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裁縫の魔法

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 パティとマックスたちがマイラの家に帰りつくと、夕食の準備を始めた。仕事から帰ってくるマイラのために美味しい食事を作りたいのだ。

 パティはチャーミーに土魔法で、トマト、玉ねぎ、じゃがいも、ズッキーニを作ってもらった。アクアに洗ってもらった野菜を細かく切る。ナベにオリーブ油を熱して野菜をいためる。水を入れて煮込み塩こしょうで味つけしたらミネストローネの完成だ。

 パティが食器を並べていると、マイラとデイジーが帰ってきた。デイジーはパン屋で焼きたてのパンを買ってきてくれた。

 マイラとデイジーは、パティの作ったミネストローネのスープを美味しいと喜んで食べてくれた。デイジーの買ってきてくれたパンもフカフカで美味しかった。

 夕食が終わって一休みした後、マイラの家のドアを叩く者がいた。こんな夜遅くに誰だろうとパティはいぶかったが、マイラは訪問者のあてがあるらしく、嬉しそうにドアまで迎えに出た。

 マイラの招きで五十代くらいの女性が入って来た。五十代の女性は、パティを一目見て驚いた声をあげた。

「まぁ、なんて綺麗なお嬢さんだ事!」
「でしょう、ポーラさん。ポーラさんの魔法で素敵なドレスをお願いします」

 どうやらポーラと呼ばれた女性は、パティのドレスを作るために呼ばれたらしい。ポーラの魔法は《ドレスメーカー》。

 ポーラはパティの顔を見てからうなずき、自分を抱きしめるような仕草をした。するとポーラは一反の布を持っていた。

 ポーラはかたずけたテーブルに布を広げて見せた。淡いピンクのシルクの布。その美しさにパティはため息をついた。

 マイラとデイジーはしげしげと布を見てから、別な色も見せてと頼んだ。ポーラが布に触れるたび、布の色はブルーやグリーン、黄金色になった。

 マイラとデイジーは、布の色が変わるたびにパティの胸に布をくっつけて、ああでもないこうでもないと話し合っていた。

 そしてついに、淡いブルーのシルクの布に決まった。次はサイズを測るといい、ポーラはパティをシュミーズ姿にした。

 驚いた事に、ポーラがパティの身体に布を巻きつけた途端、そでの無いワンピースになった。パティが驚いて口をパクパクさせていると、ポーラは流れるような動作で布を胸元にくっつけていく。すると胸元に見事なフリルができた。

 そで口もふわりとしたパフスリーブになり、あっという間に素敵なドレスが完成した。

「綺麗、」

 パティは思わず呟いた。姉たちも喜んでくれるかと思い、マイラとデイジーを見ると、彼女たちは難しい顔をしていた。

「ポーラさん。素敵なドレスだけど、うちのパティの可愛さをもっと引き立てるようなドレスにしてちょうだい」
「そうね。あたしのパティの美しさはこんなもんじゃないわ」

 マイラとデイジーの厳しい注文に、ポーラは嫌な顔一つせずにうなずいた。それから、マイラとデイジーは胸元につけるコサージュ一つ、ドレスのすそのフリル一つに注文をつけ、ドレス制作は夜遅くまで続いた。

 

 
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