15 / 105
中等部4年編
10
しおりを挟む押し寄せてきた生徒達を見て、ルーカスは少し呆然としていると、突然体が宙に浮き目の前がぐらついた。
「殿下、失礼致します」
どうやらリヴァイがルーカスの事を抱えたようだ。そしてリヴァイは怖い顔をしながら人混みに視線をやる。
「邪魔だ」
「退いて下さいますか? 部屋に戻りますので」
リヴァイの端的で低く怒りの籠った声と、アレイルの丁寧だが酷く冷たい声色に、生徒達は黙ってすんなりと道を開ける。
道が開くと、リヴァイはルーカスを抱えたまま食堂の入口まで止まることなく歩いていく。その後ろをアレイルと、先程外野に放り出されたキャサリンやフランク達が追ってくる。
そして食堂を出るとリヴァイがルーカスを下ろした。
「突然抱えてしまい申し訳ございません」
「ルーカス殿下、お怪我は御座いませんか!? お側を離れてしまい申し訳ございません!」
キャサリンは慌ててルーカスに心配の言葉と謝罪を送った。
「2人とも大丈夫だよ。寧ろ君達が怪我をしていないか心配だ。突然押し出されて驚いたでしょう?」
「私達は大丈夫でしたよ」
「ああ、寧ろテオの方が押し潰されねぇか焦ったぜ」
「そうそう、ルーカスは華奢だから直ぐに骨とかポックリ行きそうだよな」
ギャレット達が返答し、フランクが笑いながら一言付け加える。それをルーカスは少し困った表情になりながらも安堵したのだった。
あの後ルーカスはフランク達とその場で別れると、リヴァイ達と共に部屋へと戻って来た。
「それではルーカス殿下、私達はこれで」
「ごゆっくりお休み下さい」
「ありがとう。2人ともおやすみ」
部屋の前でアレイルとキャサリンと別れると、2人は部屋の中へとはいる。
すると突然、ルーカスは後ろからリヴァイにぎゅっと強く抱き締められた。
「どうしたんだい、リヴ?」
「……モルと踊るのですか? 他の者達とも……」
リヴァイは眉を寄せながら、捨てられた犬のような瞳をしてそう言った。
「嫉妬、しているのかい……?」
しかしルーカスが少し驚いたようにそう尋ねると、リヴァイはハッとして顔を青ざめさせた。
「も、申し訳ございません! 出過ぎたことを申しました」
ルーカスの反応に、リヴァイは彼が嫉妬心を煽る気はなく、皇子としての人脈作りの為にダンスを了承した事に気がついた。
「どうかお忘れ下さい……。湯を張って参ります」
そう言うとリヴァイは急ぎ足で浴室へと向かおうとする。
「待って」
それをルーカスは腕を掴んで制止する。
「如何様の罰もお受け……」
「罰なんて与えないよ。少し落ち着いて?」
そう言いルーカスはリヴァイの頭を引き寄せ撫でるように正面から抱きしめた。
「生徒会室であれだけ煽って揶揄ったから、わざとだと思っても仕方ないよね。それに違ったからと言って君を罰する気も毛頭ない」
「…………」
「リヴ、僕が君に嫉妬されることを、どれだけ嬉しく思っているのか知らないのかい?」
ルーカスがニヤリと笑いそう尋ねると、リヴァイは少し恥ずかしくなったのか、視線を逸らしてしまう。
「ふふふ、ねえ、リヴ。明日から放課後に、ダンスの練習に付き合ってくれるかい? 男性パートも沢山踊るだろうから」
「構いませんが、私は女性パートは踊れませんので……」
「そうだね。だから、覚えて? ((ボソッ…僕の為に」
リヴァイは少し目を見開くと、ルーカスと視線を合わせた。するとルーカスはリヴァイを抱き締めていた手を離し、浴室の方へ向かう。
「ほら、湯を張りに行くんでしょう?」
そう言って伸ばされた手に、リヴァイは自然と手を伸ばしてしまう。
「今日は一緒に入るかい?」
そうやって揶揄うルーカスに、リヴァイは拗ねたようにいいえと言ったのだった。
湯浴みから上がったルーカスは、リヴァイが上がるのを待つ間に、彼のベッドの壁際に隠すように、様々な物を置き準備をした。それが終わると、ルーカスもリヴァイのベッドに乗りごろんと寝転ぶ。
言い出すタイミング、逃したな。
少しの間考え事をしてリヴァイのベッドで寝転んでいると、リヴァイが湯浴みから上がり浴室から戻ってきた。
すると自分のベッドに寝転ぶルーカスを見ると、リヴァイは一瞬固まった。しかし直ぐにルーカスに尋ねる。
「どうされたんですか?」
「ん~、リヴと同じベッドで寝たいなと思って」
ルーカスが考える素振りを見せた後、取って付けたような笑顔を浮かべると、リヴァイは何か企んでいるなと勘づく。
「昨夜も屋敷で共に寝ましたし、ここのベッドは狭いので、屋敷に帰ってからではいけませんか?」
「……けち」
拗ねたように悪態をつきながらも、ルーカスは起き上がってベッドから足を出した。その動作に諦めたのだと思い、リヴァイは寝る準備をする為にベッドに近付いた。
すると、ベッドの上にあるはずも無いものが視線の中に入ってくる。
「殿、っ……!」
ルーカスに尋ねようと声を出したのも束の間、リヴァイは腕を引き寄せられ、ベッドの上にルーカスを下敷きにして倒れ込んだ。
「申し訳ござ……ん」
リヴァイは慌てて謝罪の言葉を口にしたが、その言葉はルーカスの唇によって遮られてしまう。
「気付いているよね……」
「……殿下」
「リヴ、」
リヴァイの呼び方に、ルーカスが窘めるように名を呼んだが、リヴァイは視線を逸らしてしまう。
「この間、君が僕に失禁させたこと、まだ引きずっているのかい?」
「…………」
黙り込むリヴァイに、肯定と判断する。
「……決めた。月の曜日と水の曜日はリヴとえっちする……」
「っ!? それは……」
リヴァイが躊躇うと、ルーカスは眉を寄せ悲しそうな表情になる。その瞳には少しの涙が浮かびキラキラと光を反射させている。
「慣らさないと、来年になっても最後まで出来ないよ? ……それとも僕とするの、いや? 僕ではだめだったのかな?」
「そんなことは……!」
「だったら、逃げないでよ……。最後まで出来ないから、君が辛いのも、僕が怖がらないように気遣ってくれているのも分かっている。それでも、言葉にしてくれないと、不安になる」
「……私は、言葉足らずで、口下手で、貴方を不安にさせてしまいます。なので、行動で示させてください」
そう言うリヴァイの瞳は、心底優しくルーカスを見つめている。ルーカスは少しむず痒さを感じながらも、嬉しそうに頷いた。
「それから、私の望みを1つ、聞いていただけませんか?」
「なに?」
「普段は、主と側近で立場を弁えます。ですが、情事の際だけは、貴方と対等で在りたい。貴方を虐め、揶揄うことを許してくださいませんか……?」
その言葉を聞いた瞬間、ルーカスは酷く高揚し、リヴァイの首元に抱き着いた。そして駄々をこねるように言う。
「ずっとが良い……」
「それは、私が許せません……」
「……けち」
そう言ったルーカスだが、表情は嬉しそうで、リヴァイは困ったように笑う。
「逃げてしまい、申し訳ございませんでした」
「では、今から沢山行動で示して?」
ルーカスは少し眉を上げてそう言った。するとリヴァイは優しくルーカスに口付けをする。
そして少しの間触れるだけの口付けをすると、今度は親指でルーカスの口をこじ開ける。しかしその手もとても優しいものだ。
口の中へ舌を侵入させ絡め取るように、以前とは違う優しい口付けに、ルーカスの息はとてもゆっくりと上がっていった。
漸く唇が離れるとルーカスはとても嬉しそうな表情で、首と肩をはだけさせて言う。
「リヴ、噛み跡、なくなった……」
42
お気に入りに追加
134
あなたにおすすめの小説

ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね
ヒラヲ
BL
「オーレリア・キャクストン侯爵令嬢! この時をもって、そなたとの婚約を破棄する!」
オーレリアに嫌がらせを受けたというエイミーの言葉を真に受けた僕は、王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付ける。
しかし、突如現れた隣国の第一王子がオーレリアに婚約を申し込み、嫌がらせはエイミーの自作自演であることが発覚する。
その結果、僕は冤罪による断罪劇の責任を取らされることになってしまった。
「どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!?」
卒業パーティーから一ヶ月後、王位継承権を剥奪された僕は王都を追放され、オールディス辺境伯領へと送られる。
見習い騎士として一からやり直すことになった僕に、指導係の辺境伯子息アイザックがやたら絡んでくるようになって……?
追放先の辺境伯子息×ざまぁされたナルシスト王子様
悪役令嬢を断罪しようとしてざまぁされた王子の、その後を書いたBL作品です。

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

王道学園なのに、王道じゃない!!
主食は、blです。
BL
今作品の主人公、レイは6歳の時に自身の前世が、陰キャの腐男子だったことを思い出す。
レイは、自身のいる世界が前世、ハマりにハマっていた『転校生は愛され優等生.ᐟ.ᐟ』の世界だと気付き、腐男子として、美形×転校生のBのLを見て楽しもうと思っていたが…

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる