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中等部4年編
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しおりを挟む翌日の朝、ルーカスはいつもの様に卯の刻に目を覚ました。すると丁度湯浴み終わりのリヴァイが部屋に戻ってきた。
「殿下、おはようございます」
「おはよう、まだ君の指が入っている感じする……。僕も湯浴みしてくる」
「っ……はい」
そう言うとルーカスは着替えを持って浴室へと向かった。
最近は記憶が流れ込んでくる痛みにも慣れてきたのか、寝ている間にあまりにも騒がしいことが無い限りは、寝起きのルーカスの機嫌が悪くことも無くなったのだった。
この日の放課後から、ルーカスとリヴァイはダンスの練習をするようになった。
初めに何度か、ルーカスが女性パートを踊り手本を見せる。それを真似するようにリヴァイがステップを踏んでいき、慣れてきたら、ルーカスがリードしながら2人で踊った。
「っ! 申し訳ございません……!」
リヴァイがステップを間違え、よろけてしまいルーカスの足を踏みそうになったが、さすがの身体能力でルーカスの足を避けるように足を付いた。
「平気。それよりも、顔を上げなさい。足を踏ままいと下を向いていると、却って動きがぎこちなくなる。前を向くか、そうだね、君の大好きな僕の顔を見ていなさい」
そう言って悪戯に笑うルーカスにリヴァイは視線を逸らした。
「ふふ、君が寝ている僕の顔をじっと見つめている事はとっくに知っているよ」
その言葉に、リヴァイは耳を酷く真っ赤に染め上げる。
「貴方の御顔が好きなのではなく、あなたの全てを愛おしく思っているのです……」
「へ~、では、君が僕の中で1番好ましく思っているところはどこだい?」
「ご自身の強い信念を持ち、お優しいだけでなく、厳しく我々を導いて下さる所です」
リヴァイがそうやって真剣に答えると、ルーカスは少しこそばゆく感じる。それを誤魔化すように、またリヴァイの事を揶揄った。
「そうなんだ。けれど、僕は君の全ての要素が1番好きだけどね」
「っ、ならば私も貴方の全てが愛おしいです」
照れて少し拗ねたようにそう言うリヴァイを優しい眼差しで見つめながら、ルーカスはにっこりと微笑んだ。
およそ3週間が経った頃、あれからダンスの練習と、ルーカスの開発を続けていた。先週の2の月1の日にはレイアの誕生日をリヴァイの屋敷でお祝いした。
そしてルーカス達はオリエンテーションの前日にもダンスの練習をしていた。
「流石はリヴ、ひと月も経たない内に覚えてしまうなんて」
「貴方の教え方が上手だからです」
「君が練習に付き合ってくれたおかげで、男性パートも完璧になったよ」
「……初めから、30cmも身長差のある私を、いとも容易くリードされておられましたでしょう」
「ふふふ、そうだったかな?」
はぐらかす様に言うルーカスに苦笑いをしながらも、ダンスの練習を終えると2人は寝る準備をして眠りについたのだった。
翌朝、ルーカスは何時もより少し早くに目が覚めた。すると丁度リヴァイが鍛錬から戻ってきた頃らしい。
「おはよぉ、鍛錬にいってたのかぃ?」
「はい。殿下も湯浴みをなさいますか? よろしければお先にどうぞ」
「ん~ん、後で入る。リヴが先でいいよぉ」
「ありがとうございます。では先に入ってきます」
(半分眠っておられるな)
寝ぼけた様子で会話をするルーカスに、リヴァイは少し微笑ましく思いながら湯浴みに行った。
リヴァイが湯浴みから上がり、ルーカスも湯浴みを終えると、浴室から戻ってきた。少し目が覚めたようだ。
「うぅ、目がしょぼしょぼする。リヴ、髪して」
そう言いながらルーカスはリヴァイの前にちょこんと座った。
そんなルーカスの濡れたままの髪を、リヴァイは慣れた手つきでブラシで梳き風の魔法を使って乾かしていく。
「このまま結いますか?」
「お願い。左右で三つ編みを1本ずつ作って全て纏めて結って。前髪もいれてね」
「……全て、ですか?」
「うん。…………どうしたんだい?」
ルーカスの要望を聞くと、リヴァイは少しの間押し黙ってしまった。
「結い上げるのは半分だけではいけませんか?」
「だめ。今日はどうしてもかっこよくして欲しいから。下ろしていたらまた可愛いと言われてしまう」
ルーカスは少し拗ねて言う。
「……貴方は可愛いよりも、美しい方ですから、結うのが半分だけでもかっこいいと思います」
「何故全て結うのがだめなんだい?」
その問いかけに、リヴァイはまたもや黙り込んだ。
「リヴ?」
「……貴方のその美しい項を、他の者に見せたくありません」
「え……」
リヴァイは嫉妬の籠った声でそう言うと、ルーカスが何か反応をする前に、彼のその白くて美しい項に唇をくっ付けた。
唇が離れるとそこには赤い鬱血痕が付いている。そしてリヴァイは立て続けに項に強く噛み付く。
「っ……! リヴ!?」
ルーカスは酷く狼狽えリヴァイの方へ振り向くと、リヴァイは耳元で囁いた。
「髪で隠さなければ、皆に見られてしまいます」
首元に巻き付けられたリヴァイから貰った黒色のリボンよりも、鬱血痕と噛み跡は更に上にあり、服で隠す事は叶わないだろう。
ルーカスは観念し、結局結い上げるのは半分だけとなった。
「リヴ、ここに座って」
ルーカスの髪が結い終わり立ち上がると、今度はリヴァイにそこへ座るように促した。するとリヴァイは先程の事を反省した様子で、ルーカスの指示に従順に従う。
「君の髪は僕がする。僕の好きなようにさせて貰うよ」
「それは……」
「良いね?」
「…………はい」
ルーカスは既に乾いているリヴァイの髪をもう一度濡らす為に水の魔法を使う。リヴァイの上げられていた漆黒の髪は、軽く濡れることで目の少し上の位置まで降ろされた。
びちゃびちゃに濡れると目の下辺りまでの長さがあるが、軽くパーマがかかったような癖のある毛質のため今は少し短く見える。
ルーカスはその長さのまま固定されるように、風の魔法を使って髪を乾かした。そして最後に整髪剤を付けて整える。
「ふふ、前髪があると少し幼く見えるね? 可愛いよ。眼光は鋭いけれど」
「……殿下」
「君と出会った頃から、既に分け目で上げられていたし、最近は全て上げているでしょう? 君の屋敷にある幼い頃の肖像画を見て、前髪のある君を見てみたかったんだ。今日はずっとこれで居てね?」
そうやって悪戯に笑い揶揄いながらも、愛おしそうに見つめるルーカスに、リヴァイは諦めて正装に着替え始めたのだった。
ルーカスとリヴァイの支度が終わり、アレイルとキャサリンを待っていると、部屋の扉が叩かれる。
「アレイルとキャシーです」
「入って」
ルーカスが許可を出すと、2人は扉を開けて入ってくる。そして朝の挨拶をしようと口を開いたが、リヴァイの姿を見て固まった。
「おはよう、2人とも」
「あ、おはようございますルーカス殿下」
「おはようございます。あの、リヴのその髪型は?」
キャサリンが不思議そうにそう尋ねると、ルーカスは意気揚々と答えた。
「可愛いでしょう? 僕がしたんだ」
「そうですね。リヴ、とても似合っているぞ」
「てっきりリヴが可愛くなりたくて自分で整えたのかと思ったわ。ルーカス殿下は本当に器用ですね」
2人のその反応に、リヴァイは鋭い眼光を2人に向けたが、アレイルもキャサリンも楽しそうにリヴァイを揶揄い笑っていた。
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