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ブランの特訓

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 ふとフィンは目を覚ました。今はまだ夜中だ。フィンが辺りを見回すと、焚き火の向こうに、毛布にくるまって寝ているアレックスとドロップがいた。その側には座って目を閉じているバレットと、その横にはパンターがうずくまって眠っている。フィンは自分の側近くにいるはずの、契約霊獣のブランの姿を探した。だが彼女はフィンの側にはいなかった。

 フィンが夜中に目を覚ましたのは久しぶりの事だ。いつも武闘の修行で、泥のように深い眠りについてしまうからだ。だがようやく修行にも慣れてきたのだろう。ブランがフィンの側近くにいない事に気づき、起きる事ができた。フィンはゆっくりと起き上がると、目を閉じていたバレットが目を開けてフィンを見た。フィンは笑って大丈夫だという事を示した。

 そしてフィンは立ち上がって歩き出した。フィンはブランと契約してから、ブランがどこにいてもわかるのだ。フィンは歩いた、自身の契約霊獣の元へ。ブランが夜中にどこかに行っている事を、フィンは大分以前から気づいていた。だが修行の大変さに中々ブランの元に行く事ができなかった。フィンは月明かりが照らす林の中を歩いた。すると開けた場所に出た。そこには、フィンが探し求めていた契約霊獣のブランがいた。

 ブランの周りには沢山の土魔法のツタが伸びていた。ブランが土魔法を使用しているのだ。フィンは穏やかな声でブランに声をかけた。

「ブラン、それまでにしたら?」

 フィンの声にブランはゆっくりと振り向いた。ブランもフィンがやってきたのがわかっているのだ。ブランは鼻をツンと上に向けながら答えた。

『あらフィン。アタシの忠告は無視するクセに、アタシには指図するのね?』
「これは指図じゃないよ?お願いだ。僕は君の契約者だからね、君を心配するのも僕の役目だよ?」

 フィンはブランの側に近づくと、両手を差し伸べた。ブランは嬉しそうにフィンの腕の中に飛び込んだ。フィンはブランを抱き上げて頬ずりをしながら言った。

「ブラン。一人で土魔法の特訓してたの?」
『・・・。アタシ、とってもうぬぼれてたんだわよ。アタシはもう一人前の霊獣だって。だけど全然ダメだったのさ。アタシ、もっともっと強くなりたいの。ママみたいに』
「リア?リアは強いの?」

 フィンは驚いた。ブランの守護者であるホワイトライオンのリアは、とてもおっとりとした霊獣だ。慈悲深くて優しい、自分を傷つける悪い人間にすら攻撃する事のできないような霊獣だ。ブランはフィンの顔を見上げて言った。

『ママの土魔法はとても強力よ。ママが本気で怒ると、大地がゆれるの。アタシが小さい頃イタズラをして、大ケガしそうになった事があるの。そしたらママすごく怒って、大地震が起きちゃったんだわ。だからママはいつも地盤のしっかりした所にいるの。ママの土魔法で大きな地震を誘発したらいけないから』

 フィンはリアが暮している平野を思い出した。リアは自分の魔法で大きな被害を出さないために、あの寂しい場所にいるのだ。フィンは腕の中のブランに視線を戻すと、ブランはしょげかえった顔をしてうなだれていた。ブランはポツリと呟く。

『アタシは誰もが使える土魔法だけじゃなく、アタシにしか使えない土魔法をあみださなきゃいけないの』

 フィンは土魔法はとてもはんよう性が高い魔法だと思っている。フィン自身は鉄限定の土魔法しか使えないが、ブランはあらゆる土魔法を使用する事ができる。植物を成長させて果物や野菜を作ったり、巨大なツタを出現させて攻撃や防御に使用したりもできる。それに、鉱物や鉄製の武器を生成する事もできるのだ。フィンはふと呟くように言った。

「ブランの魔法は土魔法でしょ?それな
ら土自体を動かす事もできるの?」

 ブランはフィンを見上げてハッとしたような顔をしてから答えた。

『・・・、そうね。アタシそんな事考えた事もなかっただわよ。アタシできるわ、土を操る事』

 ブランはそう言うと、土魔法を発動させた。するとフィンの足元の土がムクムクと盛り上がった。そして土のかたまりが猫の形になった。土の猫は、まるで生きているようにフィンの周りを走り回った。フィンは思わず声を上げた。

「すごいやブラン!」

 ブランは得意げにフフンと鼻を鳴らした。すると土の猫はどんどん増え出した。そして、フィンとブランの周りをグルグルと周りだした。フィンはブランを抱っこしながら、歓声の声をあげた。だがしばらくすると土の猫たちはこつぜんと姿を消してしまった。フィンは驚いて腕の中のブランを見ると、ブランはスースーと寝息をたてて眠っていた。ブランは魔力を使いすぎたのだ。フィンは幸せそう眠っているブランに、お疲れ様と声をかけた。





 
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