31 / 419
しかいのはし
しかいのはし
しおりを挟む
少女、いや、もうその時、彼女は大学生だったので、ここはで女性と言ったほうが良いか、彼女は当時実家暮らしの大学生だった。
彼女が実家でくらいているとき、日が暮れ夜が深まるとたまにそれは現れるのだという。
必ず視界の左端。
本当に目に見えるか見えないか、そんなギリギリの場所を白い靄のような人の顔のようなものが見える。
それが見えるのはだいたい夜の九時以降。
自分の部屋ではまず見えない。
廊下に出るとたまに。
夜に一階の台所へ行くと頻繁に。
それは彼女の視界の左端に白い靄のようなものとして見えるのだ。
彼女はそれを不気味に思うも、特に何もされないので、それほど気にしてはいなかった。
あまり記憶には残っていないらしいが、下手をすれば中学生の頃ぐらいから、それは彼女の視界の隅にあられていたとのことだ。
後、しいてそれが現れる条件を挙げるなら、先に記した通り、夜九時以降。そして、彼女が一人の時、特に台所で頻繁に現れる、とのことだ。
夜に夜食でも作ろうものなら、まず間違いなく、それは彼女の視界の左側の隅に居座るのだという。
彼女も何となくお化けなのだろう、そう思ってはいたが、数年もの間、それを見てきているので、そういうものだろう、という認識のほうが強かった。
なので、それが見えたからと言って、彼女は驚きはするものの、恐れたり慌てたりするようなものでもなかった。
その日も彼女は試験勉強のために夜遅くまで起きていた。
目を覚ますためにコーヒーでも飲もうと、一階の台所へコーヒーを淹れにいっていた時だ。
ヤカンに水をいれ、お湯を沸かしているとき、左側の視界の端に、いつもの靄が居た。
その時は何となく気になったので、気づかないふりをしてその靄を観察する。
もちろん、視界の端なのでぼやけてよくは見えない。
それでも、それが人の顔をしていることは分かっていたことだ。
そして、一生懸命に口を動かしている。
なにかを自分に言っているのだと、彼女は思った。
彼女は家に出るので先祖か何かの霊だと思ってた。
なので、何か言いたいことがあればもっとしっかり伝えてくれればいいのに。
そんなことを考えていた。
お湯が沸き、コーヒーを淹れそれを持って二階の自分の部屋に帰る。
その頃にはもうその靄は消えている。
ふと自分の机の上の鏡を見て、あの白い靄がしていた口の形を思い出す。
自分でその口の形を作ってみる。
その口の形は二つだけで、「い」と「う」の母音だけだった。
だから、なんとか彼女にも分かったのかもしれない。
それに「い」の口の形の時のほうが多い。
母音だけの文字にするなら「いうい」といった感じだ。
実際に彼女も「いうい」と発音して口の形を鏡で見てみると、あの白い靄がしていた口の形によく似ている。
ここまでくると彼女も気になって仕方がない。
必死に彼女は三つも文字言葉を探す。
だが母音も分かっているが候補も多い。
それに試験勉強もしなければならない。
当てはまる言葉を考えてながらも彼女は試験勉強に手を付ける。
試験勉強をしている間は、思いつかなかったが、いざ寝るときとなり、ベッドにもぐりこんだ時だ。
ふと思いついてしまう。
あの白い靄の伝えたかった言葉が「にくい」つまりは「憎い」であると。
彼女が実家でくらいているとき、日が暮れ夜が深まるとたまにそれは現れるのだという。
必ず視界の左端。
本当に目に見えるか見えないか、そんなギリギリの場所を白い靄のような人の顔のようなものが見える。
それが見えるのはだいたい夜の九時以降。
自分の部屋ではまず見えない。
廊下に出るとたまに。
夜に一階の台所へ行くと頻繁に。
それは彼女の視界の左端に白い靄のようなものとして見えるのだ。
彼女はそれを不気味に思うも、特に何もされないので、それほど気にしてはいなかった。
あまり記憶には残っていないらしいが、下手をすれば中学生の頃ぐらいから、それは彼女の視界の隅にあられていたとのことだ。
後、しいてそれが現れる条件を挙げるなら、先に記した通り、夜九時以降。そして、彼女が一人の時、特に台所で頻繁に現れる、とのことだ。
夜に夜食でも作ろうものなら、まず間違いなく、それは彼女の視界の左側の隅に居座るのだという。
彼女も何となくお化けなのだろう、そう思ってはいたが、数年もの間、それを見てきているので、そういうものだろう、という認識のほうが強かった。
なので、それが見えたからと言って、彼女は驚きはするものの、恐れたり慌てたりするようなものでもなかった。
その日も彼女は試験勉強のために夜遅くまで起きていた。
目を覚ますためにコーヒーでも飲もうと、一階の台所へコーヒーを淹れにいっていた時だ。
ヤカンに水をいれ、お湯を沸かしているとき、左側の視界の端に、いつもの靄が居た。
その時は何となく気になったので、気づかないふりをしてその靄を観察する。
もちろん、視界の端なのでぼやけてよくは見えない。
それでも、それが人の顔をしていることは分かっていたことだ。
そして、一生懸命に口を動かしている。
なにかを自分に言っているのだと、彼女は思った。
彼女は家に出るので先祖か何かの霊だと思ってた。
なので、何か言いたいことがあればもっとしっかり伝えてくれればいいのに。
そんなことを考えていた。
お湯が沸き、コーヒーを淹れそれを持って二階の自分の部屋に帰る。
その頃にはもうその靄は消えている。
ふと自分の机の上の鏡を見て、あの白い靄がしていた口の形を思い出す。
自分でその口の形を作ってみる。
その口の形は二つだけで、「い」と「う」の母音だけだった。
だから、なんとか彼女にも分かったのかもしれない。
それに「い」の口の形の時のほうが多い。
母音だけの文字にするなら「いうい」といった感じだ。
実際に彼女も「いうい」と発音して口の形を鏡で見てみると、あの白い靄がしていた口の形によく似ている。
ここまでくると彼女も気になって仕方がない。
必死に彼女は三つも文字言葉を探す。
だが母音も分かっているが候補も多い。
それに試験勉強もしなければならない。
当てはまる言葉を考えてながらも彼女は試験勉強に手を付ける。
試験勉強をしている間は、思いつかなかったが、いざ寝るときとなり、ベッドにもぐりこんだ時だ。
ふと思いついてしまう。
あの白い靄の伝えたかった言葉が「にくい」つまりは「憎い」であると。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。


会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
本当にあった怖い話
邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。
完結としますが、体験談が追加され次第更新します。
LINEオプチャにて、体験談募集中✨
あなたの体験談、投稿してみませんか?
投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。
【邪神白猫】で検索してみてね🐱
↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください)
https://youtube.com/@yuachanRio
※登場する施設名や人物名などは全て架空です。

【本当にあった怖い話】
ねこぽて
ホラー
※実話怪談や本当にあった怖い話など、
取材や実体験を元に構成されております。
【ご朗読について】
申請などは特に必要ありませんが、
引用元への記載をお願い致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる