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【 旅と温泉グルメ しゃぶれどもしゃぶれども(中部編) 】
20: 長野 木曽郡南木曽 中山道ジャズカルテット+1(2)
しおりを挟む アンは背の高い男性が、黒いセーターなどを着て腕まくりしている姿が好きだ。
そうそう、巷に出回っているスティーブ・ジョブズの写真のあのイメージ。
さらにその腕の先に大きくて長い繊細な指がついているともっと最高である。
昨夜のジャズライブ・ミニコンサートに登場した、多分にくたびれたジャズメン達の中で一人、才気走った若いベーシストの男性が、正にそれだった。
アンが、この無名のジャズカルテットの演奏から逃れられなかったのは、多分に彼の指先のせいだ。
(それに演奏中に一瞬だけ見せた、彼の上向き加減の恍惚の表情もなかなか素敵だったし。)
黒眼鏡をかけたトーク担当のドラムスのお喋りは「仲間内の内輪話を理解するのが通の客なんだよ」って強要しているようで、好きになれなかったし、ジョークだって「照れ隠し濃度80%」だから、面白いわけがない。
ほんと、一見の観客に馴れ合いを強制するエンターテインメントにろくなものはない。
そこへ行くと、ホテル側の人間のトークは、その殆どがホテルの宣伝なのに、聞いていて安心させられる。
やはりサービスの本質を理解している人間の喋りは、何処かしらが違うようだ。
そのホテルマンが、「ベースという楽器は女性を抱くことに、なぞられますが」などといいうベタな紹介をしながら、ボーカルの女性を紹介した。
彼女は、チャイナドレスぽいステージ衣装を着た腕の長いおかっぱ頭の若い女性で、、と同時にママであり、、嫌な予感、、、彼女の赤ちゃんをステージ脇につれてきていた、、。
そして実は彼女、ベーシストの奥さんなのだ(嫌な予感ほど良く当たる)。
さっきまで、弦を叩くそのベーシストの指先に見とれていたので、いわれのない嫉妬を彼女に感じて、アンは思わず恥じ入ってしまった。
彼女の歌が始まった。
彼女には声量がなかった。
でも歌っているときの彼女の表情は実に豊かだ。
ベーシストの夫に抱かれる時も、こんな表情を見せるんだろうなと思うと妙に悶々とした気分になった。
ライブが終わった後、ホテル内で赤ちゃんを連れたこの若夫婦によく出逢った。
彼女達って、本当に仲が良さそうだった。
そんな時の彼は、ミュージシャンとしての輝きが薄れ、只のパパでしかない。
そして翌日。
チェックアウトの間際に、再び彼女らと出逢った。
アンの中では、どこかで彼らに「ドサ周りの貧しさ」を要求していたように思うが、出発にあたって彼女達がトヨタ・ハリアーに乗り込むのを見て、二回目のショックを受けた。
若いジャズミュージシャンって、リッチであるはずがないと思ってたんだけどなぁ、、。
・・・まあいいや。お二人さん、お幸せにね。
ディブ・ブルーベックの「星に願いを」。
これってディズニーアニメの「ピノキオ」で使われた曲なんだ。
しかもあのコオロギさんが、ピノキオに語りかけるシーンで使われた曲だったんだね。
この話、昨夜の黒眼鏡のドラムスさんが演奏曲にまつわる蘊蓄を披露して判ったんだけど、、吃驚した。
曲も映画も両方ともとても良く知っているのに、、。
「ピノキオ」を見たのは子どもの頃ビデオで、ディブ・ブルーベックは大人になってからだから、きっとそれぞれの印象が強すぎて、別々に憶えているんだ、、。
この感覚は、ホテルの前庭にあった小池で飼育されている「メダカ」考によく似ていた。
小池にあった説明プレートをふと見ると「絶滅危惧2種類」とあり、「えっ、メダカって絶滅種に近いんだ、、。」と考え込んでしまったのだ。
何処そこの川に魚が帰ってきたとか、生活排水を市民努力で、、そんな話が結構、聞かれるようになった昨今、、、あのメダカが、絶滅危惧2種類、と軽いショックを受けたわけである。
ホームセンターにだって「メダカ」が販売されている(笑)。
これも「思いこみ」のなせる技。
でもこのメダカ、ホテルの方の説明を聞くと、早朝やってくる鶺鴒にパックリ食べられるそうである。
アンがどんなに錯綜した思いで、世界を見つめていようと、世界は世界のルールで動いていくんだよね。
世界の何処かでは、今日も戦いがあり餓死がある、、、。
けれど今日の日本の空は抜けるほど青い。
そしてアンの一泊二日の旅の幕引きは、雪を抱いた駒ヶ岳だった。
そうそう、巷に出回っているスティーブ・ジョブズの写真のあのイメージ。
さらにその腕の先に大きくて長い繊細な指がついているともっと最高である。
昨夜のジャズライブ・ミニコンサートに登場した、多分にくたびれたジャズメン達の中で一人、才気走った若いベーシストの男性が、正にそれだった。
アンが、この無名のジャズカルテットの演奏から逃れられなかったのは、多分に彼の指先のせいだ。
(それに演奏中に一瞬だけ見せた、彼の上向き加減の恍惚の表情もなかなか素敵だったし。)
黒眼鏡をかけたトーク担当のドラムスのお喋りは「仲間内の内輪話を理解するのが通の客なんだよ」って強要しているようで、好きになれなかったし、ジョークだって「照れ隠し濃度80%」だから、面白いわけがない。
ほんと、一見の観客に馴れ合いを強制するエンターテインメントにろくなものはない。
そこへ行くと、ホテル側の人間のトークは、その殆どがホテルの宣伝なのに、聞いていて安心させられる。
やはりサービスの本質を理解している人間の喋りは、何処かしらが違うようだ。
そのホテルマンが、「ベースという楽器は女性を抱くことに、なぞられますが」などといいうベタな紹介をしながら、ボーカルの女性を紹介した。
彼女は、チャイナドレスぽいステージ衣装を着た腕の長いおかっぱ頭の若い女性で、、と同時にママであり、、嫌な予感、、、彼女の赤ちゃんをステージ脇につれてきていた、、。
そして実は彼女、ベーシストの奥さんなのだ(嫌な予感ほど良く当たる)。
さっきまで、弦を叩くそのベーシストの指先に見とれていたので、いわれのない嫉妬を彼女に感じて、アンは思わず恥じ入ってしまった。
彼女の歌が始まった。
彼女には声量がなかった。
でも歌っているときの彼女の表情は実に豊かだ。
ベーシストの夫に抱かれる時も、こんな表情を見せるんだろうなと思うと妙に悶々とした気分になった。
ライブが終わった後、ホテル内で赤ちゃんを連れたこの若夫婦によく出逢った。
彼女達って、本当に仲が良さそうだった。
そんな時の彼は、ミュージシャンとしての輝きが薄れ、只のパパでしかない。
そして翌日。
チェックアウトの間際に、再び彼女らと出逢った。
アンの中では、どこかで彼らに「ドサ周りの貧しさ」を要求していたように思うが、出発にあたって彼女達がトヨタ・ハリアーに乗り込むのを見て、二回目のショックを受けた。
若いジャズミュージシャンって、リッチであるはずがないと思ってたんだけどなぁ、、。
・・・まあいいや。お二人さん、お幸せにね。
ディブ・ブルーベックの「星に願いを」。
これってディズニーアニメの「ピノキオ」で使われた曲なんだ。
しかもあのコオロギさんが、ピノキオに語りかけるシーンで使われた曲だったんだね。
この話、昨夜の黒眼鏡のドラムスさんが演奏曲にまつわる蘊蓄を披露して判ったんだけど、、吃驚した。
曲も映画も両方ともとても良く知っているのに、、。
「ピノキオ」を見たのは子どもの頃ビデオで、ディブ・ブルーベックは大人になってからだから、きっとそれぞれの印象が強すぎて、別々に憶えているんだ、、。
この感覚は、ホテルの前庭にあった小池で飼育されている「メダカ」考によく似ていた。
小池にあった説明プレートをふと見ると「絶滅危惧2種類」とあり、「えっ、メダカって絶滅種に近いんだ、、。」と考え込んでしまったのだ。
何処そこの川に魚が帰ってきたとか、生活排水を市民努力で、、そんな話が結構、聞かれるようになった昨今、、、あのメダカが、絶滅危惧2種類、と軽いショックを受けたわけである。
ホームセンターにだって「メダカ」が販売されている(笑)。
これも「思いこみ」のなせる技。
でもこのメダカ、ホテルの方の説明を聞くと、早朝やってくる鶺鴒にパックリ食べられるそうである。
アンがどんなに錯綜した思いで、世界を見つめていようと、世界は世界のルールで動いていくんだよね。
世界の何処かでは、今日も戦いがあり餓死がある、、、。
けれど今日の日本の空は抜けるほど青い。
そしてアンの一泊二日の旅の幕引きは、雪を抱いた駒ヶ岳だった。
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