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ドルト村編

第101話 お酢料理……?

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 村の住人に交じって話をしながら畑を手伝ったり、レベッカと一緒に薬草採取をしていると、あっという間にお酢料理を作る日が来た。といってもたくさんあるわけじゃないからね……マジで困る。
 作るとすればマヨネーズやドレッシング、酢を入れて作った煮物くらいか。あとは鍋に使うたれやピクルス、なますくらいしか知らないのだよ、私は。
 南蛮漬けやマリネ、ケチャップもいけるかな? 海産物が少ないから、酢の物は却下だ。その関係でお寿司もダメ。
 そんなわけで、湖で採れたアジやロック鳥を使った南蛮漬けやマリネ、野菜を使ったピクルス、いくつかのドレッシングとマヨネーズ、ケチャップを作ることにした。
 彼らにはそれらを作ってもらい、海産物があればという前提でちらし寿司と酢の物を作るつもりではいるけれど……場合によってはダンジョンに行くって言いそうだなあ。それはそれでいいか。私も行ってみたいし。
 で、全員にレシピを渡し、材料を用意してもらう。足りないのは私が出した。今回は料理よりもドレッシングなどがメインになるから、全員同じ作業をしてもらうのだ。
 最初にピクルスを作ってもらう。酢だけだと酸っぱいだけなので、はちみつや塩などを入れて味を調えてもらい、その中に切った野菜を入れてもらった。
 それが終わると、まず南蛮漬けとマリネの材料を用意。マリネはカボチャで作るつもりだ。
 アジと肉を捌いてもらい、小麦粉を薄くつけてもらって揚げる。片栗粉のほうがいいんだがないからね。あるもので代用だ。
 準備ができたら揚げてもらう。南蛮漬けの野菜は玉ねぎと赤、黄色、緑のピーマン。野菜も素揚げしてもらい、油を切っている間に混ぜるための調味液を作り、それぞれで混ぜてもらう。温かいものと混ぜたからか、酢の匂いが漂い、なかなか食欲をそそる匂いになっている。
 それが終わったらマヨネーズ作り。レモンの代わりに酢を使うというと、みんな作り方を知っていたみたいなので割愛。
 そしてトマトを使ってケチャップ作り。材料はトマト、リンゴ、ニンニク、バジル、酢、塩、砂糖またははちみつ。辛みがほしければ唐辛子を少し。味に深みがほしければ香辛料を足してもいい。
 小さく切って、潰しながら煮て、ひたすら煮詰めて。ブレンダーやフードプロセッサーがあるわけじゃないから、自分で潰すしかないのだ。
 ソースとして使うのであれば潰さなくてもいいと話してあるので、自分好みのものを作るだろう。その作業をしてもらいながら、ドレッシングを作ってもらう。
 酢と油、砂糖かはちみつと醤油、塩だけ。これを基本に玉ねぎをすり下ろしたものやにんにくと玉ねぎなどなど、常に材料が手元にあり、なおかつ簡単にできるものを教えた。
 他にオーロラソース――マヨネーズとケチャップを混ぜたものとコブドレッシングも教えたし、マヨネーズを使ってタルタルソースも教えたし。今回は入れなかったけれど、ピクルスを入れてもいいと言ってあるので、自分好みのものを作るだろう。
 で、煮物に関しては、夏の時期に煮物に大きなスプーン一杯か二杯入れるといいと話す。

「どうして入れるの?」
「肉を柔らかくする作用と同時に、傷まないようにするためよ。夏は煮たものといえど、腐敗するのが早いわ。すぐに食べきるならいいけれど、そうもいかないでしょ? 貯蔵庫や冷蔵庫に入れておければいいけど、面倒臭がってそのままにする人もいるだろうし」
「そうね」
「確かに」
「だから、その腐敗の時間を遅らせる意味もあるの。ただし、たくさん入れたからと言って腐敗しないってことはないからね? 酸っぱくなるだけだから」

 そう話すと、全員揃って頷いた。あくまでも腐敗が遅くなるって程度なんだよ、夏場だと。まあ旨味成分を足す意味もあるが、それだって微々たるものだしね。
 そんなこんなで彼らが同じものを作っているのとは別に、私は漁港で買った魚を使い、ちらし寿司と酢の物を作る。ちらし寿司にはマグロとスモークサーモン、鯛と錦糸玉子、針海苔と細く切ったさやいんげんを載せる。
 酢飯の中にはシイタケとニンジンを煮たものを混ぜ込んだ。もちろん魚は生だし、虫除けの魔法をかけてある。
 酢の物はわかめときゅうり、タコときゅうりの二種類だ。ワサビがないのが残念だ。誰か知らないかなあ? 食べながら聞いてみよう。
 最後は全員でサラダを作り、ちらし寿司や酢の物を配って実食。さて、刺身は好みがあるから受け入れてくれるかどうかわからないけど、どうかな?

「魚を生で食べられるとは……なんと贅沢な」
「そうですね。おじい様が美味しいと仰っていましたが、納得です」
「あれ? ゲレオンと村長むらおさは刺身を知ってるの?」
「話だけは」
「僕もです。おじい様はニホンという国からの転生者でしたから」
「おおう……」

 ヘラルドのおじい様ってことは王様をやってたってことじゃん! 王様が転生者って……。王女の件といい、もしかして貴族とかに偏ってたから、料理やアクセが広まらなかった?
 ただ王女がいたんならアクセが広まってないとおかしい。ってことは、王女自身にアクセの知識がなかったか、興味を持つ前に死んだか、興味がなかったかなんだろうなあ。あと、カットする技術がなかったことも原因か。
 王様に関しても、元が男性だとしたら知らない可能性が高いし、場合によっては王女がTS転生していたってこともあり得るし。今さら言ったところでしょうがないけれど、せめて刺身くらいは漁港限定でレシピを残しておいてほしかった……!
 アイスに関してはその国限定って言っていたから、他国に材料がない可能性が高い。だからこそ、特産物になりえたんだろう。
 今となってはどれが正解かだなんてわからないが、地球のように大量生産する技術と物流が整っていないと難しいものね。だからこそ私もそれを考慮して、その場に合ったレシピしか教えなかったわけだし。
 この村に関しては、私が自重しないことと、私や村人にそれなりの戦闘力や知識と技術などがあるからこそ、教えた。特に宝石に関しては、ハビエルが扱えなかったら、カットした宝石を見せることはあってもカットの種類を教えることはなかった。
 家に関しても、家を建てる技術がなかっただけで藁葺きや茅葺き屋根、畳という自国の技術を持っている人がいたからこそ、そういう家を建てたに過ぎない。だからこそ豆腐建築になっていたわけだしね。
 元王族や元貴族なのに、衣食住の住以外は自分たちで賄えていたんだから、それだけの知識と技術があるってことでしょ? 最初は苦労しただろうけれど、それを払拭できるだけの根性があったんじゃなかろうか。
 どんだけスペックが高いんだよ、魔族って。ある意味最強の種族なんじゃなかろうか。これが攻撃的な性格だったなら、人間たちが滅んでいた可能性がある。
 けれど実際はそんなことはなく、とても穏やかで面倒見がよくて付き合いやすい種族だと思う。ただし、怒らせると怖そうだが。

 なんだかんだとみんなと話しながら料理を食べ、わさびを知っているか聞いたりしているうちに夕方となり。

『もっと刺身とやらを食いたい!』

 と全員に言われ、溜息を吐きながらもマグロやカツオ、イカとタコ、スモークサーモンと鯛を放出したのはいいが、米で作った酒で飲んだほうが美味しいと口を滑らせたばかりに宴会へと発展。
 まあいっかと村人たちを生温~い視線をしながら、楽しそうな彼らを見ていたのだった。

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