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中等部4年編
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しおりを挟む「あ、握手してください!!」
コロンのその発言に、ルーカスは驚きのあまり拍子抜けた声を出した。そして同じく警戒していた側近達や、フランク達も同様に呆気に取られる。
「・・・はははっ! 何だ、またルーカスに嫌がらせをしに来た奴かと思ったぜ」
そんな沈黙を破るように、フランクが大笑いをしながらそう言った。
「い、いえそんな! 僕、第3皇子殿下の大ファンなんです!!」
「僕のかい?」
「はい! 国の為に努力される第3皇子殿下のお姿に、、とても感銘を受けたのです……!」
「大袈裟だと思うけど」
「そんな事は有りません!! 長い年月を演技をして過ごし、見事不当な反対派を捕らえられた第3皇子殿下は本当に尊敬すべきお方なのですよ!!」
コロンの熱量に、ルーカス達は少し気圧される。
「さっきの緊張はどこいったんだよ……」
「あっ、す、すみません……!! 嬉しくて、つい……」
「ふふっ、尊敬して貰えるのは嬉しいよ。ありがとう」
そう言って椅子から立ち上がると、ルーカスは少し微笑みながらコロンの頭を優しく撫でた。
「あ、あわわ、嬉しいです!! 絶対にもう頭を洗いません!」
「それは洗いましょう……?」
今年の1年生は可愛い反応の子が多いな。
「あ、あの! 無礼ついでにもうひとついいですか!?」
「ん? なんだい?」
「よろしければ、オリエンテーションの際に、僕とダンスを踊ってくださいませんか!!? ((ボソッ…言っちゃった……!!!」
コロンは両拳に力を込めて握り、目をぎゅっと瞑りながら勇気をだしてダンスに誘った。
その可愛らしい言動に、アレイルとフランクは感心した様に拍手を送る。だがリヴァイだけは、彼を酷く敵対視する様に睨みを利かせて眉を寄せた。
「ええと、リヴと踊った後になるけどそれでも構わないかい?」
「も、勿論です!! 第3皇子殿下とノア様を引き剥がそうとなんて微塵も思ってませんので!! 寧ろお二人のカップリングをとても強く推しております!!!」
「カッ、プリング……??」
聞き慣れない言葉に、ルーカス達は少し首を傾げた。するとコロンは嬉しそうに笑いながら答えた。
「僕、お二人のご関係にとても憧れているんです!!」
「僕とリヴの関係に?」
「はい! 第3皇子殿下が演技をなされていた間に、お二人はお互いに恋に落ちたと聞きました。関係を表に出せない中、それでも想いが通じやっとの思いで恋人になられたお二人の、精神的な固い絆に深く感銘を抱いたのです! だからお二人には絶対に幸せになって頂きたいのです!」
嬉しそうにそう語るコロンをルーカスは微笑ましく感じる。
「僕達の関係をこんなにも応援してくれているなんてとても嬉しいね?」
「……そうですね」
ルーカスがリヴァイの方を向いてそう言うと、彼は少し間を作った後に、肯定した。
……リヴはあまり嬉しそうではないね。
「本当にお二人の仲を邪魔する気はないのですが……憧れのお二人で、それもこんなにも美しい方々と、1度でも良いから踊ってみたいという、欲が出てしまいました……」
指をもじもじさせながら、申し訳なさそうに言うコロンに、ルーカスは少し考える素振りを見せた後に言う。
「それならばリヴとも踊るのはどうだい? 僕達と踊ってみたかったんでしょう?」
「よ、よろしいのですか……?」
コロンはリヴァイにおずおずと目線を向けて尋ねた。しかしリヴァイの瞳には、少しの哀愁が漂る。
「その方が僕だけと踊るよりも、君も嫉妬しないのではないかな?」
「は、い……」
リヴァイは自分に言い聞かせるように肯定の返事をする。しかしそれをルーカスはすぐ様見抜いた。
「……嫌なのであれば断って? 無理強いはしたくない」
「いえ……。そちらの方が私は良いです。嫉妬心も少しはましかと……」
「本当に?」
「はい」
ルーカスはじっとリヴァイのことを見据える。
「……分かった。では、当日は僕達の所へ来てくれるかい?」
「はい!! 第3皇子殿下、ノア様、本当にありがとうございます!」
コロンは心底嬉しそうに二人へ向けてお礼を言った。
「構わないよ。それよりも、第3皇子殿下と言うのは長いでしょう? もう少し砕けた感じで構わないよ。君の事もコロンと呼ばせてもらえるかい?」
「も、勿論です!! えっと、あの、お、皇子様!」
コロンは少し考えた後、ルーカスの事を皇子様と呼んだ。その呼び方に、ルーカスは少し目を見開くと、楽しそうに目を細め口角を上げて言う。
「ふふふ、君は名前も言動も、反応も全てが可愛らしい」
「ぅう……。((ボソッ…か、かっこいい……」
(((リヴ(ノア様)の顔怖……)))
ルーカスの悪戯な表情に、コロンは頬を染め手で顔を隠す。そして他の皆はリヴァイの瞳に浮かぶ強烈な嫉妬心を感じ取り、少し顔を青くした。
「ん? 皆どうしたんだい?」
しかしルーカスだけは背後にいるリヴァイの表情には気付くことが出来ず不思議そうにそう言った。
「あ、あの、皇子様。ダンスの時、皇子様からお誘い頂けませんか……?」
コロンの問いに、ルーカスは不思議に思いながらも尋ね返した。
「それは構わないけれど、女性パートは踊れるのかい?」
「は、はい! 家で教えて貰いました!」
「ではそうしようか。ふふふ、良かったね、リヴ。コロンの為に女性パートを覚えなくて済んだみたいだ」
「ノア様に踊らせる気だったのかよ……」
ルーカスが冗談混じりに言うと、マルセルは呆れたように苦笑いをしてそう言った。
「本当にありがとうございます!! 皇子様とお話できただけでなく、お二人とダンスまで踊れるなんて!」
「こんなに喜んでくれると、嬉しくなるね。また話し掛けに来てくれるかい?」
「い、いいのですか!?」
「勿論」
ルーカスの言葉に、コロンは眩しいくらい表情を明るくして笑い返事をした。そして元気よくお礼を言うと、皆の元を去っていった。
するとルーカス達のやり取りを見ていた生徒達が、そわそわしながらこちらを見ていた。それに気付いたルーカスは不思議そうにするが、すぐ様その生徒達に勢いよく囲まれてしまった。
「あの! 私ともダンスを踊ってください!!」
「俺もお願いします!」
「私も!」
「僕も!」
その男女、学年問わない多くの生徒達の群衆に、リヴァイとアレイルはルーカスを庇い立てるように前に立つが、他の皆は押しのけられて外野に放り出されてしまう。
外からはルーカスの姿は見えないが、生徒達よりも頭1つ分高いリヴァイとアレイルの、怒りに満ちた冷たい瞳はしっかりと捉えることが出来たのだった。
はあ、収拾がつかないよ……。
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