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ジャン=ジャック・ルソー
放浪生活の始まり
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ルソーは親方の元で働きながら、読書が唯一の楽しみになっていた。
貸本屋で本を借りてはむさぶり読んだ。給料は全て本代に消えた。しかし、仕事をサボっては読書をしていたので、親方には読書も悪としてとらえられていた。
見つかると本を破り捨てられた。
そうこうしながら、ルソーは孤独を強めていって、16歳になっていた。
ある日、ルソーは市の門限に遅れてしまった。遅れてしまったと言うより、30分も早く門を閉める門番がいたのだ。
市の門が閉められて親方の家に門限内に帰れなくなったのは、これで3度目なのである。
親方の家に明くる朝帰っても殴られるだけである。
ルソーはいっその事、逃亡しようと決意した。
ルソーにとっては、親方の場所だけが世界ではなかった。
本の中で広い世界を知識としては知っている。
そんな彼がいつまでも孤独で抑圧された親方の場所にとどまり続けることはありえない話だったのかもしれない。
それはそうと、気まぐれで先を読むことも無く、その場限りで行動を起こしてしまうルソーは、市の門が閉まって門限を破ったことがきっかけで逃亡した。
この逃亡が意味することは、恐ろしい。
なんの技術も生きる知恵もない16歳の少年が、親の助けも何もかも捨てて、徒弟奉公を投げ捨て一人生きてゆかねばならないのだ。
親方の元で、様々な事に耐えながら生きている方がよっぽど楽だったに違いない。貧苦に身をゆだねる生活が目に見えていた。
しかし、ルソーの頭の中は違っていた。
鳥籠の中から放たれた鳥のように、自由で素晴らしい世界の始まりのように思っていたのである。
小さな恋人を作り、親しい友人を作り、小さな城を手に入れて近隣の者達にご馳走を振る舞うようなささいな夢を抱いていた。
中二病のようなものだ。
脳内では不可能なことは無い。
しかし、現実は実力が足りない。
それでもルソーは、農村で泊めてもらったり、ご馳走をしてもらったりと分を越えた施しを受けながら過ごし、サヴォワの司祭、ポンヴェール氏を訪ねた。
ポンヴェール氏はルソーを親元に送り返すことよりも、プロテスタントからカトリックへ改宗させることに重きを置いているような人物であった。
ルソーはポンヴェール氏と話していて、自分の方が博識だと感じていたが、議論で打ち負かすようなことはしなかった。
美味しいワインやご馳走を振舞ってくれるポンヴェール氏はいい人で、それを打ち負かすことはルソーには心地よいものではなかった。
ルソーはポンヴェール氏の言うことを素直に聞いているふりをした。まるで、カトリック教へ改宗する事はわけないと思わせぶりな態度をとった。
それは、まるで婦人が口説けそうで口説けないような思わせぶりな態度をとるのに似ていた。
ポンヴェール氏はルソーに
「アヌシーにいるヴァランス婦人を訪ねてみなさい」と勧めた。
ヴァランス婦人はカトリック教へ改宗した熱心なカトリック教徒で、サルジニア王から二千フランの年金を受けている。
その年金は信仰を売り物にしている僧侶達の食いしろにあてがわれていた。
慈悲深いヴァランス婦人なら、きっと養ってくれるというのだ。
ルソーは婦人から施しを受けながら生活をするのは屈辱的で、あまり気が気が進まなかったが、飢えが迫ってくる。
それに、旅行は好きだし、目標がある事は望むところだから、ヴァランス婦人を訪ねることにした。
貸本屋で本を借りてはむさぶり読んだ。給料は全て本代に消えた。しかし、仕事をサボっては読書をしていたので、親方には読書も悪としてとらえられていた。
見つかると本を破り捨てられた。
そうこうしながら、ルソーは孤独を強めていって、16歳になっていた。
ある日、ルソーは市の門限に遅れてしまった。遅れてしまったと言うより、30分も早く門を閉める門番がいたのだ。
市の門が閉められて親方の家に門限内に帰れなくなったのは、これで3度目なのである。
親方の家に明くる朝帰っても殴られるだけである。
ルソーはいっその事、逃亡しようと決意した。
ルソーにとっては、親方の場所だけが世界ではなかった。
本の中で広い世界を知識としては知っている。
そんな彼がいつまでも孤独で抑圧された親方の場所にとどまり続けることはありえない話だったのかもしれない。
それはそうと、気まぐれで先を読むことも無く、その場限りで行動を起こしてしまうルソーは、市の門が閉まって門限を破ったことがきっかけで逃亡した。
この逃亡が意味することは、恐ろしい。
なんの技術も生きる知恵もない16歳の少年が、親の助けも何もかも捨てて、徒弟奉公を投げ捨て一人生きてゆかねばならないのだ。
親方の元で、様々な事に耐えながら生きている方がよっぽど楽だったに違いない。貧苦に身をゆだねる生活が目に見えていた。
しかし、ルソーの頭の中は違っていた。
鳥籠の中から放たれた鳥のように、自由で素晴らしい世界の始まりのように思っていたのである。
小さな恋人を作り、親しい友人を作り、小さな城を手に入れて近隣の者達にご馳走を振る舞うようなささいな夢を抱いていた。
中二病のようなものだ。
脳内では不可能なことは無い。
しかし、現実は実力が足りない。
それでもルソーは、農村で泊めてもらったり、ご馳走をしてもらったりと分を越えた施しを受けながら過ごし、サヴォワの司祭、ポンヴェール氏を訪ねた。
ポンヴェール氏はルソーを親元に送り返すことよりも、プロテスタントからカトリックへ改宗させることに重きを置いているような人物であった。
ルソーはポンヴェール氏と話していて、自分の方が博識だと感じていたが、議論で打ち負かすようなことはしなかった。
美味しいワインやご馳走を振舞ってくれるポンヴェール氏はいい人で、それを打ち負かすことはルソーには心地よいものではなかった。
ルソーはポンヴェール氏の言うことを素直に聞いているふりをした。まるで、カトリック教へ改宗する事はわけないと思わせぶりな態度をとった。
それは、まるで婦人が口説けそうで口説けないような思わせぶりな態度をとるのに似ていた。
ポンヴェール氏はルソーに
「アヌシーにいるヴァランス婦人を訪ねてみなさい」と勧めた。
ヴァランス婦人はカトリック教へ改宗した熱心なカトリック教徒で、サルジニア王から二千フランの年金を受けている。
その年金は信仰を売り物にしている僧侶達の食いしろにあてがわれていた。
慈悲深いヴァランス婦人なら、きっと養ってくれるというのだ。
ルソーは婦人から施しを受けながら生活をするのは屈辱的で、あまり気が気が進まなかったが、飢えが迫ってくる。
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