寡黙な男はモテるのだ!……多分

しょうわな人

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転機

幕間【王家の影】

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 私の名はセバス。トーヤ・ハイナイト子爵家の執事をしている。

 というのは仮の姿で、本当は双子の弟であるロッテンと共に王家の影をしている。

 が、トーヤ様にお仕えするようになってからだが私にはこの王家の影という立場を引退したいと思うようになってきている。コレは弟であるロッテンも同じ気持ちのようだ。

 だが、孤児であった私と弟を見込んで、王家の影として働けるようにしてくれた先代の影の隊長への恩返しはまだまだ済んでないと思っているのも確かだ……

「兄貴、俺としては今の正直な気持ちを陛下に言ってみるのも有りだと思うよ」

 ロッテンと話合い、それもそうかと私は納得した。そして、トーヤ様から絶好の機会を頂いた。領地視察に行きたいと仰られたので、陛下に許可をいただきに行く事になったのだ。

 私はロッテンを伴い王宮へと向かった。ロッテンは影として裏から入り、私は表の顔であるハイナイト家の執事として、陛下に面会する許可を得る為に控室で待っていた。

 そこに、王太子殿下が現れた。

「やあ、セバス。今日はどうしたんだい?」

「ハッ、殿下。実はハイナイト家として陛下の許可を頂く事案がございまして、その許可をいただきに参りました」

 私の言葉に王太子殿下が少し考えてから私に聞いてきた。

「それは私も同席して構わない事案かな?」 

 領地視察の件だから私は大丈夫ですと殿下にお答えした。すると、

「よし、それじゃ今すぐ行こう。なに、大丈夫だよ。父上は本日の執務は既に終えて今はヨーナの魔法をみているから」

 そう殿下が仰った。

「しかし、それではヨーナ殿下の時間を奪う事に……」

「ハハハ、トーヤ兄様のお願いならヨーナは快く引いてくれるさ」

 何ともはや…… いつの間にヨーナ殿下まで堕とされていたのか…… 私はトーヤ様の恐ろしさをここでも知る事になった。

 そうして、殿下と共に私は王家の私室スペースへと入る。

「おう、ハイナイト家の執事殿。何か緊急の用件か? 出来ればヨーナの魔法を見ていたいのだが?」

 陛下にそう言われたが、それを止めたのはヨーナ殿下であった。

「お父様、トーヤお兄様のご用事ならば何よりも優先すべきですわ。セバスさんがいらっしゃったという事はトーヤお兄様のご用事でしょう? 私は自主訓練を行いますので、どうかお話を伺って下さい」

 むう、コレは由々しき事態だ。今は【お兄様】だが、将来ヨーナ殿下が年齢を重ねられるとそれお兄様が変わる事になるかも知れん…… 私が確りと注意を怠らないようにしておかねば。

 陛下の私室に入った時には部屋にロッテンの気配があったので、私は出てくるように合図を出した。現れたロッテンを見て陛下は仰った。

「影としての報告か?」

「いえ、そちらではなく、純粋にハイナイト家からの願いです。その願いの後に私的なご相談もございますが……」

「フム、先ずは聞こう」

 私はトーヤ様が陛下より賜った領地視察を夏季休暇中に行いたいと言っている事をお伝えした。

「何だそんな事か。それならばあの領地は既にトーヤ子爵に与えた領地だから好きな時に行って良いぞ。何やらお主らが調べていたようだが、あの土地は広いだけで小さな村が一つだけだし、呪われた泉と地元の者が言う泉があるからな。それをどのようにトーヤ子爵が扱うのか、私は楽しみながらジックリと見させて貰う」

 やはり、試されておられたか…… 領地になる土地はほぼ円形で半径8キロほど。中心部に村が一つあり、村の北側の山にその【呪われた泉】と言われる場所がある。勿論、領地内だ。それを報告書に書いたのだが、トーヤ様は目を輝かせておられたので、何か思うところがお有りのようだが……

「そうだ、行くのならその村出身の者が近衛にいるから、案内役としてつけよう。だから出発する日時だけは教えてくれ」

 陛下はそう付け足してきた。恐らくは監視役だろう。最近、私も弟も異常無しとしか報告していないからな……

「それで、どうする? 二人とも影から引退するか? 私は構わないと思うぞ。影の隊長にも話は通してあるからな」

 な、何と陛下に先に言われてしまった!
 
「な、何故、私たち2人の相談事を……」

「ハハハ、2人から届く報告書から推察したまでだ。それに私としてもトーヤ子爵はずっと手元に居て欲しいしな。あの寡黙な子がこれから大人になった時に、セレス王太子の右腕になって貰いたいのだよ。だから、セバス、ロッテン、お前たち2人が影から身を引くのは許そう。トーヤ子爵をこれからも盛り立て、また時には導いてやって欲しい」

 やはり、陛下も素晴らしいお方だ。だが、私もロッテンももはやトーヤ様に心酔してしまった。だから、静かに最上位の礼を持って返事とさせていただいた。

 こうして、今この時より、名実ともに私とロッテンはトーヤ様にお仕え出来る事になったのだ。
 私とロッテンはいつか機会を見てこの事をトーヤ様にお伝えせねばと心に誓った。
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