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第13話 王都を出発
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ケインからの返事を持って帰宅をすると、キュレット伯爵は「やっぱりなぁ」とどこか残念そうな声を出した。
「あら?お父様。行くと言ってほしかったの?」
「まぁな。出来れば行くと言って欲しかったなぁ。面倒じゃないか。正直言ってもう関わり合いになりたくないから、殿下には ”行かない” 方でと言ったのにこんな事でも負けたくないと殿下が言うからさぁ」
「行く」と言えばボラツク侯爵家から支払われた慰謝料をキュレット伯爵が今後ケインのケアに使わねばならない。さっさと手を切りたかったキュレット伯爵は慰謝料が支払われてもそのまま寄付でスライドし、関りを絶ちたかったのだ。
「婚約をしてから6年だ。婚約で揉めた事がなかったが当事者となると面倒この上ない。ソシャリーがされてきたことを考えると八つ裂きにしてやりたいくらいだ」
ケインとソシャリーの婚約がきっかけで爵位に差がある婚約は今後見直されることになるが、キュレット伯爵もソシャリーと同じように苦しかった。自分ではない事が余計に辛く、どんなに代わってやりたいと思った事か。
「だけど、お父様は抗議文も出さなかったじゃない」
「インクと紙の無駄だ。今回の事でバカにつける薬はないと言うのが良く判ったよ」
ソシャリーも「もういいや」と決めてからは形式的な事しかしていない。
結局デヴュタントをしてから夜会に一度も参加をすることはなかったが、これはこれで良かったのだろう。もし夜会に出向いていればロザリアも連れてきているのだから会場でダンスも踊らず壁の華なんて冗談じゃない。
婚約者がいないのなら仕方ないが、婚約者は他の女性と踊っているのだから噂話の格好の獲物になってしまう。そんなのは望んでいない。
「ところで…プリンパ家にはいつ出立すればよいのでしょう?」
「あぁそれなら明後日だ」
「明後日?!そんな急な…せめて1か月はゆっくりしたいのに」
それにも理由があった。
この時期は街道はかなり混雑をする時期。
そこに王家主催の夜会に出席をするために遠い領地から従者を連れてやってくる貴族も多いのだ。夜会が終わってからだと王都見物などをして帰路につく貴族と重なってしまう。
そうなると宿場町も素泊まりのごろ寝でいいから止まらせてくれと言っても相部屋も満杯。
屋敷にいる時のように毎晩湯で汗を流すことが出来ず、基本が馬車泊となるので足も伸ばせずに寝なければならない。
長距離移動用の馬車でも揺れない訳ではないので、旅慣れていないソシャリーは体がガタガタになってしまう。
3,4日に1泊の割合で王太子が部屋は取ってくれているが、到着する日がズレてしまうと、宿泊が出来ないので余裕を見て宿場町に到着することを考えれば明後日の出立にしなければならなかった。
ソシャリーの荷物は多くない。
屋敷の自分の部屋にはそれなりに衣類もあるのだが、プリンパ家は北の辺境伯。
国境警備に従事する兵士も屋敷の中に部屋を用意し、寝泊まりをしているのであまりにも荷物が多いと部屋に入りきらず、兵士の使っている部屋を物置として空けねばならなくなる。
王都とは気候も全く違うので、これから生活をすることを考えるのであれば気候風土に合った衣類を辺境で揃えた方が良いので、当面の着替えだけがソシャリーの荷物。
ふと釣書を思い出し、荷物用の部屋は向こうも困るんだろうと思い当たった。
「そうよね。子供の数だけで35なんだもの…」
「しかし、すごいですね…まだ20代半ばなのに年齢以上に子供がいるなんて」
「ポリー!そう、そうなの。ってことは私は子供を作らなくていいのよね?その中から養子をもらえばいいんだもの」
「そうでしょうか。やっぱり正妻が産むんじゃないですか?
――う~ん。出産は痛いって言うし遠慮したいなぁ――
ソシャリーの母親でも「もう勘弁して」と兄とソシャリーで以後子供は作らなかった。
誰に聞いても「痛い」と言うし、陣痛の痛みは下手すると数日に及ぶと聞いてソシャリーは遠慮したかった。
ともあれ、ソシャリーの荷物は中型のトランクに3つ。ポリーは1つ。
合計4つのトランクは前日の夜には馬車の屋根に載せられた。
出立の前の夜は家族も使用人も全員が食事室にテーブルを並べて食事をする。
キュレット伯爵家の使用人は交代も含めて30人もいない。少数精鋭である。
その夜は全員が泊まり。翌朝日の出と共にソシャリーとポリーが出立をするので見送るために家から来ていたら間に合わないからである。
夜遅くまでソシャリーの部屋は明かりがついていた。
寝台でポリーと並んでプリンパ家の統治するピプペポ領の事が書かれた書類を読み漁っていた。気が付けば寝落ちをしてしまっていた。
翌朝。
「行ってきます」
「うん。行っておいで。着いたら手紙を出してくれ」
「はい」
両親の言葉が少ないのは泣き腫らした目を見れば理由がわかる。
家族と、そして使用人たちとハグをして馬車に乗り込んだソシャリーとポリーはプリンパ家の統治するピプペポ領に向かって旅立ったのだった。
「あら?お父様。行くと言ってほしかったの?」
「まぁな。出来れば行くと言って欲しかったなぁ。面倒じゃないか。正直言ってもう関わり合いになりたくないから、殿下には ”行かない” 方でと言ったのにこんな事でも負けたくないと殿下が言うからさぁ」
「行く」と言えばボラツク侯爵家から支払われた慰謝料をキュレット伯爵が今後ケインのケアに使わねばならない。さっさと手を切りたかったキュレット伯爵は慰謝料が支払われてもそのまま寄付でスライドし、関りを絶ちたかったのだ。
「婚約をしてから6年だ。婚約で揉めた事がなかったが当事者となると面倒この上ない。ソシャリーがされてきたことを考えると八つ裂きにしてやりたいくらいだ」
ケインとソシャリーの婚約がきっかけで爵位に差がある婚約は今後見直されることになるが、キュレット伯爵もソシャリーと同じように苦しかった。自分ではない事が余計に辛く、どんなに代わってやりたいと思った事か。
「だけど、お父様は抗議文も出さなかったじゃない」
「インクと紙の無駄だ。今回の事でバカにつける薬はないと言うのが良く判ったよ」
ソシャリーも「もういいや」と決めてからは形式的な事しかしていない。
結局デヴュタントをしてから夜会に一度も参加をすることはなかったが、これはこれで良かったのだろう。もし夜会に出向いていればロザリアも連れてきているのだから会場でダンスも踊らず壁の華なんて冗談じゃない。
婚約者がいないのなら仕方ないが、婚約者は他の女性と踊っているのだから噂話の格好の獲物になってしまう。そんなのは望んでいない。
「ところで…プリンパ家にはいつ出立すればよいのでしょう?」
「あぁそれなら明後日だ」
「明後日?!そんな急な…せめて1か月はゆっくりしたいのに」
それにも理由があった。
この時期は街道はかなり混雑をする時期。
そこに王家主催の夜会に出席をするために遠い領地から従者を連れてやってくる貴族も多いのだ。夜会が終わってからだと王都見物などをして帰路につく貴族と重なってしまう。
そうなると宿場町も素泊まりのごろ寝でいいから止まらせてくれと言っても相部屋も満杯。
屋敷にいる時のように毎晩湯で汗を流すことが出来ず、基本が馬車泊となるので足も伸ばせずに寝なければならない。
長距離移動用の馬車でも揺れない訳ではないので、旅慣れていないソシャリーは体がガタガタになってしまう。
3,4日に1泊の割合で王太子が部屋は取ってくれているが、到着する日がズレてしまうと、宿泊が出来ないので余裕を見て宿場町に到着することを考えれば明後日の出立にしなければならなかった。
ソシャリーの荷物は多くない。
屋敷の自分の部屋にはそれなりに衣類もあるのだが、プリンパ家は北の辺境伯。
国境警備に従事する兵士も屋敷の中に部屋を用意し、寝泊まりをしているのであまりにも荷物が多いと部屋に入りきらず、兵士の使っている部屋を物置として空けねばならなくなる。
王都とは気候も全く違うので、これから生活をすることを考えるのであれば気候風土に合った衣類を辺境で揃えた方が良いので、当面の着替えだけがソシャリーの荷物。
ふと釣書を思い出し、荷物用の部屋は向こうも困るんだろうと思い当たった。
「そうよね。子供の数だけで35なんだもの…」
「しかし、すごいですね…まだ20代半ばなのに年齢以上に子供がいるなんて」
「ポリー!そう、そうなの。ってことは私は子供を作らなくていいのよね?その中から養子をもらえばいいんだもの」
「そうでしょうか。やっぱり正妻が産むんじゃないですか?
――う~ん。出産は痛いって言うし遠慮したいなぁ――
ソシャリーの母親でも「もう勘弁して」と兄とソシャリーで以後子供は作らなかった。
誰に聞いても「痛い」と言うし、陣痛の痛みは下手すると数日に及ぶと聞いてソシャリーは遠慮したかった。
ともあれ、ソシャリーの荷物は中型のトランクに3つ。ポリーは1つ。
合計4つのトランクは前日の夜には馬車の屋根に載せられた。
出立の前の夜は家族も使用人も全員が食事室にテーブルを並べて食事をする。
キュレット伯爵家の使用人は交代も含めて30人もいない。少数精鋭である。
その夜は全員が泊まり。翌朝日の出と共にソシャリーとポリーが出立をするので見送るために家から来ていたら間に合わないからである。
夜遅くまでソシャリーの部屋は明かりがついていた。
寝台でポリーと並んでプリンパ家の統治するピプペポ領の事が書かれた書類を読み漁っていた。気が付けば寝落ちをしてしまっていた。
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「うん。行っておいで。着いたら手紙を出してくれ」
「はい」
両親の言葉が少ないのは泣き腫らした目を見れば理由がわかる。
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