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中等部4年編
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しおりを挟む「話って何ですか~?」
「君、ダズの事が好きなのかい?」
「「「っ!?」」」
ルーカスの突然の一言に、この場にいる誰もが驚き目を見開く。するとギャビンは狼狽えた様子で否定した。
「な、何を突然……。やだな、そんなわけないじゃないですか~、ははは」
(((分かりやすっ!!!)))
「ふふふ、確かに君は素直なだけな様だね」
ルーカスが可笑しそうに笑うと、ギャビンは恥ずかしそうにしながら目を泳がせた。
そしてルーカスは、ひとしきり笑い終えると表情から一切の笑みを消し去り完全な無表情になる。その無感情な表情に、空気は一瞬にして冷たいものへと変わる。
「けれど、軽率な言動は控えなさい。もしも君の気持ちに気付いていなければ、僕は勝手にアルシアンの名を呼んだ君に、殺気を向けるか、剣を突き立てるか、若しくは氷で串刺しにしていたかもしれない。それを庇い立てたダズも同様にね」
細められてハイライトの無くなったルーカスの瞳に、ギャビンは冷や汗をかき顔色を悪くする。その表情には、先程までの余裕そうな笑みは一切なかった。
「彼を巻き込みたくないのであれば、アプローチの仕方を考え直しなさい。わざと嫉妬をさせなくとも、彼は君に好印象を持っているし、僕に口答えしてまで庇い立てる程には君の事を好いている。寧ろ君の行動は逆効果だ」
「うっせぇ……」
ギャビンは自分の行動の意味が、全てルーカスに筒抜けである事を知り、酷く顔を赤らめながら悪態をついた。それにリヴァイの眉がぴくりと動く。
ふふ、これが彼の素かな?
しかしルーカスは物凄く楽しそうな笑みを浮かべると、ギャビンのことを揶揄い始めた。
「そうだね、今すぐにでも気持ちを伝えてみると良い。ダズは君の気持ちを揶揄ったりはぐらかしたりするような、不誠実な子ではないだろうからね。…………ふふ、ダズの何を知っているんだ、とでも言いたそうな顔だね?」
「っ、((ボソッ…んで分かんだよっ……!?」
ルーカスに心の内を読まれた事に、ギャビンは酷く困惑する。それをルーカスは更に悪戯に口角を上げて言う。
「君は素直なだけだもんねえ? ダズにも簡単に想い告げられるはずだ。名を呼んだ罰は、ここにいる者たち全員への、都度の報告にしようか」
「あんた性格悪すぎだろ……。テオ殿下へのプロポーズは取り消しますし、罰も受けるんでそろそろ勘弁して下さい。殿下の2つ目の仮名を口にした事は、誠に申し訳ございませんでした」
ルーカスにそう言った後、頭を下げると、ギャビンは体の力が抜けどっと疲れた様子になった。するとルーカスは楽しそうな笑みを止めていつもの無表情に戻る。
「それは良かった。そろそろリヴが君に斬りかかりそうだったからね」
「殿下が気になさらないのであれば、貴方への無礼を私が咎める気は御座いません。……私は貴方の側近ですから」
おや、少しやり過ぎてしまったかな。
リヴァイはどこか拗ねたような様子でルーカスにそう伝えた。
「そうかい? ギャビン、約束は守ってね。君の想いが届く様に願っている。もう寮に戻って構わないよ」
「、、はぁ、分かりました。約束は守りますよ~」
ルーカスが無表情でそう言うと、ギャビンは少し驚いた様子になる。そして、あれだけ揶揄われたと言うのに、何故か無表情のルーカスからの応援には、嬉しく思ってしまったのだった。
ギャビンが寮へ戻っていくと、ルーカスはリヴァイと向き合った。
「拗ねてしまったのかい?」
「……殿下が楽しそうで何よりですが、フォルを実名で呼ぶのは、私の嫉妬心を掻き立てるためでしょうか? 貴方ならば、あの者の仮名をご存知でしょう……。貴方もフォルも、相手に嫉妬をさせて、我々が暴走でもしたらどうなさるおつもりですか……?」
リヴァイが悲しそうに眉を寄せながらそう言うと、他の皆は酷く困惑した様子になった。
「暴走したらって、まさか、ダズが嫉妬していたのかい?」
「恐らく。私と同じ様な瞳をしておりましたので……」
そのリヴァイの返答を聞き、皆は益々困惑が顕になる。
「だからルーク殿下は彼に想いを伝えるよう促されたのですか?」
ノーマンの問いかけに、ルーカスは曖昧に眉をあげた。それを見てソフィアが意外そうに言う。
「ルーが他人の恋路に興味を示すなんて珍しいわね」
「ふふ、だって彼の反応が可愛くて、揶揄うと楽しいでしょう?」
そう言いながらルーカスは、良い玩具を見つけたと言わんばかりの笑みを浮かべた。
「それに、ここにも可愛い反応を見せてくれる、虐めたくなる子がいるからね」
「殿下……」
「ふふふ、ほら、仕事を終わらせて早く帰ろうか」
「んじゃ、教員室戻るから、お前ら見回りと戸締り頼んだぞー」
ルーカス達が仕事を再開すると、今まで見守っていたイライアス先生も教員室へと戻って行ったのだった。
生徒会の仕事を終え部屋に戻り、荷物を置くとルーカス達は食堂へと夕食を食べに向かった。
食堂に着くと、ルーカスはクラスメイトのフランク、マルセル、ギャレットがいることに気付き、彼らの元へ向かった。
「フランク! この時間に食堂へ来るのは珍しいね。一緒に食べても良いかい?」
「お、ルーカス! 勿論良いぞ!」
「さっきまで魔法の自主練してたんだ。……っ!!」
マルセルはルーカスの問いにそう答えていると、突然驚いた様な顔をする。
「((コソッ…おい、テオ。お前またノア様になんかしただろ!? 俺らすげぇ睨まれてんだよ」
「1年生にプロポーズされたから、その子を揶揄っていたら、リヴを拗ねさせてしまったんだよ」
「普通ならば想像し難い状況ですが、テオ様の事ならば何となく想像出来てしまいますね」
ルーカスが要点を端折りながら簡単に説明すると、マルセルは顔を引き攣り、代わりにギャレットが苦笑いをしながらそう言った。
「まぁまぁ、先に飯食おうぜ! 腹減ったからよ」
呑気なフランクの言葉に、皆は食事を取りに行き、席に着くと軽い談笑を交ぜながら食べ始めたのだった。
ルーカス達が食事を終え少しの間会話を楽しんでいると、彼らの元へ、これでもかと言う程緊張をしている男子生徒がやって来た。
「あ、あの、、お話中にすみません……!! えと、中等部1年Sクラスのコロン・モル・カーラーと申します。だ、第3皇子殿下に、お話が、あります!」
「緊張し過ぎだろ。大丈夫か?」
緊張でたじたじのコロンに、マルセルが苦笑いしながらも、心配そうにそう言った。
「あ、ありがとうございます! だだっ、大丈夫です!!」
「……話とはなんだい?」
演技には見えないけれど、注意するに越したことはないだろう。
ルーカスは今までの経験から、自分に話しかけに来る者達へは酷く警戒をしていた。その為コロンに対しても警戒をしながら尋ねる。
「あ、え、その……あ、握手して下さい!!」
「……え?」
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