学院の魔女の日常的非日常

只野誠

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夏休みに尋ねて来た方々

夏休みに尋ねて来た方々 その2

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「で、僕の家を使いたいと…… えーと、僕もその話を聞くことは……?」
 急に訪ねて来たミアと、その他の集団にフーベルト教授は色々と驚きを隠せないでいる。
 しかも、護衛を連れた物々しい集団だ。
 ただその中の中心人物はフーベルト教授も知っている。この領地、その領主の娘で、その名を確かルイーズ・リズウィッドだ。
 その面々、ミア、領主の娘ルイーズ、それと恐らくはその護衛達、彼らは極秘な話があるでの落ち着いて話せる場所を探しているとのことだった。
 それと珍しくスティフィがいないことに少なからずフーベルト教授は不思議に思う。彼女なら無理やりにでもついてきそうなものだ。
 まあ、スティフィのことは置いておいて、フーベルト教授からすると、確かにミアが極秘の話をできそうな場所は寮の自室か、自分の家くらいしかないのかもしれない、とは思う。
 思うが、実際にこうやって押しかけられると迷惑であり驚きもする。
「ダメだそうです」
 と、フーベルト教授の問いにミアがルイーズの顔色をうかがって返事をした。
「当たり障りない程度で、ロロカカ神の帽子のことを聞くことは?」
 ダメ元でフーベルト教授がそう聞くと、しびれを切らしたようにルイーズが口を開いた。
「そもそも、その帽子とロロカカ神はあまり関係がありません。少なくともわたくしたちが知っている範囲では関係がありません」
 そう断言した。
 ルイーズからしてみても、外道狩り衆特有の帽子が、よくわからない神が授けた帽子になっていることの方が理解できないでいる。
 が、その言葉で酷く落胆した人物がいる。言うまでもなくミアだ。
「え…… そ、そうなんですか? じゃあ、もう食堂で話しましょう」
 見るからに落胆しているミアが投げやりにそう言った。
 さすがにそれを聞いてルイーズも焦り始める。
「え? いや、あまり周りに聞かれたい話ではないので」
 その言葉に対してミアはやはり投げやりに返答する。
「いえ、私の出生の話なんかどうでもいいですので…… とりあえず、すべて破棄してください。もうそれでいいです」
 そう言ってミアは帰ろうとでもしたのか、トボトボと歩き始めたので、ルイーズは急いでその手を取って引き留める。
 と、いうところで別の人間が反応を示す。
「ミア君の出生の話ですか? 僕は少し興味があるのですが?」
 フーベルト教授はミアの出自とロロカカ神は何らかの関係があると考えているので、ぜひとも聞いてみたい話だ。
 フーベルト教授が反応したので、ミアも反応する。
「どうも私がここの領主の娘ではないかと言われてまして」
「は? はぁ!?」
 その言葉にフーベルト教授が今度は言葉をなくす。
 それは流石に食堂などで済ましていい話ではない。
 なんなら、学院の客室でも借りて話すべき話だ。
「その可能性がある。と言っただけです。実のところその可能性は低いですが」
 ルイーズはスティフィを追い払う手前、そう言ったが実はその可能性が低いことを実はわかっている。
「え? そうなんですか。それは良かったです」
 それを聞いたミアは胸をなでおろした。
「良かったって……」
 その反応にルイーズは驚く。
 少なくとも南側の領地ではこのリズウィッド領が一番発展している領地だ。
 その領主ともなれば、金も権力も全て思いのままだ。それをそうじゃなくてよかったなどと、心底安心して胸をなでおろされるとは思いもしなかった。
「私はロロカカ様の巫女ですので、いずれはリッケルト村に帰らなければなりませんので」
 ミアがそう言うと、ルイーズもやっと納得できた。
 領主の娘なら、それの障害になるかもしれないと考えていたのかもしれない。
「ああ、そう言うことですか。そもそも、領主の娘だからって、神の命には逆らえませんよ。その辺のことは気にせずに。元よりあなたが腹違いの姉の可能性は低いようですし」
 所詮領主など人間の中での話だ。相手が上位種、その中でも神ともなれば優先されるべきは比べるまでもない。
 それと、なんだかあやしい方向に話が進みそうだったのでフーベルト教授が折れる形で家に向か入れる。
「えっと、とりあえず人の家の家先で話す内容じゃなさそうなので、家の中へどうぞ。で、僕は出ていけばいいんですかね? 家主なんですけど?」
 その後、なし崩し的に追い出されるのも、既に分かっている。
「サリー教授のところに行けばいいじゃないですか。たぶん畑で作物を愛でてますよ」
 そんなフーベルト教授に対してミアは遠慮なくそんなことを言い放った。
 魔術学院の教授に対して失礼極まりない言葉だったが、フーベルト教授も、まあ、それも悪くない、とは思ってしまう。
 最近、自分の研究にかまけてここしばらく会っていないし、いい口実にもなる。
「この時間は…… まあ、そうですね。畑にいますね。ああ、もう、そうしますよ。基本的に家の物は自由にしていいですが、僕の私室だけは入らないでくださいね。研究中のものが多いので」
 そう言って、フーベルト教授は身だしなみを整えて出かける準備を始める。
「わかりました」
 とミアは笑顔で返事をする。

「どうぞ、お茶です」
 ミアは手馴れているのか、勝手知っているのか、勝手に戸棚を開け茶葉を取り出し、お湯を沸かし、お茶を入れた。
 なんなら茶菓子まで出している。
 余りにもミアがこの家に慣れているので、ルイーズは訝しんでしまう。
「あ、ありがとう。ここの家主とあなたの関係は……?」
 そう言いつつもお茶を少し口に入れてみると、今まで味わったことのない上品な風味が口に広がる。
 西側の高級茶にも負けないほどの風味と香りだ。
 さすがは魔術学院の教授だとルイーズは思うが、この茶葉はサリー教授の手作り茶だ。
 サリー教授がフーベルト教授のために茶葉から育てた特製茶葉だ。高級茶葉にも負けない品質なのは確かだろう。
 ただ品質は下がるが学院の購買部でも、手頃な価格で同じような物が買える品だったりもする。
「教授と生徒…… ですね? フーベルト教授の講義は騎士隊科なので受けたことありませんが。ただロロカカ様に興味があるとのことで話をしたり、色々と相談に乗ってはもらってます」
 ミアがまじめにそう答えると、ルイーズはさらに訝しむ。
「そう言った関係ではないのですよね?」
「そう言った関係?」
 と、ミアがきょとんとして聞き返す。
「その…… 男女の……」
 と、顔を赤面させつつもルイーズが言うと、ミアもやっと思い当たる。
 ただし、それは自分とフーベルト教授がそういう仲と疑われた、ということにではなく、フーベルト教授にはサリー教授という婚約者がいるということをだ。
「フーベルト教授はサリー教授と来年結婚するそうですよ?」
 と、ミアはとりあえず口にする。
 ただ頭の上には未だに疑問符が浮かんでいる。
「ああ、うん。わかりました。そういう関係ではないのですね」
 その様子を見て、ルイーズもそういう関係ではないということが理解できた。
 だとすると、どういう間柄なのか余計にルイーズにはわからない。
 それがミア特有の距離感なだけということにルイーズは気づけはしない。
「で、この帽子の事を聞かせてくれるのですよね?」
 そうミアは言ってはいるものの、既に興味はさほどない、というのが簡単に見て取れている。
 一応は部屋の中に入っても脱がなかった帽子を取り、机の上にミアは丁寧に置いた。
 ルイーズは苦笑しつつも話を進める。
「その前に、少しミアさんに検査…… をしても?」
「検査ですか? いいですけど?」
 特に警戒することもなくミアはすぐに了承する。
 あまりにもあっさりミアが検査を受け入れたのでルイーズは逆に不安にもなる。
 ミアという少女は、自分に対してなにも警戒していない。
 普通の人間なら、領主の娘とその護衛に囲まれれば緊張位はするものだが、ミアは緊張すらしていない。
 ルイーズはそれを世間知らずだから、と勝手に片づけ、ブノアはそれを余裕と受け取った。
 ミアにとってはルイーズやその護衛のブノア達すら、実のところミアの眼中にないのだ。
「ブノア、お願いします」
「はい」
 ブノアは懐から一枚の紙を取り出し、それを机の上に広げた。
 魔法陣に見えなくはないが、ミアが見てきた魔法陣とはあからさまに違う箇所がある。
 文字で円を描いているところは似通っているが、文字のすべてが円の中心が文字の上になるように向けて描かれている。
 普通、魔法陣はその中心から、その魔法陣を上位存在に読んでもらうように内側から外側に向けて文字を書くものだ。
 なのにこの魔法陣は全く逆で外側から内側へと書かれている。
 それを考えるとこれは陣の在り方から違うものだということがわかる。
 ミアはゾワゾワとした違和感を感じる。
「この紙の真ん中に右手を置いてください。少し痛みはありますが危険はありません」
 ブノアがそう言うと、ミアは言われた通り紙に手を置く。
 そこにブノアがなんかを唱えだす。
 拝借呪文のようにも聞こえるが、これもまたどこか違う。
 そうすると魔力ではない、なにか別の不可解な力の動きをミアは感じる。
 変化はすぐに起きる。
 紙に書かれている文字がまるで生きているかのようにミアの右手に向けて動き出した。
 驚いてミアが手を引っ込めようとすると、
「危険はありません、そのままで」
 と、今度はルイーズに停められた。
 ミアはルイーズを信じ、手をそのままに紙の上に置いたままにする。
 紙の上で蠢く文字らしき物の一つがミアの右手に触れ、そして、そのまま文字のような物がミアの手の表面を這いあがっていく。
「文字が…… 手に……」
 ミアがその光景に驚いて声を上げる。だが次の瞬間、紙がはじけ飛んだ。
 ミアの手に入り込んでいた字も掻き消えた。
 ミアに痛みはない。が、紙が急にはじけ飛んだことには驚きを隠せない。
「術式事破棄されました。これは対印字用防衛陣でも仕込まれている…… のか? ですが、印が入り込んでいたし決定的ですね。ミアさんは外道狩り衆の血を引いてます。そして、まず間違いなくフィリア様の娘ですね。月の印が初めに反応し、手にも最初に入り込んでいました」
「フィリア……? 印?」
 と、ミアが声を上げるが、一旦その言葉は置いておかれる。
「はぁ…… やはりそうですか。で、わたくしの姉の可能性は増えますか?」
 ルイーズは少し落ち着かない様子でブノアに問いただした。
 が、当のブノアもそんなことはわからない。推測で答えるしかない。
「フィリア様も領主様も金髪ですので、やはり変わらず、その可能性は少ないかと。断言は…… できませんが」
 ブノアはミアの綺麗な黒髪を見ながらそう言った。
 ブノアの言う通り領主の家系は幼少期から一貫して全員金髪である。
 それでも断言できる話ではないが、可能性は低いとブノアは判断した。
「そうですか。お父様に身のおぼえがあるだけに微妙なところですけどね」
 領主である父から直接聞きだしたルイーズは未だに心に憤慨を抱えている。
 母と結婚する前、とは言え既に母と婚約していた時期にも護衛の女性と恋仲になっていたのだから。
 しかも、その護衛は外道狩り衆の長の娘だ。
 その護衛、フィリアは突然に姿を消している。
 それも外道狩り衆の禁呪ともいえる月の呪印の刺青をその身に宿したまま姿を消している。
 ルイーズ達が探し出し封印したいのはその月の呪印の力だ。
 外道狩り衆の呪印の力は、今も昔も時代も表に出ていいものではない。
 ただ、月の印の反応から、ミアがフィリアという人物の娘だということはブノアの中では確定している。
 外道狩り衆の血族以外では印字はそもそも反応しないし、体に入り込むことなど決してない。
 その中でも月の印は特別な意味があり、フィリア、いや、ステッサ家の血を引いてでもいなければ体に入り込むようなこともない。
 ただフィリアも呪印のことよく思っていなかったのか、娘に受け継がせるどころか、それを防ぐような防衛陣をミアに施していたことにブノアは一安心する。
 少なくともミアは月の呪印を受け継いではいない。
「なくはないかもしれませんが、可能性は低いかと」
 正直ブノアにもミアが領主の娘の可能性が、まだなくはないことだと理解はできている。
 しかし、ルイーズの心情やミアの領主への関心の無さを考えると、そう言っておくほうが賢明と判断したからだ。
 なんだかんだでブノアもルイーズには甘い。
「話がまるで見えないのですが?」
 ただミアは現状まるで訳が分からない。
「はい、順を追って話していきましょう。あなたにはその資格があります。なんなら、ティンチルであなたと一緒にいたマーカス様も同じ血を引いてます」
「え? マーカスさんですか?」
 ミアが驚く。
「あちらは俺の方の縁者なので、ミア様からしてもかなり遠縁ですけども」
 ブノアが半笑いでそう言った。

 ルイーズの話を短くまとめると、ミアの母親と思しき人物フィリア・ステッサは現領主の護衛役の外道狩り衆と呼ばれる特別な呪術師ということだ。
 しかも護衛の立場でありながら領主であるルイ・リズウィッドと恋仲となっていた。
 だが、別の領地より嫁いで来ることとなったルイーズの母親との婚約が正式に決まってから、しばらくしてその身に禁呪の刺青を入れたまま姿をくらましたとのことだ。
 外道狩り衆の力は危険でありその役目も終わっているので、ルイーズはその力を封印してしまいたいらしい。
 中でもフィリアに刻まれている刺青、月の呪印はかなり危険な呪印の一つで、どうしても封印したいそうだ。
 また、ミアがロロカカ神より頂いた帽子も外道狩り衆特有の帽子であり、通し番号がフィリアの物と同じだったそうだ。
 造形が似ているという偶然はあるかもしれないが、通し番号まで一緒となると偶然では済まされない。
 ただ造形と通し番号は同じだが、ロロカカ神より頂いた帽子は、フィリア本人がかぶっていた物そのものでなく、それを模して造られているのではないか、という話だ。
「だいたいの事情はわかりました。ただ私も母のことはそれほど詳しく知らないんです。私が知っているのは、リッケルト村に赤ん坊の私を抱えて母がやってきたこと。その後は母は流行り病ですぐに亡くなったということです」
 ミアも自分の親のことを気にしなかったわけではない。
 気になり巫女になるまでに世話になっていた親代わりの長老なども聞いたが、話を濁されるだけでまともな返答は返ってこなかった。
「流行り病……」
「十五、六年前ですと…… 恐らく黄咳熱ですね。確かに東の地のほう流行しておりました」
 ブノアが記憶を頼りにルイーズに説明する。
 黄色い痰と酷い咳、そして高温な熱を出す流行り病で結構な人間の命を奪った流行り病。
 神の力を借りる以外で有効な治療法は未だにない病でもある。
「となると、月の呪印は失われたと考えていいでしょうか?」
 ルイーズがブノアに確認するように聞くと、
「墓などは? もしくは兄弟は?」
 ブノアはミアに向かい確認する。
 火葬されていれば回収は無理だが、土葬なら呪印の回収はできるかもしれない。特殊な呪印なので骨からでもある程度形が残っていれば回収することができる。
 またミアに兄弟がいれば、そちらに呪印が受け継がれている可能性もある。
「どちらもないです」
 それに対しミアは端的に知っていることを伝えた。
「そうですか。もしかして埋葬などが特別な方法で?」
 東の辺境の地なので、埋葬とはまた違った弔い方があるのかとルイーズは思ったが、
「いえ、母は流れ者だったので墓は作られなかった、と聞きました。その後どうなったかは私は聞かされてないです。兄弟のほうは自分にそんなものがいるなんてこと考えたこともなかったですね」
 と、ミアが答えた。
「よくそれで、その地元の神の巫女になれたのですね」
 地方では、よそ者に厳しいところもあると、言う話はルイーズも聞いたことはある。
 村の者でない者を村の墓地に墓を作って埋葬しないもともそれを考えれば納得は出来る。
 特に特殊な神を信仰しているような村では、よそ者を、信者でもないものを村に埋葬することを避けることはあるのかもしれない。
 そうなると、逆によそ者のミアが巫女になれたことが謎だ。
「当時の巫女と私の夢見に、ロロカカ様が出てこられて私を選んでくださったんです!」
 ミアは嬉しそうにそう語った。
「なるほど……」
 それならば納得できる話だ。
 ミアの巫女としての才能、おそらくは外道狩り衆の血が、優秀な呪術師としての力が、神に選ばさせたのかもしれない。
 通常の神でなく、噂通りロロカカ神が祟り神ならば、普通の神が嫌うという外道狩り衆の力が目に留まったのかもしれない、とルイーズは考えた。
「そう考えていくと、この帽子はおそらく母の形見を、ロロカカ様が用意して下さったんですね、私が寂しくないようにと」
 ミアは勝手にそう解釈して喜びの涙を流している。
 とはいえ、そう考えるが一番自然ではないか、とルイーズも納得する。
 でなければ、わざわざ形見に御力を込めて授けるようなことはしないだろう。
 ただそれは、ミアが寂しいからではなく、ルイーズにはミアの出自がわかるようにと授けたものなのかもしれない。
 あの帽子なら、外道狩り衆でもない限り見つけることなど出来はしない。
 実際にその帽子のおかげでミアの出自がこうして明かされる現在に至っている。
「そ、そうですか……」
 そのことにルイーズは戦慄する。
 ロロカカ神はミアの出自を明らかにさせてミアに何かをさせるつもりなのではないか、と。
 ただミア本人は貴族どころか領主の地位にも興味がなさそうではあるので、さしあたっては問題はないようにも思える。
 さすがにそのロロカカ神も遠く離れたこの地でお家騒動を起こしたいわけでもないだろう。
 神はそこまで人に興味はない。
「では、お話は終わりですね。ありがとうございます」
 そう言ってミアは片づけをし始めようとした。
 余りにもミアの反応が淡泊なのでルイーズも驚く。
「え? 随分あっさりしているのですね…… あなたも一応はこの領地の貴族なのですよ、それは間違いありませんよ?」
 事前に調べた情報ではミアは少し前までかなり貧乏な生活をこの魔術学院でもしていたはずだ。
 現在は、そうでもないようだが。
 それでも、ルイーズとしてはミアを貴族として迎え入れる準備だけはしてきている。
 貴族の、しかも、このリズウィッド領の貴族ともなればお金に困ることはないどころか、専属の魔術師を付けて魔術学院で学ぶということもしなくて済む。
「え、いえ、あの、興味ないですので……」
 と、当の本人が本当に興味ないように言い放った。
 むしろ迷惑そうにしているようにもルイーズには見える。
「で、では、あなたの家族…… そう、お爺様などに会うつもりは?」
 ルイーズがそう言うと、流石にミアも違った反応を示した。
「家族ですか…… 物心ついたころから一人で育ってきたのでよくわからないです」
 そうは言いつつも、ミアはそれには興味があると言った表情は浮かべている。
「ベッキオ・ステッサという、まあ、一般的にはあまり知られていない方なのですが」
 ステッサ家は外道狩り衆の本家だ。
 表向きはなんの変哲もないこの地方の貴族の家系の一つということになっている。
 ただ裏ではこの領地を裏から支える外道狩り衆の長となっている。
 その裏の権力は外道狩り衆が解散となった今でもその力は失われていない。
「では、私はミア・ステッサという名前なんですか? 今まで家名がなかったんですが、そう名乗ってもいいんですか?」
 ミアの知り合い、孤児院で育ったというスティフィでさえ家名を持っている。
 家名を持っていなかったミアからすると少しうらやましい物だったので少しだけ嬉しくはある。
「ええ。いえ、待ってください。一応ベッキオ様に確認してからで……」
「私のお爺さんですか…… ちょっと想像できないですね」
 そう言ってまだ見ぬ祖父をミアは想像する。
 それをブノアは心配そうにも半笑いで見る。ベッキオという老人をよく知っているからだ。
 ブノアが知っているベッキオは、お爺さん何て生易しい人物ではない。



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