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【 コウ辛・壬シン ジン 】

 今回のスカウトは【戊】の担当候補者。

キノト】担当のヒカルと共通の友人である。
 不安要素はほぼ0でスカウトに挑むわけだが……実際、やってみないと何が起こるかはわからない。


『戊、だけど……予想以上に、こじつけね』


 戊と俺の名前“弘大の大”の共通点挙げた時。
 アオイだけが理解はしてくれたものの、その冷ややかな目が忘れられない。
 他2人に至っては、あまりのな暗号に、理解が追いついていない様だった。

ーーしかし、あの時の俺とは違う。
 俺の考えた、”ネーム“の適任者を見せつけてやれる時が来たってわけだ。


***


「バウッ!」

 ”今“のは、犬の鳴き真似をしたんじゃ無い。
 俺は、そいつを呼んだーー名前を呼んだんだ。

 バウと呼ばれた少年の名前は、犬本基。いぬもとはじめ。

「人狼ゲームやるんだけど、一緒にやってくれよ」
「うん、良いよー」

 バウは俺の申し出に迷う間もなく、YESの返事をした。

ーーやっぱり。いつも通り、か。

 コイツはいつもOKを出してから考える。
 
 ほんっとに無理だった時にだけ断る。
 そして、「また今度ね」と必ず言うのだ。

 『今度ね』とは言ったものの、自分から聞きに来ることはない。
 別の件でこちらから話しかけた時に、ついでの様に確認してくるのだ。

 『また今度ね』

 この言葉を忘れていたわけでは無い。必ず聞いてくる。

ーー几帳面な癖に、完全受身のYESマン。そんな奴だ。


 バウと言う呼び名は、苗字の犬本がきっかけではある。
 正確にいえば、バウが大の犬好きであった事が由来している。

 ケンケンやワンコロと言った呼び名も通って来ていて、嫌と言ったことは無かった。
 でも、それをいまいち気に入っていないのは……なんとなく、わかった。

 俺は……コイツが本当に喜んだ時の反応も、知っているからだ。

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