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エルクが王都に着いた夜、学院の地下に俺達は集まった。
学院長とリュートとルフ。
それから、エルクの体を動かしている俺だ。
あの空間に拘束力がなくなっている今、俺の意思でいつでもエルクの体を動かすことが出来る。
「リュート様はそのようなお姿だったのですね」
学院長はリュートの姿を初めて見るようだ。
リュートは自分への戒めも込めて人の姿に戻っていなかったようだが、エルクの姿で会いに行った時もあんな姿で相手に失礼だとは思わなかったのだろうか。
「ルーカスさんの願いを叶えることが出来ないまま、僕だけが願いを叶えてしまいました。主人に協力して約束は果たします」
あれから、リュートは俺のことを主人と呼ぶようになった。
これからの関係は実際に主従関係になる。
それを理解して、拒むつもりがないとの意思表示のつもりだろう。
「よろしくお願いします」
「すぐに発動出来るのか?」
「はい。儀式の準備は滞りなく終えています。後は祭壇に贄を捧げるだけです」
「これは魔法ではなく魔術なんだったか?俺が真似出来ないのもそれが原因だと言っていたな」
専門外だったこともあり準備は任せていた。
その為、詳しくは知らない。
しかし、これが大きな分岐点となるのは明らかだ。
発動前に確認はしなければならない。
「魔法は神が与えたとされる、いわばシステムと考えられています。その法則に則って魔力を操るから魔法です。対して魔術はそのシステムから逸脱した力のことです。システムの力を使わない為、発動は困難を極めますが、代わりにシステムに囚われず発動することが可能です。今回使うのは、その中でも呪術と呼ばれるものになります」
「なんで、そんなことをお前が使えるんだ?これもリュートから得たのか?」
「リュート様のお力ではありません。アリエラを生き返らせる手掛かりを見つける為に呼び出したサルデラという悪魔から聞いたのです。神に嫌われている悪魔には魔法を使う力は与えられていません。結果として、神に対抗すべく悪魔は魔術を生み出しました。先程魔術の発動は困難を極めると言いましたが、悪魔にとっては簡単なことです。日頃から使っていれば、どれだけ難解なものだろうと慣れるものですから」
なるほどな。ルフが悪魔だということを学院長に隠しているから仕方なかったが、それならルフに発動させた方がいいか……。
「お前はちゃんと発動出来るのか?」
「もう何度も自身に発動していますので、何も心配はいりません」
こいつも魔術の扱いに慣れたということか。
それならこのままこいつに任せたままでもいいな。
「それで、祭壇に贄を捧げたら何が起きるんだ?」
「体から魂が抜けます。体を失った魂は天へと吸い寄せられますが、強い意志で抗えば自由に動くことは可能です。エルク君の魂はその体に縛りつけておきますので、抜けるのはあなた様の魂だけです」
なるほどな。気を抜いているとそのまま天に召されるわけか。
「お前はどうやって器を用意していたんだ?」
「処刑されることが決まっている若者を攫ってです。私とその者の魂を同時に抜き、私が先に体に入り、万が一魂が体に戻ろうとしても拒絶します」
人道的ではないが、朽ちることが確定している体を拝借したということか。
「理解した。贄はあの時の龍の心臓でいいんだな?」
「必要以上です」
「これが心臓だ。後は任せた」
アイテムボックスから首のない白い龍の死体を取り出し、心臓を抜き取る。
「それでは儀式を始めます」
学院長が心臓を祭壇の上に置き、何やらよくわらない言葉を呟くと、目の前にエルクが現れて倒れた。
いや、俺がエルクから抜け出たことでそう見えただけだな。
これが肉体を持たない魂の状態か。
確かに天に召されないといけないような気がしてくる。
召される前に、俺は計画通りリュートの体へと入り込む。
「問題ないな。思った通り、この体は悪くない。俺の力にも耐えられそうだ。違和感はあるが、じきに慣れるだろう」
軽く体を動かして確認する。
「無事出られたようでなによりです。リュート様も問題ありませんか?」
『体の自由は効かなくなったけど、聞いていた通りだから問題ないよ』
俺とリュートの関係は、エルクと俺との関係ではなく、フレイとロザリーの関係に近い。
同じ体の中にいても俺とエルクは隔離されていた。
しかし、俺とリュートの魂は現在、同じところにある。
リュートも体を動かすことは可能だが、俺が主導権を握っているので、俺が体の制御を譲るか、リュートが俺から制御を奪わないと動かすことは出来ない。
元がリュートの体だというのは関係ない。
どちらが表で、どちらが裏なのかは魂の格で決まる。
膨大な力を得ている俺が、リュートの魂に押し負けることはありえない。
フレイとロザリーの関係と少しだけ違うのは、あっちはロザリーがフレイの体を奪う気がなく、主導権を譲っているという点だけだ。
鑑定した結果では、フレイよりもロザリーの方が格が上だからな。
「問題ないそうだ」
「これからどうされるのですか?」
「今までと大きく変わりはない。力を蓄える。ただ、さっきいい事を聞いたからな。魔術を習得するつもりだ。神が与えたシステムとやらに囚われたままではどれだけ力を蓄えたとしても無駄かもしれない。その事に気付かせたお前には感謝するとしよう。ルフが言っていれば話が早かったのだがな」
「も、申し訳ありません」
ビクっとしながらルフが頭を下げる。
「お前は十分役に立っている。気にするな。それに、やり方を見る限りだとエルクの中にいては魔術の発動は出来なかった可能性が高い。大きな影響はないだろう」
「お許しいただきありがとうございます」
「他にも悪魔だからこそ知っていることがあるかもしれない。何か思うことがあれば報告しろ」
「かしこまりました」
「頼りにしている。それから、2人会わないといけない者がいる。準備が終わり次第、俺は王都を離れる。何かあればルフに伝えろ。何かやってもらいたいことがあればルフを通して知らせる」
「かしこまりました」
「エレナは学院をこのまま辞めるだろう。エルクも付いていくことになれば、ロックの役目も終わりだ。手続きは任せた。エルクが残るようなら面倒を見てやってくれ」
「お任せください」
学院長とリュートとルフ。
それから、エルクの体を動かしている俺だ。
あの空間に拘束力がなくなっている今、俺の意思でいつでもエルクの体を動かすことが出来る。
「リュート様はそのようなお姿だったのですね」
学院長はリュートの姿を初めて見るようだ。
リュートは自分への戒めも込めて人の姿に戻っていなかったようだが、エルクの姿で会いに行った時もあんな姿で相手に失礼だとは思わなかったのだろうか。
「ルーカスさんの願いを叶えることが出来ないまま、僕だけが願いを叶えてしまいました。主人に協力して約束は果たします」
あれから、リュートは俺のことを主人と呼ぶようになった。
これからの関係は実際に主従関係になる。
それを理解して、拒むつもりがないとの意思表示のつもりだろう。
「よろしくお願いします」
「すぐに発動出来るのか?」
「はい。儀式の準備は滞りなく終えています。後は祭壇に贄を捧げるだけです」
「これは魔法ではなく魔術なんだったか?俺が真似出来ないのもそれが原因だと言っていたな」
専門外だったこともあり準備は任せていた。
その為、詳しくは知らない。
しかし、これが大きな分岐点となるのは明らかだ。
発動前に確認はしなければならない。
「魔法は神が与えたとされる、いわばシステムと考えられています。その法則に則って魔力を操るから魔法です。対して魔術はそのシステムから逸脱した力のことです。システムの力を使わない為、発動は困難を極めますが、代わりにシステムに囚われず発動することが可能です。今回使うのは、その中でも呪術と呼ばれるものになります」
「なんで、そんなことをお前が使えるんだ?これもリュートから得たのか?」
「リュート様のお力ではありません。アリエラを生き返らせる手掛かりを見つける為に呼び出したサルデラという悪魔から聞いたのです。神に嫌われている悪魔には魔法を使う力は与えられていません。結果として、神に対抗すべく悪魔は魔術を生み出しました。先程魔術の発動は困難を極めると言いましたが、悪魔にとっては簡単なことです。日頃から使っていれば、どれだけ難解なものだろうと慣れるものですから」
なるほどな。ルフが悪魔だということを学院長に隠しているから仕方なかったが、それならルフに発動させた方がいいか……。
「お前はちゃんと発動出来るのか?」
「もう何度も自身に発動していますので、何も心配はいりません」
こいつも魔術の扱いに慣れたということか。
それならこのままこいつに任せたままでもいいな。
「それで、祭壇に贄を捧げたら何が起きるんだ?」
「体から魂が抜けます。体を失った魂は天へと吸い寄せられますが、強い意志で抗えば自由に動くことは可能です。エルク君の魂はその体に縛りつけておきますので、抜けるのはあなた様の魂だけです」
なるほどな。気を抜いているとそのまま天に召されるわけか。
「お前はどうやって器を用意していたんだ?」
「処刑されることが決まっている若者を攫ってです。私とその者の魂を同時に抜き、私が先に体に入り、万が一魂が体に戻ろうとしても拒絶します」
人道的ではないが、朽ちることが確定している体を拝借したということか。
「理解した。贄はあの時の龍の心臓でいいんだな?」
「必要以上です」
「これが心臓だ。後は任せた」
アイテムボックスから首のない白い龍の死体を取り出し、心臓を抜き取る。
「それでは儀式を始めます」
学院長が心臓を祭壇の上に置き、何やらよくわらない言葉を呟くと、目の前にエルクが現れて倒れた。
いや、俺がエルクから抜け出たことでそう見えただけだな。
これが肉体を持たない魂の状態か。
確かに天に召されないといけないような気がしてくる。
召される前に、俺は計画通りリュートの体へと入り込む。
「問題ないな。思った通り、この体は悪くない。俺の力にも耐えられそうだ。違和感はあるが、じきに慣れるだろう」
軽く体を動かして確認する。
「無事出られたようでなによりです。リュート様も問題ありませんか?」
『体の自由は効かなくなったけど、聞いていた通りだから問題ないよ』
俺とリュートの関係は、エルクと俺との関係ではなく、フレイとロザリーの関係に近い。
同じ体の中にいても俺とエルクは隔離されていた。
しかし、俺とリュートの魂は現在、同じところにある。
リュートも体を動かすことは可能だが、俺が主導権を握っているので、俺が体の制御を譲るか、リュートが俺から制御を奪わないと動かすことは出来ない。
元がリュートの体だというのは関係ない。
どちらが表で、どちらが裏なのかは魂の格で決まる。
膨大な力を得ている俺が、リュートの魂に押し負けることはありえない。
フレイとロザリーの関係と少しだけ違うのは、あっちはロザリーがフレイの体を奪う気がなく、主導権を譲っているという点だけだ。
鑑定した結果では、フレイよりもロザリーの方が格が上だからな。
「問題ないそうだ」
「これからどうされるのですか?」
「今までと大きく変わりはない。力を蓄える。ただ、さっきいい事を聞いたからな。魔術を習得するつもりだ。神が与えたシステムとやらに囚われたままではどれだけ力を蓄えたとしても無駄かもしれない。その事に気付かせたお前には感謝するとしよう。ルフが言っていれば話が早かったのだがな」
「も、申し訳ありません」
ビクっとしながらルフが頭を下げる。
「お前は十分役に立っている。気にするな。それに、やり方を見る限りだとエルクの中にいては魔術の発動は出来なかった可能性が高い。大きな影響はないだろう」
「お許しいただきありがとうございます」
「他にも悪魔だからこそ知っていることがあるかもしれない。何か思うことがあれば報告しろ」
「かしこまりました」
「頼りにしている。それから、2人会わないといけない者がいる。準備が終わり次第、俺は王都を離れる。何かあればルフに伝えろ。何かやってもらいたいことがあればルフを通して知らせる」
「かしこまりました」
「エレナは学院をこのまま辞めるだろう。エルクも付いていくことになれば、ロックの役目も終わりだ。手続きは任せた。エルクが残るようなら面倒を見てやってくれ」
「お任せください」
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