転生皇子の新生活 高等部編

𝐍 𝐢 𝐚🐾

文字の大きさ
上 下
43 / 105
中等部4年編

38

しおりを挟む


 ルーカス達は食堂へ集まると、晩酌会を始めた。


「それでルーカス、謁見の間に来る前に何があった」


 一通り食事を終えると、アーサーが切り出した。
 ルーカスはムハンマドの分家出身の文官が、謁見の間へ向かう道中に、話しかけてきたことを伝える。


「レイアに、名を尋ねてきた」


 その言葉にアーサーやフレデリック達は険しい表情をする。


「ルーの前で、わざわざレイアに名を尋ねるなんて、馬鹿にするのも大概にして欲しいものですね」


 ソフィアは怒り心頭の様子で言う。


「レイアは、何と答えたんだい?」


「レイア・ムハンマドと答えたよ」


「あい!」


「ふふ、賢い子だ」


 自身の名前に反応したのか、レイアは勢いよく返事をする。その様子に、ルーカスは微笑みレイアを褒めた。


「訓練した甲斐があったな」


「これも皇子皇女様方のおかげにございます」


 アルフィーがそう言い、フレデリック、ティファニー、リヴァイも礼を言うように頭を下げた。


 自己紹介とは、名を知らせる他、呼び方を決める役割を持つ。基本的に、自己紹介は全ての名を名乗りあげるものだ。

 その為位の近い家門同士の場合、家名で呼び合うことになる。しかし、家名を告げない場合、もしも本名だけを告げた場合、本名で呼ぶ事を許可した事になる。

 だがそれと同時に、相手に対しての冒涜という、真逆の意味で捉えられる事もある。
 本名だけ名乗れば家名も分かる。私の名前を知っているのは当然だ。そんな態度を取るものも、過去には大勢いたためだ。

 しかしその態度が許されるのは皇族のみだろう。民が皇族の名を知っていることは当然のことなのだから。


「ルーお兄様、その文官は何が目的だったのでしょうか? レイアを本名で呼ぶことですか? それとも、レイアを侮辱するためですか?」


 珍しく、リリアンも怒った様子でルーカスにそう尋ねた。


「恐らくは前者。レイアが僕とリヴァイの、ムハンマドの直系の養子に入ることは、城の中では、いや、高位貴族の中では暗黙の了解だ。しかし僕達はそれを公にしていない為、レイアは分家の人間に過ぎない」


「そうね。だからレイアにちょっかいをかけても、ルーが直接的な事は言えないから処分されないと高を括っているわ」


「そう。そして親族同士が、名を示し合ったのならば、本名で呼ぶ事は誰も咎めることは無い。そして1度認められたと言う事実があれば、今後レイアを、本名で呼び続けるのだろう」


「……レイアが公爵家の直系になり、当主になったとしても」


 食堂の中に、重い沈黙が流れる。


「殿下方がレイアに名を教えて下さったことは、感謝しきれません」


「小賢しい手を使いこの子の輝かしい未来を穢すグズが、権力を持たないよう、一人でも多く、消え去る事を願っているよ」


 ルーカスは冷え切った殺伐とした雰囲気を纏いそう言い放った。その凍えそうな程冷たい空気に、この場にいる全ての者が心臓を鷲掴みにされている感覚へ陥った。


「っ……ルーカス、、」


「っ、、! ごめんね……」


 苦しそうにアーサーがルーカスの名を呼ぶと、ルーカスはハッとして我に返り、動揺した表情で皆に謝る。


 最近、あの感覚が増えた。心が凍り付き、全てがどうでも良くなるような、あの感覚が……。


「とと!」


 ルーカスが不安や恐怖という負の感情に落ちそうになった時、️嬉しそうな表情のレイアが、元気いっぱいにルーカスを呼んだ。


「殿下、レイアは貴方が自分の事を思って下さっていることを充分過ぎるほどに理解しているようです」


「リヴ……ああ、この子には、いつも、、救われる」


 ルーカスは泣きそうな表情になり、レイアのことをぎゅっと抱き締めた。


 僕の心はいつか、父様達への愛ですら忘れてしまう程、凍ったものになるかもしれない。
 この子が怖がらないのは、まだ恐怖も知らない幼児だからなのかもしれない。
それでも、もしかすればこの子は、足を竦ませることなく、僕から逃げてくれるかもしれない。それが、僕にとっての救いになる。


「ルーカス殿下、一先ずは、レイアが名を言えたことに、乾杯致しませぬか?」


「……アルフィー」


「父上のおっしゃる通り、1歳半に満たない幼子が自己紹介をしたのですから、素晴らしいことです。レイアは類稀なる神童かもしれません」


 フレデリックまで……。


「何だフレディ。もう孫馬鹿になったのか。ルーカスは1歳に満たぬ内から喋っていたぞ」


「何だと? 親バカのアースには言われたくないな。ルーカス殿下が神童なのは認めるが、レイアが素晴らしいのも事実だろう」


「それは私も認めてやる。レイアはルーカスの息子だからな」


 アーサーはにやりと笑いドヤ顔でフレデリックに言った。そのやり取りを見るジェシカ達は微笑ましそうに二人を見つめる。


 するとルーカスはこちらを見ていたリリアンに気がついた。


「リリー……驚いたよね。怖がらせてごめんね」


 ルーカスは先程の事を落ち込んだ様子でリリアンに謝罪する。するとリリアンは少し怒ったような表情になって言った。


「妹である私が! こんなにも優しくて完璧でお美しいルーお兄様の事を、怖がる事なんて絶対にありません!!」


 リリアンは拳をぎゅっと握る。
 そのリリアン言葉と表情に、ルーカスは驚き目を見開いた。


「姉である私も同感よ」


「兄である私もだ」


 リリアンの言葉に、ソフィアとエドワードが賛同する。


「ルーク、確かに君の、凍える様な殺気に、急所を掴まれた感覚に、私達は恐怖を覚えた。だけどそれは、君自身を怖がった訳では無いんだ。これだけは、分かっていて欲しい」


「ウィル兄さん……。ぅん、ありがとう」


 兄弟達の言葉に、ルーカスは心底嬉しそうに微笑みお礼を言った。


「それにしても、さっきのリリーの怒った姿は、ソフィにそっくりでしたね」


「ああ。流石は姉妹だ」


「ふふっ、そうだね」


 ウィリアム達にそっくりだったと言われ、リリアンは嬉しそうな恥ずかしそうな表情をし顔を抑えたのだった。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

王道学園なのに、王道じゃない!!

主食は、blです。
BL
今作品の主人公、レイは6歳の時に自身の前世が、陰キャの腐男子だったことを思い出す。 レイは、自身のいる世界が前世、ハマりにハマっていた『転校生は愛され優等生.ᐟ‪‪.ᐟ』の世界だと気付き、腐男子として、美形×転校生のBのLを見て楽しもうと思っていたが…

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

処理中です...