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第14話 灼熱の地、極寒の地
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出立して2か月後。
ミーンミーンミンミン…。
ド田舎のピプペポ領。ここは北の辺境伯プリンパ家が統治する領なのだが見事に干上がった自然しかない。
北の端と言っても侮るなかれ。
季節は真夏。
至る所から陽炎が立ち上り、ありもしない水辺が浮かび上がる錯覚すら見えてしまう。
ここはまるで砂漠だ。
時折風が吹いてくるがちっとも涼しくない。熱風である。
「お嬢様…汗が地面に落ちた後、風が吹くとアレ、アレです」
「はぁはぁ…地面がまるでサウナスートンね…風が吹いたらアウフグースだわ」
「そう…それですぅ…あっつぅい!!」
「気持ち!気持ちよ!気持ちだけでも涼しい事を考えましょう」
「無理ですよ~。もう暑すぎて頭の中が沸騰してますもん」
ソシャリーもポリーも田舎を甘く見ていた。
見上げればギラギラの太陽。暑すぎる地がピプペポ領。
これだけ暑いと冬は暖かいと思いきや…冬は雪が降っているうちはまだいい。
夏の間に熱を蓄えた地面は舞い落ちる雪を溶かし、凶器を形成する。
吹雪で飛んでくるのは風に乗った雪が地面の深層からくる熱にジワリと解かされ水になりかけた物が集まりツララの矢となって縦横無尽に飛んでくるので回避不可。
危険すぎて吹雪く日に家の外に出る者はいない。
そんな日が1か月ほど続けば銀世界…を通り越してガラスのような透き通った世界、極寒の地になる。
名前のポップな可愛さに騙された気がするのは気のせいか。
年間を通せば真冬は氷点下40度まで下がるが、真夏は50度まで気温が上がる。
現在の気温軽く39度超え。
猛暑を超えて酷暑の中、汗すら蒸発させてひたすら歩く。
「暑っ。日陰もないなんて。到着する前に干物になっちゃうわ」
「お嬢様ぁ…あそこに何か見えますぅ」
「ポリー。何もないわ。それはマボロシ~」
「お嬢様…はぁはぁ…こんな時に笑わせないでくださいよ」
目的の場所を目指すが行けども行けども続くあぜ道。
このまま道のわきで干上がっているカエルやトカゲのように水分を太陽に進呈する事になるのかな。
泣きそうにもなるが泣けば涙も蒸発する。
「人の汗でも模様が出来るんだわ」と自分のワンピースに出来た汗の縞模様を見て暑さなのか絶望なのかで眩暈がしそう。
何故ソシャリーが歩いているのかと言えば…。
街道からの峠を越えて平地に出たまでは良かった。
そこからが地獄の始まりだったのである。
昼間は暑いと聞いていたので早朝に行けるところまでと進んでいたのだが従者たちが乗った馬車が次々に進めなくなった。
従者たちの乗っている馬車はソシャリーの乗っている馬車より少し大きい。
道幅が狭く通れなかったのだ。
敵は道幅だけではない。
朝の7時前だと言うのに気温は既に35度を超えていて、脱水を起こした従者が続出。
動ける従者がちょろちょろと流れる沢から水を汲むが「あっちぃ!!」
山から湧き出ている水がなんと!!
湯だった。
なので、湯を汲んで冷まし、もう一度沸騰させて水分を十分にとってから従者たちにはあとから来るように伝えてソシャリーは先に進んだ。
一刻も早く辺境伯の屋敷に到着し応援を呼ばねば先には進めそうにないのだが…。
ぴたりと馬車が止まった。
天井に頭を打ち付けそうなガタゴト道を抜けたのか?そう思ったら御者が言葉を失っていた。
「どうしたの?」
「この先はもう無理です」
泣きそうな声を出す御者。
何が無理なんだろうと馬車の小窓を開けて前方を見てソシャリーも絶句した。
念のためにと馬車を降りてみたが、小ぶりな馬車の幅よりも狭いあぜ道が延々と続いていて、どう考えても馬車は通れない。馬車を旋回させるのも今停車している場所がギリギリ旋回できるかどうか。
この先にそんな場所があるとも思えなかった。
「確かに無理ね。いいわ。ここで引き返して。みんなのいる場所に戻って水分補給して頂戴」
「まさかここからお嬢様は歩くと言うんですか」
「他に方法がある?馬車を引く馬だって疲れているし、誰かが行かなきゃ!この炎天下…あなた達だけでも引き返した方が良いわ」
ソシャリーは先に向かい、屋敷に到着をしたら従者たちを迎えに行ってもらえないかと相談しようと考えた。
ポリーと励ましあいながら燃えそうに熱い足を前に出して歩く。
後ろを振り返れば旋回した馬車が多くの従者が待つ休憩地に戻って行くのが見えた。
「ポリー!あと少しよ」
「お嬢様…その根拠は」
「ないわ」
「ぐぅぅ…もう歩けない…暑いぃぃ」
ポリーがもう歩けないと足を止めたその時、目の前に陽炎なのか…。
いや、違う。土埃だ!
単騎で誰かがこちらに向かってくるのが見えた。
ズササー!!!ヒヒィーン!!
「ゴホッゴホッ…くぅ…暑い土埃を吸い込んだわ‥喉が痛暑い!!」
「嫁御殿か!!」
声を出したいが、その前に馬を止めてくれないだろうか。
その場で歩かれると土埃が舞い上がって声が出せない。
「大丈夫か!?」
――だから!馬を止めてよ!ってか、降りなさいって!――
熱風に煽られて更に土埃が舞い上がり、視界はほぼゼロ。
――あぁ。もうだめ――
気力だけで歩いていたのに足を止めたのでソシャリーにも限界が来てしまったのだった。
ミーンミーンミンミン…。
ド田舎のピプペポ領。ここは北の辺境伯プリンパ家が統治する領なのだが見事に干上がった自然しかない。
北の端と言っても侮るなかれ。
季節は真夏。
至る所から陽炎が立ち上り、ありもしない水辺が浮かび上がる錯覚すら見えてしまう。
ここはまるで砂漠だ。
時折風が吹いてくるがちっとも涼しくない。熱風である。
「お嬢様…汗が地面に落ちた後、風が吹くとアレ、アレです」
「はぁはぁ…地面がまるでサウナスートンね…風が吹いたらアウフグースだわ」
「そう…それですぅ…あっつぅい!!」
「気持ち!気持ちよ!気持ちだけでも涼しい事を考えましょう」
「無理ですよ~。もう暑すぎて頭の中が沸騰してますもん」
ソシャリーもポリーも田舎を甘く見ていた。
見上げればギラギラの太陽。暑すぎる地がピプペポ領。
これだけ暑いと冬は暖かいと思いきや…冬は雪が降っているうちはまだいい。
夏の間に熱を蓄えた地面は舞い落ちる雪を溶かし、凶器を形成する。
吹雪で飛んでくるのは風に乗った雪が地面の深層からくる熱にジワリと解かされ水になりかけた物が集まりツララの矢となって縦横無尽に飛んでくるので回避不可。
危険すぎて吹雪く日に家の外に出る者はいない。
そんな日が1か月ほど続けば銀世界…を通り越してガラスのような透き通った世界、極寒の地になる。
名前のポップな可愛さに騙された気がするのは気のせいか。
年間を通せば真冬は氷点下40度まで下がるが、真夏は50度まで気温が上がる。
現在の気温軽く39度超え。
猛暑を超えて酷暑の中、汗すら蒸発させてひたすら歩く。
「暑っ。日陰もないなんて。到着する前に干物になっちゃうわ」
「お嬢様ぁ…あそこに何か見えますぅ」
「ポリー。何もないわ。それはマボロシ~」
「お嬢様…はぁはぁ…こんな時に笑わせないでくださいよ」
目的の場所を目指すが行けども行けども続くあぜ道。
このまま道のわきで干上がっているカエルやトカゲのように水分を太陽に進呈する事になるのかな。
泣きそうにもなるが泣けば涙も蒸発する。
「人の汗でも模様が出来るんだわ」と自分のワンピースに出来た汗の縞模様を見て暑さなのか絶望なのかで眩暈がしそう。
何故ソシャリーが歩いているのかと言えば…。
街道からの峠を越えて平地に出たまでは良かった。
そこからが地獄の始まりだったのである。
昼間は暑いと聞いていたので早朝に行けるところまでと進んでいたのだが従者たちが乗った馬車が次々に進めなくなった。
従者たちの乗っている馬車はソシャリーの乗っている馬車より少し大きい。
道幅が狭く通れなかったのだ。
敵は道幅だけではない。
朝の7時前だと言うのに気温は既に35度を超えていて、脱水を起こした従者が続出。
動ける従者がちょろちょろと流れる沢から水を汲むが「あっちぃ!!」
山から湧き出ている水がなんと!!
湯だった。
なので、湯を汲んで冷まし、もう一度沸騰させて水分を十分にとってから従者たちにはあとから来るように伝えてソシャリーは先に進んだ。
一刻も早く辺境伯の屋敷に到着し応援を呼ばねば先には進めそうにないのだが…。
ぴたりと馬車が止まった。
天井に頭を打ち付けそうなガタゴト道を抜けたのか?そう思ったら御者が言葉を失っていた。
「どうしたの?」
「この先はもう無理です」
泣きそうな声を出す御者。
何が無理なんだろうと馬車の小窓を開けて前方を見てソシャリーも絶句した。
念のためにと馬車を降りてみたが、小ぶりな馬車の幅よりも狭いあぜ道が延々と続いていて、どう考えても馬車は通れない。馬車を旋回させるのも今停車している場所がギリギリ旋回できるかどうか。
この先にそんな場所があるとも思えなかった。
「確かに無理ね。いいわ。ここで引き返して。みんなのいる場所に戻って水分補給して頂戴」
「まさかここからお嬢様は歩くと言うんですか」
「他に方法がある?馬車を引く馬だって疲れているし、誰かが行かなきゃ!この炎天下…あなた達だけでも引き返した方が良いわ」
ソシャリーは先に向かい、屋敷に到着をしたら従者たちを迎えに行ってもらえないかと相談しようと考えた。
ポリーと励ましあいながら燃えそうに熱い足を前に出して歩く。
後ろを振り返れば旋回した馬車が多くの従者が待つ休憩地に戻って行くのが見えた。
「ポリー!あと少しよ」
「お嬢様…その根拠は」
「ないわ」
「ぐぅぅ…もう歩けない…暑いぃぃ」
ポリーがもう歩けないと足を止めたその時、目の前に陽炎なのか…。
いや、違う。土埃だ!
単騎で誰かがこちらに向かってくるのが見えた。
ズササー!!!ヒヒィーン!!
「ゴホッゴホッ…くぅ…暑い土埃を吸い込んだわ‥喉が痛暑い!!」
「嫁御殿か!!」
声を出したいが、その前に馬を止めてくれないだろうか。
その場で歩かれると土埃が舞い上がって声が出せない。
「大丈夫か!?」
――だから!馬を止めてよ!ってか、降りなさいって!――
熱風に煽られて更に土埃が舞い上がり、視界はほぼゼロ。
――あぁ。もうだめ――
気力だけで歩いていたのに足を止めたのでソシャリーにも限界が来てしまったのだった。
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