウサ耳おっさん剣士は狼王子の求婚から逃げられない!

BL / 連載中 24h.ポイント:532pt お気に入り:2,765

いい加減、諦めてくれませんか?

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:284

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。