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【6】

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 如何にも生真面目でキツそうな女子生徒が、手をまっすぐ上げたまま反応を待っていた。

【 6番 オノレ 様 の発言です。 】

「GM、質問です。4番の考察は“メタ”にならないのですか?
 それと、人狼の自滅はゲーム性の崩壊行為……マナー違反じゃ無いんですか?」

【 GM    対応をお願いします。 】

「はいはーい。通常の少人数人狼の場合、人狼の自白はマナー違反です」
「ですよね……!」
「しかし、大人数人狼の場合は陣営が3つ。
 人狼陣営の味方もまだ複数人存在します。
 1人が自白した所で問題ありません」
「でも、個人の人間関係を情報源に考察させるのは、どうなんですか!?」
「GM制限に基づき、考察の参考にならぬよう、“メタ”に感じたであろう部分は触れずに言いますが……あくまで、“声色考察”であり、メタではありません」
「そんな……」
「情報提供にならぬよう、ティーさんの発言内容は問題無し。
 ん~……認めます、とだけ言っておきますかね。
 これでよろしいですか?」
「わ、わかりました……」

「ーーそれでは、再開します」

ーーなるほど。
 考察への意見・反論では無く、ルール違反の可能性がある場合は中断して質問・指摘が出来るわけか。


 人狼は、嘘がつき放題な所が強み。
 それに対して社会人陣営はそうはいかない。

 勝利条件を無視した嘘の結果報告ーー語り行為。
 報告のし忘れ・間違い・裏切りーー愉快犯行為。

 これらは特別な理由がない限りマナー違反であり、避けるべき行動である。

 今回3番の『指定先を言わない』と言う行為もそれに該当する。
 が、敵の炙り出しの為だ明確な理由があり、二周目の公言が約束されている為認められている。

 俺の番号は最終の11番。
 つまり、情報が1番集まった状態での発言になる。
 考察し甲斐がある……と思いつつ。

ーー制限時間は40秒。

 2周目があるとは言え、その2周目も倍以上の情報量を纏める事になる。

ーーどう考えても、40秒じゃ……絶対足りない。

 そう思った時だった。


ーーーズキンッ。
 また、あの痛み。頭に走る鈍い痛みだ。


ーーははは……これだよ、これ。もう驚かないって決めたのにな。


【 2周目の発言時間は最大1分。 】


 瞬時にこの情報が脳裏に浮かんだ。
 こんな内容、GMは口にしていない。

 他の基本ルールも、頭の中にある。
 まるで思い出したかのような感覚に身震いした。

 奇抜なプレイヤー名が上がっていく。
 そんな中でも俺は、それらに混乱する事なく考察を整理する自分に気が付いた。

ーー無視だ。

 ゲームに集中
 不安な状況に置かれているのも忘れて、ウイルス人狼ゲームにのめり込む俺が居た。

 この感覚に、何処か懐かしさを感じながら。
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