転生皇子の新生活 高等部編

𝐍 𝐢 𝐚🐾

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中等部4年編

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 あれから時間が過ぎ、ルーカスが主催するお茶会が終わり、リヴァイが視察から帰ってくる頃になった。


「ルーカス殿下、お手紙です」


 レイアのお昼寝の時間、ルーカスが隣で本を読んでいると、モニカが一通の手紙を持ってやってきた。


「リヴからだ」


 手紙の送り主はリヴァイのようで、ルーカスはペーパーナイフを使い手紙を開くと、読んでいく。


「ふふ」


「どうかされましたか?」


 手紙を読んでクスリと笑ったルーカスに、モニカが不思議に思い尋ねると、とても嬉しそうに微笑んで答えた。


「リヴが明日の夕方に帰ってくるようだ」


「そうなのですね!」


「父様に頼んでリヴ達を夕食に招待してもらおうか」


「それは良いですね! 直ぐに執事長に伝えて参ります!」


「うん。お願い」


 モニカは急いで部屋を後にした。


『親愛なる殿下
 こちらの視察は順調に進み、13の日の夕方頃にはエスポワに到着するでしょう。

 追記 貴方様に会う為、急いで帰還致します。早く、シアンに触れたいです。
 レイアの様子も是非お聞かせください。

 リヴァイ・ノア・ムハンマド』


 ふふふ、まさか手紙で誘われるとはね。それにしても、リヴの手紙基報告書に私情が入ってくるとは、アルフィーに小言でも言われたのかな。


 ルーカスが可笑しそうに笑いながらそう思っていると、隣で眠っていたレイアが目を覚ます。


「とと~」


「おはよう、レイア。ぐっすり眠れたかい?」


「う!」


 ルーカスがレイアの頭を撫でてそう尋ねると、レイアは嬉しそうに返事をする。


「明日の夕方に父上が帰ってくるそうだ。一緒にお出迎えに行こうか」


「う! ちう、あう!!」


「そう、に会えるよ」



 そして翌日の夕方。手紙の内容通り、リヴァイとアルフィーは時間ぴったりに皇城の門をくぐった。

 ルーカスはレイアを連れて皇帝の謁見の間へ向かう。

 その道中、通路には多数の官僚や武官がおり、ルーカスとレイアの姿を目にするものは多く存在した。しかしその誰として、ルーカスに話しかけてくることも、レイアを連れていることに対してヒソヒソと話す者もいなかった。

 1人の中年の文官を除いては。その文官は、ルーカスの元へ近づくと、軽く頭を下げて尋ねてくる。


「これはこれは第3皇子、赤子を連れてどちらまで?」


 また面倒な事がおきそうだ。


「父様の所だけど、何か様かい?」


「いえいえ、とても可愛らしい赤子を連れておられるのでつい。小さな公子、お名前をお聞きしても良いか?」


 文官はレイアの方へ目線を向けると、レイアに名前を尋ねた。するとレイアは不思議そうな顔をしてルーカスの方を見た。


 はあ、僕の前で堂々と名前を尋ねてくるとは。


 ルーカスは怒りを彷彿とさせながら、レイアを抱き上げた。その様子に文官は一瞬ニヤリと笑うと、焦った表情をして口を開く。


「お、お待ちください、第3皇子。私はただ、公子の名前を知りたいだけ、、」


「レイア、このおじさんが君の名前を、君の口から聞きたいらしい。答えてあげなさい」


 しかしルーカスは文官の言葉を遮りレイアに話しかけた。


「なーえ?」


「そう。言えるでしょう?」


「う! れあ・むはど!!」


 レイアはドヤリ顔で満足そうに名前を答えた。


「良い子だ。聞き取れたよね? この子は誰だい?」


「っ、ム、ムハンマド公子でございます」


「ああそういえば、君も、ムハンマドだったね」


「え、ええ、ムハンマドの名を使わせて頂いているただの端くれで御座います。で、では私はこれで……!」


 ルーカスが圧を加えて尋ねると、文官は酷く顔を真っ青にし足早に逃げ去った。


 逃げるくらいなら話しかけて来なければ良いのに。


「行こうか、レイア」


 ルーカスも、レイアを連れて謁見の間へ急いだ。


 リヴはまだ謁見の支度をしているはずだから急げば間に合うよね。


 ルーカスは謁見の間の皇族専用扉から中に入った。中に入ると、アーサーが玉座に座り、その隣にエドワードが座っている。ルーカスの他に陳列しているのはフレデリック、アレクサンダー、ディムロットの3人だけであった。


「遅かったな、ルーカス。何かあったのか?」


「少し。待たせてごめんね」


「かまわん。また夕食の時にでも話を聞こう」


「うん」


 アーサーがそう言い、ルーカスが返事をすると、謁見の間の扉が開かれリヴァイとアルフィーが中へ入ってくる。
 するとルーカスとレイアに気付いたリヴァイは、少し驚いたように固まった後、冷静になりアーサーの御前まで歩き跪く。


「面を上げろ。よく無事に戻った被害は少ないと聞いたが詳しく報告をしろ」


「先ず私から報告させて頂きます。例年通り、我が領の私兵で編成した討伐隊と共に、帝都を囲う森に入り、魔物を討伐致しました。昨年同様、他公爵家の討伐隊と接触することなく、5日間の討伐を終えました。
 我が討伐隊は負傷兵も少なく、死者はおりません。魔物量は例年よりやや少ない傾向が御座います」


「この5日間で討伐した魔物量は、急降下した訳ではございませぬが、例年に比べると、微々たる差ではあるものの確実に減っておりました」


 リヴァイとアルフィーが魔物討伐についての報告をあげる。

 四公爵家は、毎年5の月、6の月辺りに、帝都を囲む森の中に入り、魔物を討伐する義務があった。それは毎年行われていることではあるが、先代カーソン公爵の代では、他家との小競り合いが必ず起きていた。

 しかし現カーソン公爵が討伐隊を編成する様になり、去年一昨年から小競り合いがなくなり、他家の干渉も無くなった。


「魔物の減少か。ムハンマドは今年も冬に討伐に向かうのだろう?」


「その予定でございます」


 夏の討伐は義務であるが、冬の討伐は義務ではない。越冬の準備の為に忙しい冬は、討伐に向かうかは年によって変わる。しかしムハンマド公爵家は余程の事態が起きた際でない限り、必ず討伐へ向かっていた。


「では魔物の動向に集中しておけ。何か些細なものでも変化があれば必ず報告するのだ」


「「はっ、かしこました」」


 そうしてリヴァイとアルフィーの謁見は終了した。


「リヴ、おかえり」


「ちう!」


「殿下、レイア、ただ今戻りました。お出迎え感謝致します」


「早く君に会いたくて」


 ルーカスはリヴァイに挨拶すると、レイアとリヴァイを連れて謁見の間を後にする。


「レイア、こっちに来い」


「う!」


 リヴァイはルーカスが抱えているレイアに手を伸ばし呼ぶと、レイアを抱えた。


「お疲れ様。怪我はしていないかい?」


「しておりません。疲れも酷くはございませんのでどうかご心配なさらず」


「良かった。この2週間、レイアは乳母を連れて君を探し回っていたよ。視察をまだ理解していなかったようだ」


「それは、乳母には悪い事をしました。レイア、元気にしていたか?」


「う!」


 リヴァイの問いかけにレイアは元気に返事をした。


「本当に理解しているのか?」


「ふふ、分かっているよね? 今日は無礼な者にもきちんと名前を言えたもんね」


「う!」


「……無礼な者、ですか?」


 ルーカスの言葉に、怪訝に思ったリヴァイは尋ねた。


「ムハンマド出身の文官が、異様にレイアの名前を尋ねてきてね。けれど、レイアは自己紹介をしていた。褒めてあげないといけないね」


「……そう、ですね。レイア、名前を言えたのか? 良くやった」


 そう言いリヴァイはレイアの頭を優しく撫でる。


「詳しい話はフレデリック達もいる夕食の時に。今はレイアを沢山褒めてあげようか」





ーーーーーーーーーーーー

 こんな時間になってしまいすみません(>_< ;)


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