ゴックン、その口で食べるの? /Osaka発ドラァグドライブ、掛け違いの旅

Ann Noraaile

文字の大きさ
上 下
65 / 177
【 旅と温泉グルメ しゃぶれどもしゃぶれども(中部編) 】

21: 長野 木曽路 JR中央西線沿いを走る その1

しおりを挟む
 ある雨の日、白髪をたたえた酔漢が、自分の居る谷底から、山頂にある寺へと続く石の階段を、ふらふらと登っていた。
 頂上の寺には、過去から現在に流されてしまった聖人を祭った祠があると言われている。

 崖に切り込まれるような石段からは、周囲の厳山が見えるのだが、それらの山の中腹から上は、白くけぶる霧に巻かれて墨色に滲んでいる。
 酔漢は、己の酔いを楽しむかのように、厳しい石段をゆっくり上がるのだが、その愉悦も我が身一人ならではの事と、そう自らの気持ちを吟味する程度の意識はまだあるようである。
 もっとも人一人が、やっとの道幅の石段だ。
 こんな場所では、だれもこんな酔っぱらいと一緒に山を登りたいとは思うまい。

 酔漢はふっと思う。
 かの聖人は、時を飛び越えたといわれるが、それは本来、彼が人々と分かち合えていた筈の「共有体験」という記憶を、彼が所有していないという事でもある。
 それはこの男のような悔いの多い人生にあっては、いっそ清々しい事のようにも思えるが、やはり本当は寂しいものなのだろうか?
 酔漢自身の決して凡庸ではなかった「生」に照らし合わせると、その答えは、より深い霧の中に逃げていくようであった。

 酔漢は、己の身体から酒の精が抜けていくのを感じながら、自分がせり上がってきた谷底を眺めた。
 深い緑青色の水が圧倒的な量感をたたえて、山を押し分けるように流れている。
 此処の谷底に、奇岩が多いのはそのせいだ。
 件の聖人は、この奇岩の上で、夢の夢から醒め、本当の意味でこの現実世界に覚醒したのだという。
 その時この聖人は、かって「只の人」として生きていた時代から、何百年の時を超えたのだった。
 その寝覚めやいかに、、。

 上の駄文は、長野県木曽郡上松町にある奇勝「寝覚めの床」に赴いた時に浮かんだ断章です。
 アンは、この時、すでに飲酒の状態で、運転を相方に代わって貰っているドライブの途中でした。
 つまりそういう、ほろ酔い気分で「寝覚めの床」に降りて行ってたんです。

 ちなみに、木曽は、あの浦島太郎が竜宮城から帰還して彷徨い込んだ土地なんですって。
 で、太郎君が竜宮から帰還した海岸は、京都の天橋立という(これはパンフレットの受け売り)んですが、、、。
 その太郎君が、なぜ木曽くんだりまでやってきたのか、、。
 アンには余程、その道行き(あるいはそのフィクションの荒唐無稽な力技)の方が、余程ミステリーなのでした。

 しかし自然の奇観と言うものは、これほどに、人の想像力を刺激するんですねー。
 そうそう、この奇観、JR中央線の車窓から見下ろす事が出来る筈です。




しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ふと思ったこと

マー坊
エッセイ・ノンフィクション
たまにはのんびり考えるのも癒しになりますね。 頭を使うけど頭を休める運動です(笑) 「そうかもしれないね」という納得感。 「どうなんだろうね?」という疑問符。 日記の中からつまみ食いをしてみました(笑) 「世界平和とお金のない世界」 https://plaza.rakuten.co.jp/chienowa/  

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...