34 / 90
転機
幕間【王家の影】
しおりを挟む
私の名はセバス。トーヤ・ハイナイト子爵家の執事をしている。
というのは仮の姿で、本当は双子の弟であるロッテンと共に王家の影をしている。
が、トーヤ様にお仕えするようになってからだが私にはこの王家の影という立場を引退したいと思うようになってきている。コレは弟であるロッテンも同じ気持ちのようだ。
だが、孤児であった私と弟を見込んで、王家の影として働けるようにしてくれた先代の影の隊長への恩返しはまだまだ済んでないと思っているのも確かだ……
「兄貴、俺としては今の正直な気持ちを陛下に言ってみるのも有りだと思うよ」
ロッテンと話合い、それもそうかと私は納得した。そして、トーヤ様から絶好の機会を頂いた。領地視察に行きたいと仰られたので、陛下に許可をいただきに行く事になったのだ。
私はロッテンを伴い王宮へと向かった。ロッテンは影として裏から入り、私は表の顔であるハイナイト家の執事として、陛下に面会する許可を得る為に控室で待っていた。
そこに、王太子殿下が現れた。
「やあ、セバス。今日はどうしたんだい?」
「ハッ、殿下。実はハイナイト家として陛下の許可を頂く事案がございまして、その許可をいただきに参りました」
私の言葉に王太子殿下が少し考えてから私に聞いてきた。
「それは私も同席して構わない事案かな?」
領地視察の件だから私は大丈夫ですと殿下にお答えした。すると、
「よし、それじゃ今すぐ行こう。なに、大丈夫だよ。父上は本日の執務は既に終えて今はヨーナの魔法をみているから」
そう殿下が仰った。
「しかし、それではヨーナ殿下の時間を奪う事に……」
「ハハハ、トーヤ兄様のお願いならヨーナは快く引いてくれるさ」
何ともはや…… いつの間にヨーナ殿下まで堕とされていたのか…… 私はトーヤ様の恐ろしさをここでも知る事になった。
そうして、殿下と共に私は王家の私室スペースへと入る。
「おう、ハイナイト家の執事殿。何か緊急の用件か? 出来ればヨーナの魔法を見ていたいのだが?」
陛下にそう言われたが、それを止めたのはヨーナ殿下であった。
「お父様、トーヤお兄様のご用事ならば何よりも優先すべきですわ。セバスさんがいらっしゃったという事はトーヤお兄様のご用事でしょう? 私は自主訓練を行いますので、どうかお話を伺って下さい」
むう、コレは由々しき事態だ。今は【お兄様】だが、将来ヨーナ殿下が年齢を重ねられるとそれが変わる事になるかも知れん…… 私が確りと注意を怠らないようにしておかねば。
陛下の私室に入った時には部屋にロッテンの気配があったので、私は出てくるように合図を出した。現れたロッテンを見て陛下は仰った。
「影としての報告か?」
「いえ、そちらではなく、純粋にハイナイト家からの願いです。その願いの後に私的なご相談もございますが……」
「フム、先ずは聞こう」
私はトーヤ様が陛下より賜った領地視察を夏季休暇中に行いたいと言っている事をお伝えした。
「何だそんな事か。それならばあの領地は既にトーヤ子爵に与えた領地だから好きな時に行って良いぞ。何やらお主らが調べていたようだが、あの土地は広いだけで小さな村が一つだけだし、呪われた泉と地元の者が言う泉があるからな。それをどのようにトーヤ子爵が扱うのか、私は楽しみながらジックリと見させて貰う」
やはり、試されておられたか…… 領地になる土地はほぼ円形で半径8キロほど。中心部に村が一つあり、村の北側の山にその【呪われた泉】と言われる場所がある。勿論、領地内だ。それを報告書に書いたのだが、トーヤ様は目を輝かせておられたので、何か思うところがお有りのようだが……
「そうだ、行くのならその村出身の者が近衛にいるから、案内役としてつけよう。だから出発する日時だけは教えてくれ」
陛下はそう付け足してきた。恐らくは監視役だろう。最近、私も弟も異常無しとしか報告していないからな……
「それで、どうする? 二人とも影から引退するか? 私は構わないと思うぞ。影の隊長にも話は通してあるからな」
な、何と陛下に先に言われてしまった!
「な、何故、私たち2人の相談事を……」
「ハハハ、2人から届く報告書から推察したまでだ。それに私としてもトーヤ子爵はずっと手元に居て欲しいしな。あの寡黙な子がこれから大人になった時に、セレスの右腕になって貰いたいのだよ。だから、セバス、ロッテン、お前たち2人が影から身を引くのは許そう。トーヤ子爵をこれからも盛り立て、また時には導いてやって欲しい」
やはり、陛下も素晴らしいお方だ。だが、私もロッテンももはやトーヤ様に心酔してしまった。だから、静かに最上位の礼を持って返事とさせていただいた。
こうして、今この時より、名実ともに私とロッテンはトーヤ様にお仕え出来る事になったのだ。
私とロッテンはいつか機会を見てこの事をトーヤ様にお伝えせねばと心に誓った。
というのは仮の姿で、本当は双子の弟であるロッテンと共に王家の影をしている。
が、トーヤ様にお仕えするようになってからだが私にはこの王家の影という立場を引退したいと思うようになってきている。コレは弟であるロッテンも同じ気持ちのようだ。
だが、孤児であった私と弟を見込んで、王家の影として働けるようにしてくれた先代の影の隊長への恩返しはまだまだ済んでないと思っているのも確かだ……
「兄貴、俺としては今の正直な気持ちを陛下に言ってみるのも有りだと思うよ」
ロッテンと話合い、それもそうかと私は納得した。そして、トーヤ様から絶好の機会を頂いた。領地視察に行きたいと仰られたので、陛下に許可をいただきに行く事になったのだ。
私はロッテンを伴い王宮へと向かった。ロッテンは影として裏から入り、私は表の顔であるハイナイト家の執事として、陛下に面会する許可を得る為に控室で待っていた。
そこに、王太子殿下が現れた。
「やあ、セバス。今日はどうしたんだい?」
「ハッ、殿下。実はハイナイト家として陛下の許可を頂く事案がございまして、その許可をいただきに参りました」
私の言葉に王太子殿下が少し考えてから私に聞いてきた。
「それは私も同席して構わない事案かな?」
領地視察の件だから私は大丈夫ですと殿下にお答えした。すると、
「よし、それじゃ今すぐ行こう。なに、大丈夫だよ。父上は本日の執務は既に終えて今はヨーナの魔法をみているから」
そう殿下が仰った。
「しかし、それではヨーナ殿下の時間を奪う事に……」
「ハハハ、トーヤ兄様のお願いならヨーナは快く引いてくれるさ」
何ともはや…… いつの間にヨーナ殿下まで堕とされていたのか…… 私はトーヤ様の恐ろしさをここでも知る事になった。
そうして、殿下と共に私は王家の私室スペースへと入る。
「おう、ハイナイト家の執事殿。何か緊急の用件か? 出来ればヨーナの魔法を見ていたいのだが?」
陛下にそう言われたが、それを止めたのはヨーナ殿下であった。
「お父様、トーヤお兄様のご用事ならば何よりも優先すべきですわ。セバスさんがいらっしゃったという事はトーヤお兄様のご用事でしょう? 私は自主訓練を行いますので、どうかお話を伺って下さい」
むう、コレは由々しき事態だ。今は【お兄様】だが、将来ヨーナ殿下が年齢を重ねられるとそれが変わる事になるかも知れん…… 私が確りと注意を怠らないようにしておかねば。
陛下の私室に入った時には部屋にロッテンの気配があったので、私は出てくるように合図を出した。現れたロッテンを見て陛下は仰った。
「影としての報告か?」
「いえ、そちらではなく、純粋にハイナイト家からの願いです。その願いの後に私的なご相談もございますが……」
「フム、先ずは聞こう」
私はトーヤ様が陛下より賜った領地視察を夏季休暇中に行いたいと言っている事をお伝えした。
「何だそんな事か。それならばあの領地は既にトーヤ子爵に与えた領地だから好きな時に行って良いぞ。何やらお主らが調べていたようだが、あの土地は広いだけで小さな村が一つだけだし、呪われた泉と地元の者が言う泉があるからな。それをどのようにトーヤ子爵が扱うのか、私は楽しみながらジックリと見させて貰う」
やはり、試されておられたか…… 領地になる土地はほぼ円形で半径8キロほど。中心部に村が一つあり、村の北側の山にその【呪われた泉】と言われる場所がある。勿論、領地内だ。それを報告書に書いたのだが、トーヤ様は目を輝かせておられたので、何か思うところがお有りのようだが……
「そうだ、行くのならその村出身の者が近衛にいるから、案内役としてつけよう。だから出発する日時だけは教えてくれ」
陛下はそう付け足してきた。恐らくは監視役だろう。最近、私も弟も異常無しとしか報告していないからな……
「それで、どうする? 二人とも影から引退するか? 私は構わないと思うぞ。影の隊長にも話は通してあるからな」
な、何と陛下に先に言われてしまった!
「な、何故、私たち2人の相談事を……」
「ハハハ、2人から届く報告書から推察したまでだ。それに私としてもトーヤ子爵はずっと手元に居て欲しいしな。あの寡黙な子がこれから大人になった時に、セレスの右腕になって貰いたいのだよ。だから、セバス、ロッテン、お前たち2人が影から身を引くのは許そう。トーヤ子爵をこれからも盛り立て、また時には導いてやって欲しい」
やはり、陛下も素晴らしいお方だ。だが、私もロッテンももはやトーヤ様に心酔してしまった。だから、静かに最上位の礼を持って返事とさせていただいた。
こうして、今この時より、名実ともに私とロッテンはトーヤ様にお仕え出来る事になったのだ。
私とロッテンはいつか機会を見てこの事をトーヤ様にお伝えせねばと心に誓った。
10
あなたにおすすめの小説
夜の声
神崎
恋愛
r15にしてありますが、濡れ場のシーンはわずかにあります。
読まなくても物語はわかるので、あるところはタイトルの数字を#で囲んでます。
小さな喫茶店でアルバイトをしている高校生の「桜」は、ある日、喫茶店の店主「葵」より、彼の友人である「柊」を紹介される。
柊の声は彼女が聴いている夜の声によく似ていた。
そこから彼女は柊に急速に惹かれていく。しかし彼は彼女に決して語らない事があった。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
異世界亜人熟女ハーレム製作者
†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です
【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
神々に見捨てられし者、自力で最強へ
九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。
「天職なし。最高じゃないか」
しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。
天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる