佐野千秋 エクセリオン社のジャンヌダルクと呼ばれた女

藤井ことなり

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護衛対象はキケンな男の娘 短編

下準備は念入りに

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 ──御器所の話を葵はすぐ理解したらしく、スマホを手に取ると独り言のように

「さて、ではお父様に連絡しますか」

と言ってさり気なく通話を切り、葵雷蔵へとリダイヤルする。

 ずっと黙っていた夏生が我慢できなくなったらしく、隣に座っているハジメに小声で話しかける。

「おねーさま、葵先生ってスゴいですね」

「そうね、頭が良いのは知ってたけど……ああやって他人ひとを動かすことは敵わないなぁ」

 高校生に自分の弱味をみせるような発言だが、ハジメはそういったことは気にしない。事実を素直に受け入れて素直に認める、そういう性格だからだ。

「おねーさまだってスゴいじゃないですか。六人も倒したうえにパパもやっつけちゃったし」

「パパのことは忘れて。殴っちゃってゴメンね」

「ううん、気にしないで。あんな怖くて強いパパをやっつけちゃったのを見て信じられなくて驚いてたけど、パパも負けるんだって知ったら何かスッキリしちゃった」

どうやら知らずに夏生のメンタルケアをしていたようだ。ハジメはそれに気づかなかったが、何となく良い結果になったことは感じていた。

 助手席に座っていた御器所は、シートを倒してずり上がりハジメのそばに寄る。

「小山、葵先生ってナニモンだ」

「ナニモンと言われましても……、高校の同級生で教育大学から森友財団に就職して学園グループの監察役をしているとしか」

「ちげーよ、経歴じゃなくて人柄だ。初めて会ったとき只者じゃないとは感じてたが、こんなにおっかないとは思わなかったぞ」

「おっかないですかねぇ、たしかに頭は良いですけど……。そういえばさっき葵が言ったワン・ツー・スリーって意味分かりますか」

「あってるかどうかは分からんが……、たぶんこれからやるコトが三つあると考えたんだろう、それが何かはわからん」

 何となく三人は寄り集まって、葵の行動を見守る感じになっていた。
 当の葵は少し緊張した感じで話している。会話の内容は分からない、だが手こずっているのはみてとれた。

「──ええ、ではそのようにお願いします。わかりました、念を押さなくてもパーティには行きますから、そちらもよろしくお願いしますね。では失礼します」

通話を切り、ひと仕事終えた感の葵はふうとため息をついた。

「何とかお膳立ては出来たわ。さぁて始めましょうか」

「その前に葵先生、何をどうするか教えてもらいませんか。万一の時、意図を知っていると対応しやすいですから」

「あら御免なさい。ちょっと気が急いてましたね。──お父様と会話したあとはいつもこう、気を落ち着けますね」

二度程、深呼吸してから葵は計画を説明した。
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