上 下
62 / 212

パティのお手伝い

しおりを挟む
 マイラが冒険者協会の受付の仕事に行っている間、パティとマックスたちはマイラの家の掃除をする事にした。

 二日もお世話になっているのだ、パティたちは働かなければいけない。マイラの家は小さいので、掃除はすぐに終わった。

 次は薪作りだ。パティはマックスたちを連れて森に入ると、チャーミーにお願いした。木を育てて、と。チャーミーはニャッと返事をして、前脚で地面をつついた。

 地面から木の芽が伸び出し、巨木になった。次にピンキーが風魔法で大木に薪の大きさにカットした。その次にアクアが水魔法で雨を降らせ、木の中の樹液を洗い流した。こうすると早く薪を乾燥させられるのだ。

 最後はマックスの火魔法で薪を乾燥させる。パティは出来上がった薪を二本、両手に持ってカンと打ちつけた。乾いた高い音がする。良い薪の完成だ。

 大きくなったマックスとチャーミーの背中にたくさんの薪を積み上げて運んでもらう。今夜はマイラのためにパティが料理をするのだ。

 パティたちがマイラの家に戻ると、昼頃だった。デイジーがパティたちを昼食に誘いに来た。トグサたちとお昼を一緒にしようというのだ。

 トグサたちはパティの家族だ。パティは喜んでデイジーとマックスたちと一緒に店に向かった。

 トグサたちが冒険者の依頼から戻ると、いつもねぐらにしている宿屋の一階が食堂になっている。

 パティたちが食堂に入ると、気づいたコジモが手を振ってくれた。パティは小さくなったマックスたちが入ったショルダーバックを膝に置いて、席についた。パティの肩にはピンキーがとまる。

 エリオは食事の間、パティたちと離れていた間の冒険者の依頼の事を面白おかしく話してくれた。

 トグサたちはパティたちがどのような冒険者の依頼をこなしたのかしきりに質問した。

 パティは教会を作る手伝いをした事。歩く練習をしている時に出会った不死の老人の事を話した。トグサはひとしきりパティの話しを聞いた後、うなずいた。

「パティが経験したすべての事が学びになる。不死を願った老人の気持ちは、パティにはわからないかもしれない。私だって、彼の気持ちは理解できない。だが人は理解しなければいけない存在ではないと私は思う。パティは不死の老人を隣人として受け入れた。それで充分なのではないかな」

 トグサのおだやかな言葉が、パティの心にじんわり広がった。パティは不死の老人と出会って、少なからず動揺した。

 神さまの授ける魔法にじゃっかんの恐怖を感じたのも事実だ。トグサたちに胸のうちを話して、少しだけ心が軽くなった。

 重い空気になってしまったテーブルで、デイジーが口を開いた。

「ねぇ、聞いて?パティがね、今度の城下町のお祭りで、美少女コンテストに出場するの!」
「何?!パティが?それなら優勝したも同然だな!俺たちも応援に行こうぜ!」

 エリオは手に持ったエールのジョッキをかかげて大声で言った。

「エ、エリオさん!私なんかが優勝するわけないじゃないですか!」

 盛り上がるエリオを、パティは慌てて止める。エリオのとなりで肉にかぶりついているコジモが言った。

「そんな事ないよ。何たってパティは僕らの妹なんだ。きっと優勝するよ」


 パティは美少女コンテストに出て、観客に罵倒されたら嫌だなと思ったが、パティの家族たちが応援に来てくれるなら参加してみてもいいかと思った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

無職で何が悪い!!―Those days are like dreams―

アタラクシア
ファンタジー
銀色の蝶が海辺を舞い、角の生えた狼が木を貪る。誰もが思い浮かべるようなファンタジーな世界。通称『ネリオミア』。これはそんな世界で巻き起こる、長くて壮大な冒険譚である――。 ちまちまと日銭を稼いで暮らしていた少女ヘキオン。突然失踪した父親を探すために旅を続けていたヘキオンだったが、ある日ウルフィーロードという魔物に襲われてしまう。 命の危機が眼前にまで迫った時――ヘキオンの前にある男が現れた。木の棒を携え、ウルフィーロードを一瞬で消し飛ばした男。その名は――カエデ。世界を揺るがす運命の出会いであった。 ひょんなことから一緒に冒険することとなったヘキオンとカエデ。道中で出会う様々な人々。そして強力な敵。 二人の旅はどうなっていくのか――。 ヘキオンの父親は見つかるのか――。 隠されたカエデの過去とは――。 ――摩訶不思議な冒険ファンタジーを刮目せよ。 毎日19時更新予定!

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

底辺男のミセカタ 〜ゴミスキルのせいで蔑まれていた俺はスキル『反射』を手に入れて憎い奴らに魅せつける〜

筋肉重太郎
ファンタジー
俺は……最底辺だ。 2040年、世界に突如として、スキル、と呼ばれる能力が発現する。 どんどん良くなっていく生活。 いくつもの世界問題の改善。 世界は更により良くなっていく………はずだった。 主人公 田中伸太はスキルを"一応"持っている一般人……いや、底辺男であった。 運動も勉学も平均以下、スキルすら弱過ぎるものであった。平均以上にできると言ったらゲームぐらいのものである。 だが、周りは違った。 周りから尊敬の眼差しを受け続ける幼馴染、その周りにいる"勝ち組"と言える奴ら。 なんで俺だけ強くなれない………… なんで俺だけ頭が良くなれない………… 周りからは、無能力者なんて言う不名誉なあだ名もつけられ、昔から目立ちたがりだった伸太はどんどん卑屈になっていく。 友達も増えて、さらに強くなっていく幼馴染に強い劣等感も覚え、いじめまで出始めたその時、伸太の心に1つの感情が芽生える。 それは…… 復讐心。

誰もシナリオを知らない、乙女ゲームの世界

Greis
ファンタジー
【注意!!】 途中からがっつりファンタジーバトルだらけ、主人公最強描写がとても多くなります。 内容が肌に合わない方、面白くないなと思い始めた方はブラウザバック推奨です。 ※主人公の転生先は、元はシナリオ外の存在、いわゆるモブと分類される人物です。 ベイルトン辺境伯家の三男坊として生まれたのが、ウォルター・ベイルトン。つまりは、転生した俺だ。 生まれ変わった先の世界は、オタクであった俺には大興奮の剣と魔法のファンタジー。 色々とハンデを背負いつつも、早々に二度目の死を迎えないために必死に強くなって、何とか生きてこられた。 そして、十五歳になった時に騎士学院に入学し、二度目の灰色の青春を謳歌していた。 騎士学院に馴染み、十七歳を迎えた二年目の春。 魔法学院との合同訓練の場で二人の転生者の少女と出会った事で、この世界がただの剣と魔法のファンタジーではない事を、徐々に理解していくのだった。 ※小説家になろう、カクヨムでも投稿しております。 小説家になろうに投稿しているものに関しては、改稿されたものになりますので、予めご了承ください。

処理中です...