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Xデー
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狩谷君を放逐してから数日して、僕は考えが足りていなかったことに気付いた。
「どうしたの?」
顔に出さないようにやっと獲れるようになった海鮮料理をみんなで食べ終わった後、観光しながら歩いている時にヨツバに聞かれる。
「帰ってやらないといけないことがあったなって思ってただけだよ。僕は行方不明になってないことになってるからね。緊迫しててあまり帰れてなかったから、たまに帰らないとおかしなことになるなぁって」
「そうなんだ。それならまた少しの間いなくなるってこと?」
「そうだね。夕方くらいに一度戻るよ」
「クオン君、帰るの?」
イロハが話に入ってくる。
「夕方くらいからね。そのまま今日は向こうで寝るかもしれないから、何かあったらいつも通りとりあえず逃げて、合流は冒険者ギルドで」
「大丈夫だよ。忘れてないよ」
「何もないとは思うけど、気をつけてね」
やっと普通に獲れるようになった海産物を買い漁った後、僕はファストトラベルで移動する。
ヨツバ達には日本に帰ると嘘を言ったけど、本当はザングに移動する。
カリュブディスを討伐して、アクアラスが封鎖状態で無くなってからファストトラベルは使えるように戻っていた。
来た理由は委員長に用があったからだ。
王都にもう戻ってるだろうなと思いつつも、王都にはまだファストトラベルが出来ないので、まだ居たらいいなと思っただけである。
領主邸の別館と騎士が使っていた宿屋を遠くから望遠で覗いてみたけど、騎士団はやはりいなかった。
委員長に用といっても、今は聞きたかったことがあっただけだなので、諦めることにする。
「あれ、来てたのか?」
戻ろうと思っていたらハロルドさんに見つかってしまった。
街のパトロール中だったようだ。
「少し野暮用がありまして、一時的に戻ってきました」
桜井君達にはファストトラベルのことを秘密にしていたので、あまり知り合いには会いたくなかったんだけどなぁ。
「ハルトも来てるのか?」
「ハルト君は来てませんよ。今はアクアラスにいると思います」
「そうか。用と言うのは兵長にか?」
「いえ、別です。でもせっかく来たのでアリオスさんに挨拶だけしようかな。」
見つかってしまったなら、ちょうどいいからアリオスさんにも話をしにいこうかな。
「兵長も喜ぶだろう。まだ詰所にいるはずだよ」
「ありがとうございます。すみませんが、内密な依頼でこの街に来てまして、僕に会ったのは誰にも言わないで下さい。お願いします」
「了解した」
ハロルドさんに口止めをしてから別れ、アリオスさんに会いに行く。
「お久しぶりです」
「元気そうだな」
「他に用があって戻ってきたんですけど、アリオスさんにも話しておきたいことがあったので、寄らせてもらいました」
「真剣な話だろうか?」
「そうですね。前にも少し話をしましたけど、いい頃合いになったので、そろそろ騎士団長になる選択肢もいいかと思いまして、その相談です。今日ここに来たことは秘密でお願いします」
狩谷君を放逐した後、落ち着いてからゆっくり考えた結果、もう殆どクラスメイトは探し終えていることに気付いた。
委員長の手腕と狩谷君の奇行のお陰で思ったより早かった。
委員長に聞きたかったのは、委員長が居場所を把握している人が誰なのかということだ。
木原君と狩谷君が含まれているのかを知りたかった。
30人クラスの内、13人は既に帰還している。
委員長は5人保護していて、2人とは連絡を取れると言っていた。つまり、委員長を含めて8人いるということだ。
犬飼君と宮橋君は帰還してないけど、捕まっているはずだ。
僕達の4人と神下さんを合わせて28人。
狩谷君が委員長の保護下に入っているとは思えないから、これで29人。
つまり、見つかってないのは1人だけだ。
その1人が木原君なら、薬師さんのこともあるし、頑張って探さなくてもいいかなって思ったから、委員長に聞きたかった。
「やっぱりなりたいわけではないんだな」
「そうですね。騎士団長という権力を使いたいだけです」
「それなら問題ないな。約束でもあるから推薦しよう」
問題しかない気がするけど、前にアリオスさんから聞いた話からすると、アリオスさん的に問題がないということだね。
アリオスさんから推薦状をもらう。
「取りに来るだろうと思って書いておいた。必要ならレイハルトに渡してくれ」
「ありがとうございます。まだ実際にどうするかは決めかねてますので、選択肢に入れさせてもらいます」
「それで構わないよ」
その後、軽く雑談をしてから帰る。
翌日、僕はヨツバを呼んで真面目な話をする。
「大事な話があるんだ」
「怖いんだけど……なに?」
「すぐにではないけど、遠くないうちに僕は委員長と敵対することになると思う。敵対する理由は委員長が保護しようと集めた人を僕がまとめて殺そうと思ってるからだね」
「え…………」
僕は、驚きを通り越して呆然としてしまったヨツバが戻ってくるのを待つ。
「急になんでそんなことになるの?」
「元々委員長の所に集まった人は殺すつもりだったんだよ。その時が近くなってきたから約束通り殺す前にヨツバに話をしたんだよ」
「それっていつなの?」
「まだ決めてはないよ。不明瞭な所もあるし、それが明確になってからかな」
「理由は教えてくれないんでしょ?」
「そうだね。それは変わらず教えるつもりはないよ。もう少ししたらこの街を出ることになるよね?そろそろ王都に行くことになると思うんだ。そしたら準備を始めようと思ってるよ」
「前に約束をしたから私に教えたってこと?」
「もちろんそれもあるけど、今までなんだかんだでヨツバには助けてもらったからね。誠意を見せようと思ったのかな」
「少し時間をもらってもいい?」
「まだ全然時間はあるから、ゆっくりと考えてくれていいよ。答えられることなら答えるから、自分の納得の出来る答えを出して」
「……うん」
そろそろメインクエストは終わりになるかな。
神の像とか、連れてこられた理由とかわからないことは多いけど、帰りたい人を帰してしまえば、最悪それらは無視しても僕のやりたいことには関係ないので、のんびりやらせてもらえればいいだろう。
「どうしたの?」
顔に出さないようにやっと獲れるようになった海鮮料理をみんなで食べ終わった後、観光しながら歩いている時にヨツバに聞かれる。
「帰ってやらないといけないことがあったなって思ってただけだよ。僕は行方不明になってないことになってるからね。緊迫しててあまり帰れてなかったから、たまに帰らないとおかしなことになるなぁって」
「そうなんだ。それならまた少しの間いなくなるってこと?」
「そうだね。夕方くらいに一度戻るよ」
「クオン君、帰るの?」
イロハが話に入ってくる。
「夕方くらいからね。そのまま今日は向こうで寝るかもしれないから、何かあったらいつも通りとりあえず逃げて、合流は冒険者ギルドで」
「大丈夫だよ。忘れてないよ」
「何もないとは思うけど、気をつけてね」
やっと普通に獲れるようになった海産物を買い漁った後、僕はファストトラベルで移動する。
ヨツバ達には日本に帰ると嘘を言ったけど、本当はザングに移動する。
カリュブディスを討伐して、アクアラスが封鎖状態で無くなってからファストトラベルは使えるように戻っていた。
来た理由は委員長に用があったからだ。
王都にもう戻ってるだろうなと思いつつも、王都にはまだファストトラベルが出来ないので、まだ居たらいいなと思っただけである。
領主邸の別館と騎士が使っていた宿屋を遠くから望遠で覗いてみたけど、騎士団はやはりいなかった。
委員長に用といっても、今は聞きたかったことがあっただけだなので、諦めることにする。
「あれ、来てたのか?」
戻ろうと思っていたらハロルドさんに見つかってしまった。
街のパトロール中だったようだ。
「少し野暮用がありまして、一時的に戻ってきました」
桜井君達にはファストトラベルのことを秘密にしていたので、あまり知り合いには会いたくなかったんだけどなぁ。
「ハルトも来てるのか?」
「ハルト君は来てませんよ。今はアクアラスにいると思います」
「そうか。用と言うのは兵長にか?」
「いえ、別です。でもせっかく来たのでアリオスさんに挨拶だけしようかな。」
見つかってしまったなら、ちょうどいいからアリオスさんにも話をしにいこうかな。
「兵長も喜ぶだろう。まだ詰所にいるはずだよ」
「ありがとうございます。すみませんが、内密な依頼でこの街に来てまして、僕に会ったのは誰にも言わないで下さい。お願いします」
「了解した」
ハロルドさんに口止めをしてから別れ、アリオスさんに会いに行く。
「お久しぶりです」
「元気そうだな」
「他に用があって戻ってきたんですけど、アリオスさんにも話しておきたいことがあったので、寄らせてもらいました」
「真剣な話だろうか?」
「そうですね。前にも少し話をしましたけど、いい頃合いになったので、そろそろ騎士団長になる選択肢もいいかと思いまして、その相談です。今日ここに来たことは秘密でお願いします」
狩谷君を放逐した後、落ち着いてからゆっくり考えた結果、もう殆どクラスメイトは探し終えていることに気付いた。
委員長の手腕と狩谷君の奇行のお陰で思ったより早かった。
委員長に聞きたかったのは、委員長が居場所を把握している人が誰なのかということだ。
木原君と狩谷君が含まれているのかを知りたかった。
30人クラスの内、13人は既に帰還している。
委員長は5人保護していて、2人とは連絡を取れると言っていた。つまり、委員長を含めて8人いるということだ。
犬飼君と宮橋君は帰還してないけど、捕まっているはずだ。
僕達の4人と神下さんを合わせて28人。
狩谷君が委員長の保護下に入っているとは思えないから、これで29人。
つまり、見つかってないのは1人だけだ。
その1人が木原君なら、薬師さんのこともあるし、頑張って探さなくてもいいかなって思ったから、委員長に聞きたかった。
「やっぱりなりたいわけではないんだな」
「そうですね。騎士団長という権力を使いたいだけです」
「それなら問題ないな。約束でもあるから推薦しよう」
問題しかない気がするけど、前にアリオスさんから聞いた話からすると、アリオスさん的に問題がないということだね。
アリオスさんから推薦状をもらう。
「取りに来るだろうと思って書いておいた。必要ならレイハルトに渡してくれ」
「ありがとうございます。まだ実際にどうするかは決めかねてますので、選択肢に入れさせてもらいます」
「それで構わないよ」
その後、軽く雑談をしてから帰る。
翌日、僕はヨツバを呼んで真面目な話をする。
「大事な話があるんだ」
「怖いんだけど……なに?」
「すぐにではないけど、遠くないうちに僕は委員長と敵対することになると思う。敵対する理由は委員長が保護しようと集めた人を僕がまとめて殺そうと思ってるからだね」
「え…………」
僕は、驚きを通り越して呆然としてしまったヨツバが戻ってくるのを待つ。
「急になんでそんなことになるの?」
「元々委員長の所に集まった人は殺すつもりだったんだよ。その時が近くなってきたから約束通り殺す前にヨツバに話をしたんだよ」
「それっていつなの?」
「まだ決めてはないよ。不明瞭な所もあるし、それが明確になってからかな」
「理由は教えてくれないんでしょ?」
「そうだね。それは変わらず教えるつもりはないよ。もう少ししたらこの街を出ることになるよね?そろそろ王都に行くことになると思うんだ。そしたら準備を始めようと思ってるよ」
「前に約束をしたから私に教えたってこと?」
「もちろんそれもあるけど、今までなんだかんだでヨツバには助けてもらったからね。誠意を見せようと思ったのかな」
「少し時間をもらってもいい?」
「まだ全然時間はあるから、ゆっくりと考えてくれていいよ。答えられることなら答えるから、自分の納得の出来る答えを出して」
「……うん」
そろそろメインクエストは終わりになるかな。
神の像とか、連れてこられた理由とかわからないことは多いけど、帰りたい人を帰してしまえば、最悪それらは無視しても僕のやりたいことには関係ないので、のんびりやらせてもらえればいいだろう。
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