転生皇子の新生活 高等部編

𝐍 𝐢 𝐚🐾

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中等部4年編

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 1の月16の日。始業式も終え、学園は授業が開始した。そして放課後、生徒会の時間となりルーカス達が生徒会室で仕事をしていると、生徒会の担当教員であるイライアス先生がやって来た。


「集まってるなー? 今年の希望者連れてきたぞー」


 イライアス先生は後ろに4人の生徒を連れてそう言った。


「もしかして4人全員が入ってくれるのかな?」


「人手不足ですので、助かります」


 ウィリアムとノーマンが少し嬉しそうに言うと、イライアス先生は頷く。しかしすぐに困った表情になりルーカスの方へと視線を向けた。


 まさかまた許可を取らずに連れて来たのかい?


 その視線にルーカスが疑わしそうにイライアス先生を見ると、イライアス先生は口を開いた。


「許可はちゃんと取ったぞ? だが、1人厄介な奴がいてな……」


「ちょっと酷いじゃないですか、厄介者呼ばわりなんて~」


「まだ名前は出してないだろー?」


 イライアス先生の言葉に、後ろにいた生徒の内の一人が、顔を出してイライアス先生に文句を言う。するとイライアス先生も呆れたようにそう返した。


「どの様に厄介なんですか?」


「あー、こいつはなんて言うか、チャラいんだよ」


 その言葉に皆が少し首を傾げると、グレースが言う。


「それならば、うちの兄も大概でしたでしょう?」


「まあそれはそうなんだが……」


「チャラいだなんて不名誉ですよ~。俺はただ、自分の気持ちに素直な人間なんです」


 そんな風に茶化しながら、その生徒は何故かルーカスの目の前に来てにっこりと笑った。


「という事で、結婚を前提にお付き合いして下さい!」


「「「!?」」」


「……」


 その男子生徒の発言に、この場にいるルーカス以外の全員が目を見開き驚いた。そしてリヴァイはいつにも増して鋭い瞳で彼を睨みつける。


「そんな怖い顔しないでくださいよ、ノア様」


「……君、名前は?」


「ギャビンです! ハーレー子爵家の三男やってま~す! アルシアン様とお呼びしてもよろし、むぐっ!?」


 ルーカスの質問に、ギャビンは元気よく答え、余計な一言を付け加えた。その発言にルーカスは目を細めたが、彼が言い終わる前に、もう1人の生徒会希望の男子生徒が口を塞いだ。


「お前、いつにも増して死に急ぎがすぎるぞ! 皆様、申し訳ございません」


 男子生徒は深く頭を下げ、皆に向けて謝罪した。


「君の名前は?」


「申し遅れました、ヒューゴ・ダズ・コックスと申します」


 反対派のコックス男爵家の次男か。


「ギャビンと言ったかい?」


「はい!」


「寝言は寝て言いなさい」


「ふふっ」


 ギャビンのにっこり笑顔が、ルーカスの一言でほんの少し引きつった。そしてセドリックが思わず吹いてしまう。


「ダズ、こんな礼儀知らずと共に居れば、君の命も脅かされる。付き合う相手は慎重に選んだ方が良い」


 ルーカスのきつい言葉に皆は驚いたが、何か考えがあるのだろうと思い、ルーカスを静かに見つめた。するとヒューゴが口を開く。


「……確かに彼は、調子に乗りやすい節があります。しかし、全くの礼儀知らずという訳ではございません。それに、ギャビンは相手の様子にいち早く気付き、気遣う事が凄く得意で、俺はそんな彼を尊敬しているのです」


 ヒューゴが揺るぎない真っ直ぐな瞳でルーカスに伝えた。すると彼らの後ろで会話を見ていた生徒会希望の女子生徒2人が、ヒューゴの元へ来て言う。


「ちょっとヒューゴ、あんたまで口答えしてどうするのよ!」


「ギャビン、貴方もですよ。婚約者のいる方に、それも名乗る前にアプローチをする方は、立派な礼儀知らずです。そして何より、皇子殿下の2つ目の仮名を口にするなど以ての外です。今すぐ謝罪をして下さい」


 2人の叱責を聞き、ヒューゴはハッとした様子でルーカスに向けて頭を下げた。


「も、申し訳ございません! 生意気を申しました……」


「ギャビン?」


「……申し訳ございません」


 おや、彼女達とも仲が良いみたいだね。4人とも仲が良いのならば、トラブルも少なそうだ。


「君達の名を教えてくれるかい?」


「ケイリー・サラ・ペレスと申します」


「フィオナ・キキ・ペレスです」


「彼らが無礼を働いてしまい、誠に申し訳ございません」


 ケイリーは綺麗な所作で深く頭を下げ、丁寧に謝罪をする。その洗練された所作に、皆は感心したように彼女に目をやった。


「確かペレス男爵の孫だったかな。綺麗な所作をしているね。ルークと並んでも悪目立ちする事はまず無いだろうね」


「お褒め頂き、大変光栄でございます。まだまだ未熟者ですので、日々精進致します」


 落ち着きもあって謙遜も出来るか。それに分家の方の彼女の所作も中々のものだった。ペレスは淑女教育に長けているらしい。


「ウィル兄さん、良い人材が見つかったね」


「ああ、そうだね。早速役割を決めて行こうか」


 ルーカスの言葉に、ウィリアムはすぐ様意図を汲んでそう言った。すると少し呆気に取られた様子の1年生4人の代わりに、イライアス先生がルーカス達に尋ねた。


「4人とも認めたってことで良いのか?」


「ん? 僕は構わないよ。きちんと考えた上での信念は、大歓迎だよ。頭の良い人間は嫌いでは無いからね」


 そう言って上機嫌に口角を上げるルーカスに、ぞくりと悪寒がした。


「それに、ギャビンの事は1年生に任せれば問題なさそうだからね」


「ルークが認めたのならば問題はないだろうね。ただ、一つだけ忠告をしておく。ルークに変な事したら、学園内だろうが何だろうが、関係ないから覚悟しておくように」


 ギャビンに向けて殺気を出しながら、にこりと笑顔を浮かべているウィリアムにもまた、皆は背筋が伸びる思いがしたのだった。


「じゃあ、役割を決めよう。書記は例年通りルークで、コリーと、サラも書記にしようか。あ、ペレスが2人いるから、仮名で呼ばせてもらうよ?」


「「承知致しました」」


「ルーク、育ててくれるかい?」


「構わないけれど、書記に3人も割り当てて平気かい?」


「だけど来年までには育てておかなければならないからね。ルークに負担を掛けてしまうけど、総務長も任されて欲しい。育てばルークは総務長に専念してくれて構わないから」


「そうだね、任された」


 来年にはウィリアムの代も卒業し、以降の代からはルーカスの代まで生徒会役員が一人もいない。

 今まで1人で書記を担っていたルーカスだが、来年からは3年間、ルーカスの代が会長、副会長の役割を担う事になるのだ。
 その為今年の内に、書記を出来る者を引き継いでおかなければならないのだった。


 その後、議長、議長補佐、広報などの担当を決め、計13名の役員全員に役割が与えられた。そして見回りの班も決め終える。


「それじゃあ、1年生は今日は帰ってまた明日の放課後から来てくれるかな」


「分かりました」


「あ、ギャビン、君は少し残ってくれるかい? 話があるから」


 ウィリアムの言葉に1年生が返答すると、ルーカスがギャビンを引き止めた。





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