成長チートになったので、生産職も極めます!

雪華慧太

文字の大きさ
188 / 254
連載

343、妹分

しおりを挟む
「なら勝手にするのね。今の貴方じゃラエサルの役には立てない、それでもいいのなら好きにしなさい」

 キーラのその言葉に、アンジェは悔しそうに唇を噛み締めた。
 先程、一瞬にしてヒュドラを倒した黄金の蜘蛛使い。
 その腕は確かに本物である。

 ラエサルにさえ勝ったというアンリーゼ。
 そして、リカルドのあの力。

(あの時、私は何も出来なかった……)

 あそこにいたのが、キーラだったら。
 ラエサルやエイジと協力して、リカルドを捕らえることが出来ていたのかもしれない。
 目の前の女は、そう思えるほどの腕を持っている。

(あんな状況で背後からヒュドラが現れたのに、ラエサルはあの女に対して手助け一つしなかった)

 それは、キーラへの信頼の証だろう。
 ラエサルが、いつもアンジェを保護者としての眼差しで見てくれているのは分る。
 アンジェはそれが嬉しかった。
 まるで本当の娘のように自分を心配してくれる、ラエサル。
 彼にとって自分は特別なんだと感じるのが誇らしくて、嬉しかったのだ。

(でも……それじゃあ駄目。いざという時に足手まといになりたくない。ラエサルを助けられるようになりたいの!)

 その為に冒険者になる道を選んだのだから。
 唇を噛んでキーラを見つめるアンジェ。

「分かったわ。貴方の言うことを聞けば本当に強くなれるのね?」

「ええ、素直に私の言うことを聞けばね。そうね、手始めに一つ……」

 そう言ってアンジェに歩み寄る、キーラ。
 一瞬、たじろぐアンジェ。

「な、何よ? 手始めにって」

 後ずさるアンジェ顔の前に、キーラは美しい顔を突き出すと言う。

「これからは、キーラ姉さんって呼びなさい」

 唐突な申し出にアンジェは目を白黒させる。

「どうしてよ!」

「私は師匠なんて呼ばれるがらじゃないし、貴方みたいなお子様にキーラなんて呼び捨てにされるのは御免だもの。妹分にしてあげるんだから感謝しなさい」

 それに対して、ぐっと言いたいことを堪えてキーラを睨みつけるアンジェ。
 どうしても強くなりたいのだろう、小さな声で囁くように言った。

「……き、キーラ姉さん」

「あら、聞こえないわ? アンジェ」

 そう言って意地悪く微笑むキーラに、アンジェは叫んだ。

「キーラ姉さん!! これでいいでしょ! 意地悪!!」

 エリスとリアナはそんな二人の様子を見て、不安そうにラエサルに言った。

「ラエサルさん、大丈夫なの?」

「ええ、師弟にするには何だか相性が悪い気がするけど」

 エイジもそれを聞いてふぅと溜め息をついた。

「だよな、アンジェも不服そうだし、キーラさんだってアンジェのこと気に入らないみたいだもんな」

 ラエサルはエイジの言葉を聞いて笑う。

「心配するな。アンジェはともかく、キーラはアンジェを気に入ったようだからな」

「あれでですか?」

 エイジは呆れたように問い返す。
 キーラはラエサルに歩み寄ると、その腕に自分の腕を絡めアンジェに言った。

「なんなら、キーラお母さんでもいいわよ? ふふ、ラエサルがお父さんなら、将来私のことをそう呼ぶことになるかもしれないもの」

「ん? どうしてそうなるんだキーラ」

 首を傾げるラエサルとは違い、アンジェにはその意味が分かったのだろう。

「ば、馬鹿じゃないの! 呼ぶわけないじゃない!!」

 声を荒げるアンジェ。
 その瞬間──
 キーラの表情が変わる。

「しっ……私の蜘蛛が敵の気配を感じたわ。丁度いいわね、アンジェ。貴方の今の実力がどの程度なのか、限界を見せてもらうわよ」
しおりを挟む
感想 665

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

ReBirth 上位世界から下位世界へ

小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは―― ※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。 1~4巻発売中です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。