佐野千秋 エクセリオン社のジャンヌダルクと呼ばれた女

藤井ことなり

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護衛対象はキケンな男の娘 短編

葵さんごという女

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「こ、小山、本当か」

 顔をハジメに向ける御器所と同時に、葵は目配せする。

「はい。本当です。葵というか、さんごのお父さんは葵警視正です」

「お前、知ってたのか」

「はい。さんごとは高校の頃からのつきあいで、彼女の自宅に遊びにいったこともありますし、本部に着任したときも挨拶にいきました」

「お、おま、なんでそんな大事な事黙っていたんだよ」

 いつも飄々としているのに真っ赤になって問い詰める御器所に、ちょっと小気味好くなりながらもハジメは真面目に答える。

「そう言われましても先輩は本職とコミュニケーションをとろうとしませんでしたし、なにより任務と関係ないことでしたから」

「そう……だけどさぁ」

混乱している御器所に葵はたたみかける。

「監察は警察の中の警察、問題警察官には煙たい存在ですが、そうじゃない真面目な方々にはそんなに気にすることはないですよ。御器所さん」

「ま、まあそうですねぇ」

「そんな父に、貸しをつくれるとしたらどうです。興味ありませんか」

「急に言われてもその……」

まだ踏ん切りのつかない御器所に、葵は尻に火を点けるようなことをハジメに問いかける。

「ハジメ、御器所さんについて何かある?」

「これといっては……課長達の前でスリーサイズを言われそうになったコトくらいかな」

「こ、小山」

「あら、立派なセクハラね」

「ち、違うんです。そんなつもりじゃなくて、つい口が滑って、昔の公開プロフィールを言っただけでその……」

「まあそれはハジメのことだから私には関係無いですね。それはそれとして、こちらの計画にノってくれますか、御器所さん」

しばらく黙っていたが、わりと早く腹をくくったようで承諾の返事をした。

「で、具体的にはどうするんです」

「こちらのタイミングに合わせて先程の進言をしてくれるだけでいいです」

「……小山、坊ちゃんを本部に連れて行くのが遅れている件だが」

御器所は顔を葵に向けたまま、ハジメに話しはじめる。

「今回の発端は[江分利組への襲撃]だから組対うちが主体の特捜帳場が立っている。だが鎧武という半グレの犯行だと判明してから少年課も参加することになったんだ」

「はい」

「つまり同格の課長が二人いてな、護送の仕方でモメている。組対課長は強硬派で大名行列のようにパトカーで護衛すると主張、対して少年課長は穏健派で隠密に護送してあとから発表すると主張している」

 話していることは捜査内容に関することだから、一般には話せない。御器所はあくまでもハジメに話しているという体で、葵に状況を伝えているのだった。

「ということは──ワン・ツー・スリーですね」
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