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アンジェとターニャ
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理由はどうあれ女の子の母親は見つかったのだ。パティはおかしな親子にあいさつをして帰ろうとするのを、女の子が止めた。
「これ。知り合ったのも何かの縁だ。わたくしの屋敷に来なさい」
パティは迷惑になると思い断ろうとしたが、女の子には有無を言わない圧力があった。
パティは肩にとまっているピンキーに目くばせをしてから、仕方なくうなずいた。
パティたちがにぎやかな商店街を歩いていると、目の前にガラの悪そうな二人組が立ちはだかった。
「おいおい、クソガキ。ずいぶんと高価な宝石を身につけているじゃねぇか。身につけている宝石をすべて置いていけば命だけは助けてやる」
パティは小さく舌打ちした。やはり女の子は宝石を狙う悪者に目をつけられてしまったのだ。パティは辺りを見回した。風魔法を使うピンキーに男たちを倒してもらいたいが、ここにはたくさんの人々がいる。
パティは女の子と母親を守るように前に出ようとすると、女の子がパティの手を引いた。
「娘。ここはお母さまに任せておけ」
パティは驚いて女の子を見下ろした。女の子の母親、美しい女性が目の前のガラの悪い男たちを倒せるとは、とうてい考えられなかった。
美しい女性は、素早く女の子をかばうよう前に出ると、わが子に危害をくわえようとする男たちをにらんだ。
「おうおう、綺麗なお姉ちゃん。俺たちと戦おうってのか?たいした度胸だな!」
「眠れ!」
美しい女性が大声で叫んだ途端、二人の男たちはバタリと倒れてしまった。
美しい女性はコジモと同じ、人を操る魔法なのだ。
「お母さまの魔法は《スリープ》。地味な魔法だが、中々有能だ」
パティが驚きながら美しい女性と倒れた男たちを見ていると、女の子は得意そうに言った。
パティは不思議な親子に導かれながら、見上げるような豪邸に連れて行かれた。
客間に通されると、ふかふかのソファに座らされ、メイドによってすぐに紅茶とお菓子が運ばれてきた。
パティは豪華なおもてなしを受けた事が初めてだったので、ブルブル震えながら紅茶を飲み、お菓子を食べた。
「わぁ、美味しい」
「そうであろう。紅茶の産地であるジャロ産の紅茶に、わたくしの自慢の料理長の作るジンジャークッキーだ」
パティはうんうんとうなずきながらクッキーを食べた。
女の子はそこでようやく名を名乗った。
「わたくしはアンジェ。お母さまはターニャだ。娘、お前の名は何という」
パティはそこで初めて自己紹介をしていなかった事を思い出し、慌ててぺこりと頭をさげた。
「私はパティといいます。肩に乗っているのが友達のピンキーです」
「ほう。パティの魔法はテイムなのか?」
「は、はい!ピンキーだけではなくて、」
パティはショルダーバッグから小さなマックスとチャーミー、アクアを膝の上に出した。
「おお、可愛いのぉ。まだ仔犬と仔猫ではないか。・・・、亀はそれで大人なのか?小さいのぉ」
パティの向かいのソファに座ったアンジェとターニャは動物好きと見えて、頬をゆるめた。
パティは嘘をつく事に良心がとがめたが、トグサの助言通り魔法はテイムだという事に決めた。
アンジェはパティの側まで近寄って、マックスの頭を撫でながら言った。
「うむ。動物をテイムできるのは素晴らしい魔法だが、この者たちと冒険するのは何かと不便なのではないか?」
アンジェは大きな美しい瞳でパティを見上げた。その瞳は、パティの事を純粋に心配している事が見てとれた。
パティは苦笑いを浮かべながら答えた。
「冒険者をしていて大変な事はたくさんあります。だけどマックスたちがいてくれれば、私はどんな困難だって乗り越えられるんです」
「これ。知り合ったのも何かの縁だ。わたくしの屋敷に来なさい」
パティは迷惑になると思い断ろうとしたが、女の子には有無を言わない圧力があった。
パティは肩にとまっているピンキーに目くばせをしてから、仕方なくうなずいた。
パティたちがにぎやかな商店街を歩いていると、目の前にガラの悪そうな二人組が立ちはだかった。
「おいおい、クソガキ。ずいぶんと高価な宝石を身につけているじゃねぇか。身につけている宝石をすべて置いていけば命だけは助けてやる」
パティは小さく舌打ちした。やはり女の子は宝石を狙う悪者に目をつけられてしまったのだ。パティは辺りを見回した。風魔法を使うピンキーに男たちを倒してもらいたいが、ここにはたくさんの人々がいる。
パティは女の子と母親を守るように前に出ようとすると、女の子がパティの手を引いた。
「娘。ここはお母さまに任せておけ」
パティは驚いて女の子を見下ろした。女の子の母親、美しい女性が目の前のガラの悪い男たちを倒せるとは、とうてい考えられなかった。
美しい女性は、素早く女の子をかばうよう前に出ると、わが子に危害をくわえようとする男たちをにらんだ。
「おうおう、綺麗なお姉ちゃん。俺たちと戦おうってのか?たいした度胸だな!」
「眠れ!」
美しい女性が大声で叫んだ途端、二人の男たちはバタリと倒れてしまった。
美しい女性はコジモと同じ、人を操る魔法なのだ。
「お母さまの魔法は《スリープ》。地味な魔法だが、中々有能だ」
パティが驚きながら美しい女性と倒れた男たちを見ていると、女の子は得意そうに言った。
パティは不思議な親子に導かれながら、見上げるような豪邸に連れて行かれた。
客間に通されると、ふかふかのソファに座らされ、メイドによってすぐに紅茶とお菓子が運ばれてきた。
パティは豪華なおもてなしを受けた事が初めてだったので、ブルブル震えながら紅茶を飲み、お菓子を食べた。
「わぁ、美味しい」
「そうであろう。紅茶の産地であるジャロ産の紅茶に、わたくしの自慢の料理長の作るジンジャークッキーだ」
パティはうんうんとうなずきながらクッキーを食べた。
女の子はそこでようやく名を名乗った。
「わたくしはアンジェ。お母さまはターニャだ。娘、お前の名は何という」
パティはそこで初めて自己紹介をしていなかった事を思い出し、慌ててぺこりと頭をさげた。
「私はパティといいます。肩に乗っているのが友達のピンキーです」
「ほう。パティの魔法はテイムなのか?」
「は、はい!ピンキーだけではなくて、」
パティはショルダーバッグから小さなマックスとチャーミー、アクアを膝の上に出した。
「おお、可愛いのぉ。まだ仔犬と仔猫ではないか。・・・、亀はそれで大人なのか?小さいのぉ」
パティの向かいのソファに座ったアンジェとターニャは動物好きと見えて、頬をゆるめた。
パティは嘘をつく事に良心がとがめたが、トグサの助言通り魔法はテイムだという事に決めた。
アンジェはパティの側まで近寄って、マックスの頭を撫でながら言った。
「うむ。動物をテイムできるのは素晴らしい魔法だが、この者たちと冒険するのは何かと不便なのではないか?」
アンジェは大きな美しい瞳でパティを見上げた。その瞳は、パティの事を純粋に心配している事が見てとれた。
パティは苦笑いを浮かべながら答えた。
「冒険者をしていて大変な事はたくさんあります。だけどマックスたちがいてくれれば、私はどんな困難だって乗り越えられるんです」
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