狩猟小屋に飼われた青年

くろねこや

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4 自己紹介と家事手伝い

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みんなが起きた頃。ようやく僕は部屋から出してもらえた。

…トイレもバケツを使う事なく無事に間に合いました。

あと、そのまま外の井戸を借りて汚れた身体と衣類を洗うことができた。…水が冷たい。



朝食のパンと、温かいスープも分けてもらえた! やったー!! 美味しい!! 涙が出そう!!

「悪かったなァ、閉じ込めちまって」

しっかり味わいながらも、あっという間に食べ終えた僕を見て、ギーウスが哀れに思ったのか謝ってくれた。

狩りの疲れで僕を警戒するのも面倒だったんだって。

…え? 疲れてた? 昨夜のアレは夢だったのだろうか? すんごい運動されてましたけど…?

「ンで、狩りの話を聞きたいんだったか?」

「えぇ、そうです」

内心の動揺を隠せる僕! これでも一応貴族の子!


ララという村の娘が教えてくれた『変わった見た目の男』は1人ではなかった。

ここにいる5人全員が変わってる。

ヴェダは色彩が変わってる。あと何度見てもびっくりするくらい美人! スカートを履いてるのは同居する男たちの好みなんだって。『いつでもすぐヤれるからな』ってゲスいことを言ったのはギーウスだ。

やっぱり昨日のアレは夢じゃなかったみたい。もちろん下着がアレだったんで、分かっていましたとも。ええ…。

…やっぱり胸が苦しい。

ヴェダは子どもの頃からこの小屋に住んでるんだって。新鮮なお肉がいっぱい食べられるから、本人的にはここでの暮らしに満足してるみたい。体力がないから、狩りには行かずに家事を担当しているそうだ。

昨夜みたいな激しい運動をさせられるから体力が持たないんじゃないか…と思ったのは内緒だ。覗きをしていたなんて知られたら追い出されてしまう。下手したら殺されるかも…。


ギーウスは毛むくじゃらで身体もアレも規格外。やっぱり狩人たちのリーダーらしい。髭を剃ればむさ苦しさはマシになると思うんだけど。ヴェダが赤ん坊の頃から面倒をみているらしい。つまり育てのお父さん。…まさかこの男ショタ…ゲフンゲフン。

ウルスと名乗ったタレ目のカッコいい男は、口を開くと残念だった。猪に突進されて、前歯が折れちゃったんだって。口の中を見せられた瞬間思わず笑ってしまいそうになって、頬の内側の肉を噛んで必死に堪えたよ。でも頭も育ちも5人の中で1番良さそうだ。

傷がすごい男はアルクル。やっぱり頭から顔にかけて派手に付けられた傷は、熊の爪によるものだって。僕が昨日閉じ込められた部屋には、彼の双子の弟が住んでいたらしい。その時の熊に殺されてしまったと聞いて、何も言葉が出なかった。

顔のケロイドが酷い眼帯の男はグジャ。子どもの頃に『オオカエンガエル』という名前の、40センチくらいある毒ガエルに強酸性の毒液を噴射されたらしい。『カエン』はおそらく『火焔かえん』のことだろう。毒液がかかると焼け付くような激痛に襲われるから。左目は完全に見えないそうだ。あまり喋らないんだけど、唇が引き攣れて痛いからなんだって。


それから僕も自己紹介。

彼らに『王からの無茶振り』うんぬん言っても警戒させてしまうから、家を出された四男坊であること、人々の営みや動植物の生息域を本に残す仕事をしていると話した。

貴重な植物製の紙を持ってるから、金持ちだとは思われてると思う。でも今さら羊皮紙なんか使いたくない。重いし書きにくい。



ちなみに今日は休養日らしい。

各々好きなことをして過ごすんだって。

近くの川に魚釣りへ出かけた者、自室で本を読む者、身体を鍛えるのだと崖登りを繰り返す者、矢を作ったり刃を研いだりと狩りの準備をする者。

そんな日でもヴェダは家事をこなしている。



「ねぇ、ヴェダ。ギーウスって、恋人?」

ずいぶん歳が離れてるけど。育てのお父さんだし。

洗濯を手伝うついでに、干す時に僕のも混ぜちゃう。それにしても男爵とはいえ貴族の子として生まれた僕が、むさ苦しいおっさんたちの下着を洗うことになるとは…。

例の細長い革紐を干すヴェダを見てドキッとする。


「違うよ。ギーウスには奥さんと、子どもがたくさんいるもん」

そりゃあ、あんだけ何度も射精できれば子どももできるでしょうよ。なんと彼には4人も子どもがいるらしい。うちは5人兄弟だけど、一応貴族だから…。


「僕の仕事はねぇ。村のために働く彼らのお世話をすることなんだよ」

シーツを干しながら胸を張ろうとし、『痛たた…』と腰を押さえて呻くヴェダ。

『それは昨夜ドロドロになっていたシーツですか?』とか、『そのお世話には、食事作り、洗濯から、性欲処理も含まれるんですか?』という下世話な疑問が頭をよぎり、ぶんぶんと振り払った。


ギーウスは性欲が強すぎて、奥さんから村を追い出されたらしい。狩りとヴェダがそれを発散させているのかもしれない。

男性の機能を抑える薬を、僕は持っている。

でも、村のために命を懸けて働く彼に飲ませていいのか分からない。雄としての本能も抑えてしまうからだ。

まぁ、そもそも得体の知れない僕が作った薬なんて、飲みたがらないだろうけど。



夕食作りも手伝った。

こんな山奥なのに、塩やハーブ類、珍しい胡椒まで揃ってて驚いた。

小屋の地下にある倉庫には小麦粉や、保存がきくイモ類、根菜類、ワインもいっぱい貯蔵されている。

湿気が出ちゃうから封印されてるけど、地下にはなんと井戸もあるらしい。大型獣の大移動とかで万が一小屋が囲まれても籠城ろうじょうできるそうだ。建物が石造りなのはそんな理由か…。


「へぇ、お前も料理できンのか?」

僕が焼いたパンを見て、ギーウスが驚いたようにこっちを見た。

ヴェダが作ってくれたスープ、美味しい。

具になっている肉は、昨日仕留めたきじらしい。





「今夜は僕の番だよね?」

食事を終えて食器を洗っていると、ウルスはヴェダにこそこそと何かを訊いている。

「うん。お湯を沸かすから、待ってて」

僕の番? お湯?
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