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ネロ

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「それじゃあ、本題の占いをしてもらう前にネロくんのことを少し聞いてもいいかな?これは僕が気になっただけだから、話したくないなら話さなくてもいいけど、話してくれたなら何かネロくんが不安に思っていることを解決出来るかもしれないよ」
よくわからないアイテムを持っているネロくんのことは、今後のためにも知っておいた方がいい。

「……僕の何を知りたいの?」

「まず、ネロくんは孤児院出身ってことでいいのかな?」

「そうだよ。孤児院の前に捨てられていたって聞いてる」

「魔法学院に通ってたんだよね。失礼だけど、孤児が通えるようなところではないと思うんだけど……?」

「僕は物心ついた時から特殊なスキルを習得していて、おかあ……院長先生の勧めもあって、魔法を習うために魔法学院に入ったんだ。サラボナさんに推薦状を書いてもらって」
サラボナさんが、わざと有名にならないように細々とやっているネロくんのことを知っていたのは、孤児院の院長と繋がりがあったからか。

「別に気にしなくていいよ。血の繋がりがなくても、孤児院の仲間は家族なんでしょ?それで、魔法学院で魔法の勉強をしたにしては若過ぎるよね?魔法スキルも取得してないし」

「やっぱりお兄さんは僕のスキルがわかるんだ……。これはお兄さんのスキルによるものだね」
ネロくんがさっきのカードを使って、僕がスキルでネロくんのスキルを知っていることを確認した。

「そうだね。依り代ってスキルと契約っていう変わったスキルが使えるのは知ってるよ。だから、そのどちらかのスキルを使って占いをしていると思ったんだよ。実際はそのカードで占っていたけどね。それで、さっきの答えは?言いたくなければいいんだけど」

「魔法学院に入学してすぐの時、3年くらい前かな。孤児だっていうことでイジメられて、クローネが暴れたんだ」

「クローネっていうのは誰?」

「スキルと一緒で、昔から僕と契約している精霊。……契約していた精霊だね。ケンカしてから、呼んでも答えてくれない。……問題を起こした僕は、学院長のおかげで捕まりはしなかったけど、学院は辞めることになったんだ」
学院には入ったけどすぐに辞めたからまだ子供なのか。
学院長がネロくんのことを卒業生と言ったということは、証拠の有無は置いておいて、イジメがあったとは学院長は考えているのだろう。

「言い合いね。クローネがどこまでやったのかは知らないけど、捕まってないなら殺してはいないんでしょ?暴れたことを擁護するつもりはないけど、まず守ろうとしてくれたことには礼を言ったの?」

「……言ってない」
赤子の時から契約しているなら、クローネ側に何か契約した理由がある可能性が高い。
そうなるとまだ契約は切れていなくて返事をしないか、出来ない理由があるのかもな。

「そのカードはクローネにもらったの?」

「うん。クローネが僕の体を使った時に作っていたんだ」
やはり、ネロ君じゃなくてクローネの方が理から外れた存在ってことだな。

「そのカードでクローネがどこにいるのか調べたら?」

「このカードは僕自身のことは占えないんだ」
占えるならとっくに占ってるか。

「それは残念だね。それじゃあ、本題の占いを頼んでいいかな?」

「……何を占えばいい?」

「今、サラボナさんに頼み事をしているんだけど、サラボナさんが頼みを受けてくれるか。受けてくれるなら、僕の望みは叶うのか」

「……頼みは聞いてもらえるみたいだね。でも、お兄さんの望みの全ては叶わないみたい。でも、お兄さんはその結果に満足するみたいだよ」
なるほど。そう甘くはないという話か。
しかし、後悔しないということは想定の範囲内のことは起きるということだろうな。

そうなると、サラボナさんにスキルを使ってもらう必要はないか?
いや、あくまで僕の想定の話だし、想定外のことで僕が満足するのかもしれない。
そう考えるとサラボナさんに頼んだ話を無かったことにするという選択肢はないな。

「それから、もう一つ。魔物と盗賊、どちらが望む結果を得られるか?または、どちらも望む結果は得られないか占ってほしい」

「……何のことかわからないけど、魔物の方がいいみたいだよ。盗賊でも望みは叶うみたいだけど、比べるなら魔物の方が良い結果になるみたい。だけど、両方とも望みは叶うけど、お兄さんは結果に満足しないみたいだね」

「そっか……。うーん、それなら選択肢に衛兵を追加してもう一回占ってもらえるかな?」

「衛兵が1番いいみたいだよ。これも結果には満足しないみたいだけど……」
候補から外していた案が1番いいってことか……。
どうしようかな。

「ありがとう。占ってもらってよかったよ。お礼にネロくんの不安を一つ解消してあげるよ。孤児院で浮かない顔をしていたよね?クローネのことは君が自分で解決することだろうから口出ししないけど、さっきの話を聞く限りだと魔法学院関係で何かあるんじゃない?」

「クロウト君が僕のことをまだ恨んでいるんじゃないかなって。学院を辞めて孤児院に戻ってから、しばらく嫌がらせが続いていたんだ。その時はサラボナさんが守ってくれたんだけど、今でも孤児院が荒らされることがたまにあって、犯人はわかってないんだけど、もしかしたらまだやり足りないのかなって」

「クロウト君っていうのは誰?」

「クラスメイトで僕をイジメるようにみんなに指示を出していた貴族の子供」

「貴族ね。どの貴族かわかる?」

「ロンデル子爵家だよ。だから、サラボナさんも強くは出られないって」
子爵家か。
……中途半端だな。

「次に嫌がらせをされた時もサラボナさんに助けを求めるといいよ。サラボナさんが子爵家にケンカを売ってもいい口実をつくっておくから」

「お兄さんはCランクの冒険者なんだよね?そんなことが出来るの?」

「僕の肩書きは冒険者だけじゃないからね。まあすぐにわかるから、楽しみにしててよ。お代はこれで」
金貨を1枚机に置く。

「え!こんなに?」

「もっと払ってもいい気分だよ。知りたいことが知れたからね」

「……ありがとう」

「それから、一つお願いがあって」

「なに?」

「多分明日かな。今度は数人で占いをしてもらいにくるけど、今日占ったことは秘密にしておいて。僕はまだ君と出会っていないことでよろしく」
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