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第37話 剣の重さは愛
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コーディリアが王都にやってきて2週間。
ネプトヌス公爵家の生活にもかなり慣れてきた。ゼウスはもう羊番として働く必要もないのに朝早くから起きて何をするでもなく手持無沙汰。
朝食までの時間を厨房で働く使用人を見たり、厩舎で馬に飼い葉を与える厩舎係の仕事を見学したり。
時間になるまでただ暇を持て余したゼウスをプロテウスが剣術の朝練に誘った。
まだ子供なのでプロテウスが使っている模擬刀も持つのがやっと。振るには腕に筋肉をつけないと振るために持ち上げる事も出来ない重さがあった。
「ぐぅっ!なんでこんなに重いんだっ!ぬぉー!」
「剣の重さは愛だからな」
「よいしょ」で持ち上がれば苦労しない。ゼウスはプロテウスが11歳の時に使っていたという剣を貸してもらって素振りをしたいのだが、兎に角剣の先が地面から離れない。
持ち上がらないのだ。
そして柄を握っているだけで5分もすれば全身の筋肉が震えて来る。
「まだ早いか。剣ではなく杖でやってみるか?」
「ばっ!馬鹿にするなっ!絶対にこの剣で鍛錬するんだっ!」
ゼウスは意地になっているがそもそもで無理がある。
魔法騎士用の剣なので魔力がないとその重量は実際に秤が示す数値の7、8倍が体感で感じる重さになる。
「たった8kg!ぜぇーったい持ち上げてやるぅぅ!」
ゼウスはゼェハァと息を切らし、何が何でもこの剣で鍛錬をしてやるのだと意固地になっているが、軽く見て60kg前後の重さに感じているだろう。現在のゼウスの体重が25kgほどなので単純に倍以上。
悪戦苦闘しているが、鍛錬は剣を持ち上げて終わりではなく、素振りまでがセット。
何年先になる事やらとプロテウスは貸してやる剣を間違えたかなとちょっと反省している。
そんなプロテウスは1振りをするのに10分ほど時間をかける。
意識を集中させて、魔力が頭の中で描いているような軌跡を辿るようにズバっと剣を振り下ろす。
「おじさんはそんなに長い間頭の上に剣を振り上げて手が震えないの?」
「慣れているからな。持ってみるか?」
「いいの?おじさんの大事な剣だよね?」
「いいよ。ゼウスは俺の親友だからな」
「親友‥えへっ」
だが、親友の剣は真剣でもあり大変危険。重さもゼウスの体重より重い31kg。魔力の無いゼウスには200kg以上に感じる重さなので全力で倒れないように支えるだけで精いっぱい。
しかし剣が持てない事にゼウスは悲観しない。
プロテウスに「知識は最高の武器になる」と教えてもらったからだ。
★~★
朝食を終えたコーディリアは兄のオベロンと一緒に次期公爵、トリトンの部屋で提携する事業の意見交換や擦り合わせをする。
「お兄様、どこで学んだの?」
「何処って…海の上?」
「誤魔化さないで。各国の通貨レートだけじゃなく個別の関税の額だとか計算が苦手だったお兄様とは思えない速さで計算してるじゃない!それにネプトヌス公爵家様とも対等に話してるし!」
「ま、まぁ、慣れかな。ほら商売って引くのも大事だが引きどころってあるじゃないか」
「なんだか怪しいわ。本当は中身が魔獣じゃないでしょうね?」
ぎゅーっとオベロンの頬を抓るが魔獣が化けているのではなさそう。
ぽりぽりと頬を指で掻くオベロンは離れて暮らした6年間を多くは語らないが伯爵家の当主になるため、と言うよりもバリバリの商人のような交渉術まで身に付けていた。
ずっと6年間、1人で頑張ってきたけれどこれからは兄もいる。
王都に来たついでにコーディリアは当主の届け出も兄のオベロンに書き換えた。
領地にいれば書簡のやり取りで手続きは行えるが、申請して、問い合わせがかえって、返事を出してを何度か繰り返さないといけないので距離のある領地では2年ほどかかる。
だが、最初に提出する書類をネプトヌス公爵にも見てもらい、不備無しで受付となったので2、3日後には手続き完了の通知が受け取れる。
「やっとこれで肩の荷が下りるんだけど、大きな問題があるわね」
「何の問題がある?そりゃまぁ繁忙期にはリアにも書類は手伝ってもらわないといけないが」
「書類じゃないわ。お兄様のお相手探し。ねぇ?本当にいないの?6年間、平民の女性と同棲してたとかじゃないの?お父様だって生きていたらお兄様が選んだ女性なら身分なんか気にしなかったはずよ」
「あのな?恋人がいた事が前提になっている話し方をするな。そんな相手はいないよ」
「なんだか信じられないな~。確かにお兄様は非モテではあるけど飲み屋の女の子とかに人気ありそうじゃない?」
「飲み屋?ないな。そもそもで酒は飲まない」
「だけど、ちょっと優しくされたら鼻の下デレーっと伸ばして貢いでいそうじゃない?」
「兄の事を何だと思ってるんだ。全く…そういうお前はどうなんだ?」
「わっ、私っ?!ないわね。これは非モテ兄妹って事かしら」
「プロテウス殿との縁談があるだろうか。ずるずる返事を引き延ばすよりもちゃんと考えて答えを出すんだ。リアこそ伯爵家の事とかしがらみは考えなくていい。6年頑張ったからな。自分だけの幸せを考えたってバチは当たらないよ」
女伯爵であるコーディリアの元にプロテウスが婿入りの予定がオベロンが当主となったので、仮にプロテウスとの縁談が纏まれば公爵家が権利を持つ子爵家を興すことになる。
たった6年の間に2度も大きく人生の進路変更を余儀なくされているコーディリアは「二度あることは三度ある」とも言うし、もうゼウスが成人するまでお一人様でもいいかな?と思うようになっていた。
ネプトヌス公爵家の生活にもかなり慣れてきた。ゼウスはもう羊番として働く必要もないのに朝早くから起きて何をするでもなく手持無沙汰。
朝食までの時間を厨房で働く使用人を見たり、厩舎で馬に飼い葉を与える厩舎係の仕事を見学したり。
時間になるまでただ暇を持て余したゼウスをプロテウスが剣術の朝練に誘った。
まだ子供なのでプロテウスが使っている模擬刀も持つのがやっと。振るには腕に筋肉をつけないと振るために持ち上げる事も出来ない重さがあった。
「ぐぅっ!なんでこんなに重いんだっ!ぬぉー!」
「剣の重さは愛だからな」
「よいしょ」で持ち上がれば苦労しない。ゼウスはプロテウスが11歳の時に使っていたという剣を貸してもらって素振りをしたいのだが、兎に角剣の先が地面から離れない。
持ち上がらないのだ。
そして柄を握っているだけで5分もすれば全身の筋肉が震えて来る。
「まだ早いか。剣ではなく杖でやってみるか?」
「ばっ!馬鹿にするなっ!絶対にこの剣で鍛錬するんだっ!」
ゼウスは意地になっているがそもそもで無理がある。
魔法騎士用の剣なので魔力がないとその重量は実際に秤が示す数値の7、8倍が体感で感じる重さになる。
「たった8kg!ぜぇーったい持ち上げてやるぅぅ!」
ゼウスはゼェハァと息を切らし、何が何でもこの剣で鍛錬をしてやるのだと意固地になっているが、軽く見て60kg前後の重さに感じているだろう。現在のゼウスの体重が25kgほどなので単純に倍以上。
悪戦苦闘しているが、鍛錬は剣を持ち上げて終わりではなく、素振りまでがセット。
何年先になる事やらとプロテウスは貸してやる剣を間違えたかなとちょっと反省している。
そんなプロテウスは1振りをするのに10分ほど時間をかける。
意識を集中させて、魔力が頭の中で描いているような軌跡を辿るようにズバっと剣を振り下ろす。
「おじさんはそんなに長い間頭の上に剣を振り上げて手が震えないの?」
「慣れているからな。持ってみるか?」
「いいの?おじさんの大事な剣だよね?」
「いいよ。ゼウスは俺の親友だからな」
「親友‥えへっ」
だが、親友の剣は真剣でもあり大変危険。重さもゼウスの体重より重い31kg。魔力の無いゼウスには200kg以上に感じる重さなので全力で倒れないように支えるだけで精いっぱい。
しかし剣が持てない事にゼウスは悲観しない。
プロテウスに「知識は最高の武器になる」と教えてもらったからだ。
★~★
朝食を終えたコーディリアは兄のオベロンと一緒に次期公爵、トリトンの部屋で提携する事業の意見交換や擦り合わせをする。
「お兄様、どこで学んだの?」
「何処って…海の上?」
「誤魔化さないで。各国の通貨レートだけじゃなく個別の関税の額だとか計算が苦手だったお兄様とは思えない速さで計算してるじゃない!それにネプトヌス公爵家様とも対等に話してるし!」
「ま、まぁ、慣れかな。ほら商売って引くのも大事だが引きどころってあるじゃないか」
「なんだか怪しいわ。本当は中身が魔獣じゃないでしょうね?」
ぎゅーっとオベロンの頬を抓るが魔獣が化けているのではなさそう。
ぽりぽりと頬を指で掻くオベロンは離れて暮らした6年間を多くは語らないが伯爵家の当主になるため、と言うよりもバリバリの商人のような交渉術まで身に付けていた。
ずっと6年間、1人で頑張ってきたけれどこれからは兄もいる。
王都に来たついでにコーディリアは当主の届け出も兄のオベロンに書き換えた。
領地にいれば書簡のやり取りで手続きは行えるが、申請して、問い合わせがかえって、返事を出してを何度か繰り返さないといけないので距離のある領地では2年ほどかかる。
だが、最初に提出する書類をネプトヌス公爵にも見てもらい、不備無しで受付となったので2、3日後には手続き完了の通知が受け取れる。
「やっとこれで肩の荷が下りるんだけど、大きな問題があるわね」
「何の問題がある?そりゃまぁ繁忙期にはリアにも書類は手伝ってもらわないといけないが」
「書類じゃないわ。お兄様のお相手探し。ねぇ?本当にいないの?6年間、平民の女性と同棲してたとかじゃないの?お父様だって生きていたらお兄様が選んだ女性なら身分なんか気にしなかったはずよ」
「あのな?恋人がいた事が前提になっている話し方をするな。そんな相手はいないよ」
「なんだか信じられないな~。確かにお兄様は非モテではあるけど飲み屋の女の子とかに人気ありそうじゃない?」
「飲み屋?ないな。そもそもで酒は飲まない」
「だけど、ちょっと優しくされたら鼻の下デレーっと伸ばして貢いでいそうじゃない?」
「兄の事を何だと思ってるんだ。全く…そういうお前はどうなんだ?」
「わっ、私っ?!ないわね。これは非モテ兄妹って事かしら」
「プロテウス殿との縁談があるだろうか。ずるずる返事を引き延ばすよりもちゃんと考えて答えを出すんだ。リアこそ伯爵家の事とかしがらみは考えなくていい。6年頑張ったからな。自分だけの幸せを考えたってバチは当たらないよ」
女伯爵であるコーディリアの元にプロテウスが婿入りの予定がオベロンが当主となったので、仮にプロテウスとの縁談が纏まれば公爵家が権利を持つ子爵家を興すことになる。
たった6年の間に2度も大きく人生の進路変更を余儀なくされているコーディリアは「二度あることは三度ある」とも言うし、もうゼウスが成人するまでお一人様でもいいかな?と思うようになっていた。
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