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【 はじめに、自己紹介をかねて 】
04: 3月桜旅 野良猫は牡丹の花を食べるか?
しおりを挟むまだ咲かぬ 別れの花に 降る雨に
断ち切れぬ恋 かさねて旅 (アン)
「勸酒」というタイトルの漢詩を、「花に嵐のたとえもあるぞ、さよならだけが人生だ」と名コピーに変換したのが井伏鱒二。
元の「勸酒」の内容は、「別れはつらいがしかたがないよ、まあ飲もうよ。」という感じでしょうか。
その他、人の意のままにならない離別と出会いの喩えに、「月にむら雲、花に嵐、思うに別れ、思わぬに添う」みたいな古歌もありますね。
女が去っていく男にすがって、顔面崩壊の鼻水グジュグジュでヒステリックに泣き叫ぶ(逆もあり)、、。
別れや満たされない心の断面というものは、感傷に浸っているご本人は別として、その心を直接に覗き込むなら、あまり優雅なものではないでしょう。
・・・けれどこうやって、自然に重ねれば途端にドラマチックになりますね。
なんとなく、それが「歌句」「詩」の本質のような気もしますが、、。
そんなこんなで、別れと出会いの時期、満開の桜の花に酔いたくて旅にでました。
山陽道を使って目指す四国は桜の名所が沢山ある場所なんですが、桜には少し時期が早いのでどうなる事やら、、、そして出発の朝は、とうとう雨まで降り出すしまつです。
夜港 海に浮かんだ 街の灯り
見つめる背中 恋の行方は (アン)
今回の旅行のテーマは「桜」です。
そして旅の携帯本は、ロザリーン・ヤング著の「はじめての告白」でした。
一泊目の旅館到着後、しばらくしてからこの本を読み始めました。
でも瀬戸内の港町近くの料理旅館で夜読む本としてはちょっとミスマッチ。
なぜってロザリーンって、フェテッシュビデオなんかのマゾなメイド役で登場する可愛い女の子なのです。
今はもう廃ってしまっているのか知れませんが、「ご主人様ぁ」のメイド喫茶の原型の原型ですね。
(※ この文章を書いている時点ではロリータと呼ばれていた彼女の容姿も過去形ですが。)
この本を読んでいると、彼女って風俗演技じゃなく、実際にマゾ性癖というか、特にお尻ペンペンのスパンキングに感じるヒトのようです。
なので本の内容も扇情本ではなく、本格的な自叙伝の筈なんですが、、、、うーんこの本、読み物としてはあまり良い星は上げられませんね。
だって和訳が異常に下手というか、上等な和訳ソフトで吐き出した英文を、少しだけ読みやすくした程度なんですから。
内容的には、ロザリーンっていう敬虔なカソリックの女の子が、いかにして自分の性癖に目覚めていったのか。
そして彼女が、その性癖によって、自分が世界から拒絶された人間だと思いこんでいた事が書かれています。
やがて彼女は、様々なフェテッシュシーンに出会い、自分が一人ではないことを知り、そこから「本当の自分の存在意味」を探求し始めます。
そういった物語が告白文の形態で書かれているものです。
もう少し、翻訳家さんの仕事がこなれていれば、アン的には自分の歴史と重なる部分もあって、興味深い本になる筈なんですけど、ちょっと残念です。
そうそう今夜のお泊まりでは、鰆を楽しみに海辺の宿にしたのですが、夜遅く到着したので夕食の時のオーダーが効かず、普通の会席料理ぽいメニューでした。
てな事で、春の魚、鰆はおあずけ、でも瀬戸内って事で、しゃこが美味しかったです。
しゃこって、形がちょっと不気味で抵抗がなくはないんですが、、。
そー言えば、映画のプレデターさんって、レゲェ叔父さんみたいに見える時もあるし、蟹坊主みたく思える時もあるし、「世界の黒沢」が撮る野武士みたいにもみえるなぁ・・・などと、しゃこをいただきながら考えていました。
明日の午前中は、尾道の千光寺の桜を見るつもりでいます。
その後、尾道からしまなみ海道を渡って、四国に入る予定。
でもお天気の方は、予報通り四国も雨になりそうで、ちょっと憂鬱、、、。
・・・・・・・・・
桜?
見事に咲いていませんね~。
つぼみは少しだけ緩くなって、枯れ木みたいな桜の木に心持ち紅をさす程度。
千光寺公園の尾道美術館では、フランスナィーブ派展なるものが展示されていました。
中でも、世界が真っ赤に染まるような夕焼けの密林の中で行われるたき火と恋人達の逢い引きの絵が素敵でしたよ。
熱帯の花が咲き乱れている中でのたき火っていうのは、ちょっと日本人の感性じゃないなと思いながらも、こんな瑠璃色に染まった密林で、恋人と逢い引きしたら、もう興奮しまくりだろうなと、、2分ほどその絵の前で魅入ってしまいました。
そうそう四国に渡る、しまなみ海道の外れの島(大島)では、七輪を使っての海鮮バーベキュー昼食、、サザエ・大アサリを嫌というほど食べて、ついでにお店の人に「アナゴが美味しいよ」と言われたので捌いて貰って、これもバーベキュー。
小骨さえ気にならないのなら絶品でした。
四国に渡ってからはソメイヨシノが数本ちらほらと鮮やかに自己主張してたので、期待を持っていたのですが、「桜三里」を走っても皆目だめ、、、。
何が今度の旅のテーマは「桜」なんだよう!!とふてながら琴弾温泉のホテルでしばし休憩です。
通読中のロザリーン・ヤングの告白本の中で、「判るわ、それ。」って思ったのが、「完全に彼のものになりたい。あまりの愛の深さに、体だけでなく私の意思をも彼に与えたいと願っているのだ。」という彼女の独白でした。
「愛」の定義にもよるけれど、この感覚はよく理解できます。
ただアンとロザリーンとの違いは、アンの場合これまでの男性経験の中では、「崇拝」とか「慈愛」とか言った全能性を感じさせるお相手は、一人もいなかったという事ですね。
別にダメ男が好きってわけでもないんですが、、。
だから「私の意思」まで与えたいと思うのは、具体的には「目の前の彼」ではなくて、肉体を持った彼の向こう側にいる、アルフレッド・ジャリの「超男性」みたいな、想念上の「彼」に対してなんです。
その他、「男からいやらしい目で見られる女・視線で強姦される女」への同性の嫉妬の話は、判るようなそうでないような。
つまり「見られて汚される事の快感」っていうのは、元から「女」の感情倉庫の中に、ちゃんと存在してることなのかしら?このあたりはアンには、、ワカラヘン。
なんて所まで本を読んで、後は温泉へ。
琴弾温泉の泉質(低アルカリ性ラドン泉)って、アンの肌と合うんですね。
夕食は、「白魚の白味噌仕立ての柳川鍋」が特に美味しかったです。
その他、椿の花を食べてる野良猫の話だとか、銭形平次のオープニングに登場するアノ、砂で出来た巨大な銭形の事とか、色々あるんだけれど、それは又、今度の機会に。
真夜中のアン?、、それは秘密。
それではお休みなさい。
・・・・・・・・・
夕暮れの琴弾浜公園で不思議な光景を見ました。
三匹の野良猫が頭をつきあわせて植え込みに落ちた何かを食べていたのです。
で、その「何か」の正体なんですけど、アンの最初の印象では、植え込みの地面一杯に落ちた牡丹の花のように思えたんです。
それを確認するために視線を送るのですが猫達が過敏に反応して、こちらを激しく威嚇するのでそれ以上確かめようがありません。
その「何か」って、現実的には観光客が捨てた食べ物の残骸か、ネズミの死骸という解釈が正しいのでしょうが、その時のアンには、肉厚で大振りな牡丹の花の方がそれらしく思えたのです。
まるで斬首の刑のように首からぼとりと地面に落ちる牡丹の花。
それを猫が喰らう図の方が、妖しくていいと今でも思ってます。
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