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中等部4年編
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しおりを挟む押し寄せてきた生徒達を見て、ルーカスは少し呆然としていると、突然体が宙に浮き目の前がぐらついた。
「殿下、失礼致します」
どうやらリヴァイがルーカスの事を抱えたようだ。そしてリヴァイは怖い顔をしながら人混みに視線をやる。
「邪魔だ」
「退いて下さいますか? 部屋に戻りますので」
リヴァイの端的で低く怒りの籠った声と、アレイルの丁寧だが酷く冷たい声色に、生徒達は黙ってすんなりと道を開ける。
道が開くと、リヴァイはルーカスを抱えたまま食堂の入口まで止まることなく歩いていく。その後ろをアレイルと、先程外野に放り出されたキャサリンやフランク達が追ってくる。
そして食堂を出るとリヴァイがルーカスを下ろした。
「突然抱えてしまい申し訳ございません」
「ルーカス殿下、お怪我は御座いませんか!? お側を離れてしまい申し訳ございません!」
キャサリンは慌ててルーカスに心配の言葉と謝罪を送った。
「2人とも大丈夫だよ。寧ろ君達が怪我をしていないか心配だ。突然押し出されて驚いたでしょう?」
「私達は大丈夫でしたよ」
「ああ、寧ろテオの方が押し潰されねぇか焦ったぜ」
「そうそう、ルーカスは華奢だから直ぐに骨とかポックリ行きそうだよな」
ギャレット達が返答し、フランクが笑いながら一言付け加える。それをルーカスは少し困った表情になりながらも安堵したのだった。
あの後ルーカスはフランク達とその場で別れると、リヴァイ達と共に部屋へと戻って来た。
「それではルーカス殿下、私達はこれで」
「ごゆっくりお休み下さい」
「ありがとう。2人ともおやすみ」
部屋の前でアレイルとキャサリンと別れると、2人は部屋の中へとはいる。
すると突然、ルーカスは後ろからリヴァイにぎゅっと強く抱き締められた。
「どうしたんだい、リヴ?」
「……モルと踊るのですか? 他の者達とも……」
リヴァイは眉を寄せながら、捨てられた犬のような瞳をしてそう言った。
「嫉妬、しているのかい……?」
しかしルーカスが少し驚いたようにそう尋ねると、リヴァイはハッとして顔を青ざめさせた。
「も、申し訳ございません! 出過ぎたことを申しました」
ルーカスの反応に、リヴァイは彼が嫉妬心を煽る気はなく、皇子としての人脈作りの為にダンスを了承した事に気がついた。
「どうかお忘れ下さい……。湯を張って参ります」
そう言うとリヴァイは急ぎ足で浴室へと向かおうとする。
「待って」
それをルーカスは腕を掴んで制止する。
「如何様の罰もお受け……」
「罰なんて与えないよ。少し落ち着いて?」
そう言いルーカスはリヴァイの頭を引き寄せ撫でるように正面から抱きしめた。
「生徒会室であれだけ煽って揶揄ったから、わざとだと思っても仕方ないよね。それに違ったからと言って君を罰する気も毛頭ない」
「…………」
「リヴ、僕が君に嫉妬されることを、どれだけ嬉しく思っているのか知らないのかい?」
ルーカスがニヤリと笑いそう尋ねると、リヴァイは少し恥ずかしくなったのか、視線を逸らしてしまう。
「ふふふ、ねえ、リヴ。明日から放課後に、ダンスの練習に付き合ってくれるかい? 男性パートも沢山踊るだろうから」
「構いませんが、私は女性パートは踊れませんので……」
「そうだね。だから、覚えて? ((ボソッ…僕の為に」
リヴァイは少し目を見開くと、ルーカスと視線を合わせた。するとルーカスはリヴァイを抱き締めていた手を離し、浴室の方へ向かう。
「ほら、湯を張りに行くんでしょう?」
そう言って伸ばされた手に、リヴァイは自然と手を伸ばしてしまう。
「今日は一緒に入るかい?」
そうやって揶揄うルーカスに、リヴァイは拗ねたようにいいえと言ったのだった。
湯浴みから上がったルーカスは、リヴァイが上がるのを待つ間に、彼のベッドの壁際に隠すように、様々な物を置き準備をした。それが終わると、ルーカスもリヴァイのベッドに乗りごろんと寝転ぶ。
言い出すタイミング、逃したな。
少しの間考え事をしてリヴァイのベッドで寝転んでいると、リヴァイが湯浴みから上がり浴室から戻ってきた。
すると自分のベッドに寝転ぶルーカスを見ると、リヴァイは一瞬固まった。しかし直ぐにルーカスに尋ねる。
「どうされたんですか?」
「ん~、リヴと同じベッドで寝たいなと思って」
ルーカスが考える素振りを見せた後、取って付けたような笑顔を浮かべると、リヴァイは何か企んでいるなと勘づく。
「昨夜も屋敷で共に寝ましたし、ここのベッドは狭いので、屋敷に帰ってからではいけませんか?」
「……けち」
拗ねたように悪態をつきながらも、ルーカスは起き上がってベッドから足を出した。その動作に諦めたのだと思い、リヴァイは寝る準備をする為にベッドに近付いた。
すると、ベッドの上にあるはずも無いものが視線の中に入ってくる。
「殿、っ……!」
ルーカスに尋ねようと声を出したのも束の間、リヴァイは腕を引き寄せられ、ベッドの上にルーカスを下敷きにして倒れ込んだ。
「申し訳ござ……ん」
リヴァイは慌てて謝罪の言葉を口にしたが、その言葉はルーカスの唇によって遮られてしまう。
「気付いているよね……」
「……殿下」
「リヴ、」
リヴァイの呼び方に、ルーカスが窘めるように名を呼んだが、リヴァイは視線を逸らしてしまう。
「この間、君が僕に失禁させたこと、まだ引きずっているのかい?」
「…………」
黙り込むリヴァイに、肯定と判断する。
「……決めた。月の曜日と水の曜日はリヴとえっちする……」
「っ!? それは……」
リヴァイが躊躇うと、ルーカスは眉を寄せ悲しそうな表情になる。その瞳には少しの涙が浮かびキラキラと光を反射させている。
「慣らさないと、来年になっても最後まで出来ないよ? ……それとも僕とするの、いや? 僕ではだめだったのかな?」
「そんなことは……!」
「だったら、逃げないでよ……。最後まで出来ないから、君が辛いのも、僕が怖がらないように気遣ってくれているのも分かっている。それでも、言葉にしてくれないと、不安になる」
「……私は、言葉足らずで、口下手で、貴方を不安にさせてしまいます。なので、行動で示させてください」
そう言うリヴァイの瞳は、心底優しくルーカスを見つめている。ルーカスは少しむず痒さを感じながらも、嬉しそうに頷いた。
「それから、私の望みを1つ、聞いていただけませんか?」
「なに?」
「普段は、主と側近で立場を弁えます。ですが、情事の際だけは、貴方と対等で在りたい。貴方を虐め、揶揄うことを許してくださいませんか……?」
その言葉を聞いた瞬間、ルーカスは酷く高揚し、リヴァイの首元に抱き着いた。そして駄々をこねるように言う。
「ずっとが良い……」
「それは、私が許せません……」
「……けち」
そう言ったルーカスだが、表情は嬉しそうで、リヴァイは困ったように笑う。
「逃げてしまい、申し訳ございませんでした」
「では、今から沢山行動で示して?」
ルーカスは少し眉を上げてそう言った。するとリヴァイは優しくルーカスに口付けをする。
そして少しの間触れるだけの口付けをすると、今度は親指でルーカスの口をこじ開ける。しかしその手もとても優しいものだ。
口の中へ舌を侵入させ絡め取るように、以前とは違う優しい口付けに、ルーカスの息はとてもゆっくりと上がっていった。
漸く唇が離れるとルーカスはとても嬉しそうな表情で、首と肩をはだけさせて言う。
「リヴ、噛み跡、なくなった……」
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