彼氏の家族がヤバいですわ!

ぬこまる

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「で、お兄ちゃんがあたしのストーカーを殴って倒してくれたわけ、すごくな~い? こーんな爽やかなイケメンなのに喧嘩最強なのよぉ」

 ゴスロリ少女は、ケイトの妹であった。
 ぷっくりした赤い唇で、ごくごくと酒瓶マッカランをラッパ飲み。高級ウィスキーがあっという間に空になる。

「っぷはー! でね、お兄ちゃんが高校生のときなんだけどぉ」
「おいレミ! もうやめろ」
「え~いいじゃない、彼女だってお兄ちゃんの恋バナ聞きたいでしょ?」
「え、ま、まぁ」
「恋バナ? 何それ? 母さんも聞きたいわ」
「父さんもだ」

 藤城家のディナー。
 蝋燭が灯ったテーブルには、食べ尽くされた皿が置かれ、みんなで酒を飲みながらデザート待ちだった。
 アリスはケイトの隣に座り、手を握り合っている。
 それを見たレミは、ムッとした顔をして話し出した。

「パパとママがバリ島に旅行中、お兄ちゃんったら同級生の女子を家に連れてきたの。もうあたしはびっくり」
「なにそれ? 母さん知らないわ」
「おいレミ! そのくらいにしておけ」

 ケイトは、ビシッと人差し指を立てる。
 しかしダイゴが、「いいから話して」と促す。
 ニヤッと笑うレミは続けた。

「女子の名前はマリンちゃん。おっぱいがデカいだけの頭からっぽギャルよ。でね、お兄ちゃんたら、マリンちゃ~ん、ダメだよ~ここはこうだよ~なんて言いながら勉強を教えてたんだけど、だんだんエスカレートしちゃって、ついに間違ったらお仕置きだべー! とか言い出しちゃってさ~で、マリンちゃんのお尻を、ぱんぱん! って叩いてんの、でもマリンちゃんはバカだから気持ちよくなっちゃってて、あたしはもう笑いを堪えるのに必死よ~ぱんぱんって! SMプレイかっつうのっ! きゃははは!」

 やれやれ、とダイゴは肩をすくめる。
 シズカは、天を仰いでいた。
 アリスは、口をあんぐり開けてびっくり。

「女の子を叩くのはいかんぞ、ケイト」
「母さん、あなたの育て方をどこで間違えたのかしら……」
「ケイト、嘘ですわよね?」

 ああ、でたらめだ、と焦るケイトは、テーブルに身を乗り出した。

「レミ! っていうか、部屋のぞくなよ!」
「うちって部屋が広いから、気づかないお兄ちゃんが悪い! シコってんのバレてんぞっ!」
「うわぁぁああ!!」
「それより、彼女にひとつ聞きたいんだけど?」

 レミは、挑戦的な視線でアリスを見る。
 何かしら、とアリスは受けた。

「お兄ちゃんのどこが好きなわけ? お金と顔、以外で答えて」
「優しいところですわ」
「即答ね……」
「はい、ドライブ中は私の好きな曲をかけてくれます」
「そんだけ? ウケる……」

 ガタッ、とレミは椅子から立ち上がる。
 ゆっくり歩き、ダイゴの肩に触れてから、アリスに近づいて匂いを嗅いだ。

「ふーん、シャンプーは何を使ってるの? ロクシタン? エトボス?」
「いいえ、スーパー銭湯のシャンリンですわ」
「シャンリン? 何それ?」
「シャンプー&リンスですわ。貧乏なので週一の銭湯で髪を洗いますの」
「へー、ウケる……じゃあ、これはあなたの体臭なのね……めちゃクソいい女の香りがするじゃない……くんか、くんか」

 ぞくっとするアリス。
 ニヤッと笑うレミは、アリスの髪に触れた。何ともレズビアンっぽい雰囲気が漂う。

「やめないか、レミ!」

 ダイゴから叱られた。
 レミは、さらにニヤッと笑うと両手をあげて、

「お兄ちゃんにお尻を叩かれないようにね……アリスちゃん♡」

 と告げ、部屋から出ていく。
 ごめんなさいね、とシズカはアリスを見つめる。

「あの子、ケイトをアリスさんに取られたみたいで嫉妬してるだけなの、少しずつ受け入れてくれると思うから、ちょっと時間をあげて」

 わかりましたわ、とアリスは微笑みで返す。
 びっくりした。ブラコンってやつだ。
 しかし無理もない。ケイトはかっこよくて優しい。私が彼を独り占めしたら、世界中の女性を敵にまわすことになるだろう。
 だけど、ケイトは私のことが好きなのだから、大丈夫。何も問題はない。
 と、アリスは思い、さらに強くケイトの手を握った。
 
 ギィィ

 扉が開かれ、家政婦が入ってきた。

「お待たせしました。アップルパイが焼きあがりました」

 結局、家政婦が作っとんのかーい!
 と、アリスは心でツッコんだ。
 デザートがテーブルに置かれると、ダイゴが切り分けていく。

「さあ、デザートを食べて今日はお開きにしよう」

 口の中に広がる甘酸っぱい味が、アリスの心を安らかなものに変えていた。

「おいし~い、ですわ」

 
 部屋に戻り、部屋着に着替える。
 ケイトは上半身裸のまま、愚痴を言っていた。男なのに乳首が桃色でエロい。

「クソ妹! あいついつもは無口なくせに、なんで暴露するかな~」

 黙ったままアリスは話を聞いている。
 手にはスマホを持っているが、相変わらず圏外のままだ。

「父さんもアリスへのハグが長すぎる、あのエロおやじ! おっぱい揉まれてないよな?」
「揉まれてませんわ」
「よかった……それと母さんもだ。家政婦に休めと言ったくせにデザートを作らせて、言ってることとやってることが、いつも違う!」
「そうですわね~」

 WiFiもない。
 どうなってんだ、この家は?
 訝しむアリスはスマホをいじりながら、じろっとケイトを見た。

「でも私はケイトの家族にガッカリしてないですわ」
「本当か?」
「むしろ人間味があってよろしくてよ」
「そう言ってくれるとありがたいんだが……ああ、明日の展覧会ではもっとクソみたいな連中が来るんだ」

 展覧会? とアリスは聞き返した。
 部屋に飾られた風景画を指さして、ケイトが答える。

「これを売るのさ。人気がある作品はオークションになることもある」
「すごいわね、あなたのお父様」
「ああ、変態だけどな」

 急にケイトがベッドの上に乗ってきた。
 アリスを太ももで跨ぎ、動けなくしている。
 
「うふふ、あなたも負けてないですわ……変態」
「そうかな? 試してみよう」
「いやん、お風呂に入ってからにしたいですわ」

 だな、とケイトはうなずいた。
 アリスは、上目使いで見つめている。

「行こう、露天風呂があるんだ」
「あらやだ、素敵すぎますわ~」

 あはは、うふふ……。
 と、笑いながらケイトは露天風呂へと案内する。
 脱衣所に着いた。
 アリスは服を脱がされた。恥ずかしいので、タオルを身体に巻こうとするが、おっぱいがデカすぎて上手くいかない。
 ケイトは全裸だ。ここは実家だし、当然だろう。
 それに本当に森と山しかない。
 大自然の中に塀が作られ、そこに岩風呂がある。
 ふと、見上げれば満点の星空、指輪のような三日月が笑っていた。
 開放的な気分になったアリスとケイトは、湯船に浸かってキスをする。
 はらり、とタオルが湯に浮かんでいた。
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