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【本編】 原作者の私ですが婚約者は譲っても推しのお義兄様は渡しません!
第34話
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メイドに教えて貰ったノートを読んで、ロザリンドは前世の記憶を思い出すというより新たに覚えることを、この1週間毎朝繰り返していた。
ノートの書き出しはこうだ。『おはようロザリンド!』
『仮面祭りの夜に、オスカーをラグー通りのホテルバーモントの裏口まで迎えに行ってください。
時間は20~21時、絶対に遅れないこと!
遅れたらオスカーはミシェルのモノになるから!
オスカーは兄のダンカンに媚薬を盛られているので、いつもと様子が違うけれど、驚かないで。
苦しんでるオスカーを助けられるのは貴女だけです!
ミシェルが出来たんだからロザリンドなら出来るよ!
がんばってね!ファイトです!
オスカーを馬車に乗せたら、ダンカンには関わらないで直ぐに帰ること。
ダンカンの事は後日オスカーとお父様とで解決して貰うこと。
このページは祭りの翌日にでも燃やしてしまうことを、おすすめします。
*オスカーは金髪でフクロウの仮面をつけています
オスカーとお幸せにね
ホナミより』
そして、ロザリンドは自分がホナミだったと思い出す。
がんばってね!ファイトです!
……なんて、ずいぶんテンション高めに簡単に書いてくれたな、私。
ここ2、3日のオスカーは見るからに精神的にキテる感じだ。
ロザリンドが推察した通り、彼も転生者なら。
メインイベントの仮面祭りでダンカンと会うから緊張しているのだろうか、お決まりの穏やかな微笑みを見せることなく言葉も少ない。
昨日などは胃の辺りを何度も擦っていた。
神経性胃炎という言葉がないこの世界でも、あれこれ考えて気遣いして、思い悩むと胃が痛み出す事は知られていた。
何だか『オスカーって、こんな人だったっけ?』と、思う。
今のロザリンドは記憶がなくなり始めているので、理想の男として条件を並べたオスカーと比べているのではなかった。
今までの、普段の、義兄のオスカーと印象が違うのだ。
年齢の割りに落ち着いて、物事を処理して行き。
優しく丁寧だけれど、心中をこちらに見せることはない。
頭脳明晰、沈着冷静、泰然自若……彼は周囲からそんな言葉で形容されていた。
まだ17歳だとは思えない自慢の義兄オスカー・オブライエン・コルテス。
……だったのに。
そうではない姿を見せられて嫌になったのではない。
むしろ、何だか年齢相応だと安心して微笑ましいのだ。
自分と同じ様に彼もまた記憶がなくなり始めているから、この夜を無事に乗りきれるか不安になっているのだと思い、それを上手く隠せないオスカーが愛おしい。
せめて、媚薬を飲ませられないようにダンカンには注意して、と言いたいけれど……
媚薬だと判明するのは、第2章からだ。
だから今のオスカーは、それと知らない。
ダンカンから勧められた強い酒のせいで不測の事態になったのだとオスカーは自分を責めた。
自分が酔っていたから、ミシェルにそういう関係を強いたのかもしれない、と素直に彼女に接することが出来ない内にミシェルと王太子アーノルドは付き合い始めてしまう……
朝食の席で、今朝も食が進んでいないオスカーに目が吸い寄せられて何度も見てしまった。
彼もまたロザリンドを見ていたのか、何度も目が合った。
「ロージー」
朝食後、私室に戻りもう一度ノートのおさらいをしようとしたロザリンドにオスカーが声をかけてきた。
「何も予定がないのなら、明るい内だけになるけれど祭りを見に行かないか?」
「……お義兄様と?」
「18時にグレンと約束しているから、それまでで良ければなんだけれど……
ふたりで……ダメかな?」
オスカーらしくない自信が無さげな物言いなのに。
ロザリンドは胸がキュンキュンした。
ファーストデートを申し込まれるときめきを初めて知った。
婚約者だったウェズリーとは何度もふたりで出掛けたが、それは予め決められた『婚約者とのお出かけ』であり、『デート』と認識していなかった。
「喜んで、ご一緒します」
嬉しすぎて、抱きつきたいのを我慢して。
令嬢らしく、慎ましやかに返事する。
(がっつくな、ロザリンド!)
「ありがとうロージー。
昼食は要らないと、義母上には俺から伝えておくから。
ゆっくりで良いから出かける準備をしておいで。
祭りは逃げないから、慌てなくてもいいからね」
祭りは逃げないけれど、貴方が逃げないように。
ロザリンドはメイドに声をかけて、急いで部屋へ向かった。
『市井の人達から浮くことなく、それでいて可愛くて』
脳内で手持ちのワードローブを並べてみる。
想定外のオスカーとのデートイベントだった。
急に与えられたチャンスだ。
失敗はしたくない。
祭りは逃げないけれど……貴方が逃げないように。
ノートの書き出しはこうだ。『おはようロザリンド!』
『仮面祭りの夜に、オスカーをラグー通りのホテルバーモントの裏口まで迎えに行ってください。
時間は20~21時、絶対に遅れないこと!
遅れたらオスカーはミシェルのモノになるから!
オスカーは兄のダンカンに媚薬を盛られているので、いつもと様子が違うけれど、驚かないで。
苦しんでるオスカーを助けられるのは貴女だけです!
ミシェルが出来たんだからロザリンドなら出来るよ!
がんばってね!ファイトです!
オスカーを馬車に乗せたら、ダンカンには関わらないで直ぐに帰ること。
ダンカンの事は後日オスカーとお父様とで解決して貰うこと。
このページは祭りの翌日にでも燃やしてしまうことを、おすすめします。
*オスカーは金髪でフクロウの仮面をつけています
オスカーとお幸せにね
ホナミより』
そして、ロザリンドは自分がホナミだったと思い出す。
がんばってね!ファイトです!
……なんて、ずいぶんテンション高めに簡単に書いてくれたな、私。
ここ2、3日のオスカーは見るからに精神的にキテる感じだ。
ロザリンドが推察した通り、彼も転生者なら。
メインイベントの仮面祭りでダンカンと会うから緊張しているのだろうか、お決まりの穏やかな微笑みを見せることなく言葉も少ない。
昨日などは胃の辺りを何度も擦っていた。
神経性胃炎という言葉がないこの世界でも、あれこれ考えて気遣いして、思い悩むと胃が痛み出す事は知られていた。
何だか『オスカーって、こんな人だったっけ?』と、思う。
今のロザリンドは記憶がなくなり始めているので、理想の男として条件を並べたオスカーと比べているのではなかった。
今までの、普段の、義兄のオスカーと印象が違うのだ。
年齢の割りに落ち着いて、物事を処理して行き。
優しく丁寧だけれど、心中をこちらに見せることはない。
頭脳明晰、沈着冷静、泰然自若……彼は周囲からそんな言葉で形容されていた。
まだ17歳だとは思えない自慢の義兄オスカー・オブライエン・コルテス。
……だったのに。
そうではない姿を見せられて嫌になったのではない。
むしろ、何だか年齢相応だと安心して微笑ましいのだ。
自分と同じ様に彼もまた記憶がなくなり始めているから、この夜を無事に乗りきれるか不安になっているのだと思い、それを上手く隠せないオスカーが愛おしい。
せめて、媚薬を飲ませられないようにダンカンには注意して、と言いたいけれど……
媚薬だと判明するのは、第2章からだ。
だから今のオスカーは、それと知らない。
ダンカンから勧められた強い酒のせいで不測の事態になったのだとオスカーは自分を責めた。
自分が酔っていたから、ミシェルにそういう関係を強いたのかもしれない、と素直に彼女に接することが出来ない内にミシェルと王太子アーノルドは付き合い始めてしまう……
朝食の席で、今朝も食が進んでいないオスカーに目が吸い寄せられて何度も見てしまった。
彼もまたロザリンドを見ていたのか、何度も目が合った。
「ロージー」
朝食後、私室に戻りもう一度ノートのおさらいをしようとしたロザリンドにオスカーが声をかけてきた。
「何も予定がないのなら、明るい内だけになるけれど祭りを見に行かないか?」
「……お義兄様と?」
「18時にグレンと約束しているから、それまでで良ければなんだけれど……
ふたりで……ダメかな?」
オスカーらしくない自信が無さげな物言いなのに。
ロザリンドは胸がキュンキュンした。
ファーストデートを申し込まれるときめきを初めて知った。
婚約者だったウェズリーとは何度もふたりで出掛けたが、それは予め決められた『婚約者とのお出かけ』であり、『デート』と認識していなかった。
「喜んで、ご一緒します」
嬉しすぎて、抱きつきたいのを我慢して。
令嬢らしく、慎ましやかに返事する。
(がっつくな、ロザリンド!)
「ありがとうロージー。
昼食は要らないと、義母上には俺から伝えておくから。
ゆっくりで良いから出かける準備をしておいで。
祭りは逃げないから、慌てなくてもいいからね」
祭りは逃げないけれど、貴方が逃げないように。
ロザリンドはメイドに声をかけて、急いで部屋へ向かった。
『市井の人達から浮くことなく、それでいて可愛くて』
脳内で手持ちのワードローブを並べてみる。
想定外のオスカーとのデートイベントだった。
急に与えられたチャンスだ。
失敗はしたくない。
祭りは逃げないけれど……貴方が逃げないように。
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