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護衛対象はキケンな男の娘 短編

交渉という名の

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「とりあえず、夏生くんとハジメは黙ってて。交渉は私がするわ。御器所さんから訊かれて返答に困ったら私の指示に従って。それとケイは通話そのままで黙っていて」

 口早にそれだけ言うと、キャラバンの助手席扉を開けて御器所を招き入れる。

「葵先生、小山達を守っていただき本当にありがとうございました。あとはこちらに任せてください」

「友人と生徒を守るために、当然のことをしたまでですわ。お任せしても良いのですが──」

「何か問題でも?」

「気になっていたのですが、対応が遅くありませんか? 先程まで白バイ警官が警護してくれてましたが、その後御器所さんが来るまで誰も来なかったんですが」

「ああー、それはですねぇ」

御器所はちらりとハジメを見る。

「こちらには六人の暴漢を倒した小山がいましたから。本部でもさすがアマゾネス小山だ、アイツがいるなら大丈夫だろうと信頼されてますので」

「ア」

スマホから漏れた声に御器所は反応するが、葵が慌てて話す。

「ハジメがそう呼ばれていたとは知りませんでした。なるほど、信頼されてるんですね。友人として嬉しいかぎりです」

「あ、いえいえ」

 何とか誤魔化せたらしい。さっきのはたぶんケイが思わず笑いそうになったのだろう。スマホの向こうで必死に笑いをこらえているのがハジメには伝わっていた。

「ところで例の殺人請負サイトに変化があったのは御存知ですか」

「ああ。よく知ってますね、だから小山と坊ちゃんをパトカーに移ってもらい、先生はここで……」

「それは得策ではありませんわ。これは私の考えですが──」

そう前置きをして葵はケイの策を御器所に話した。

「領事館にねぇ……。悪くはないですが本部の方針が決まっていますし」

「そこを御器所さんからの提案で進言してくれませんか」

「無理ですよ、こんなペーペーが言ったところで変わりはしません」

「それを後押しする上司がいるなら何とかなると思います」

「上司? 誰がそんなことを後押しするんです」

「父なら私の方針を指示してくれますよ」

「葵先生のお父様ですか? 失礼ですがどなたのことでしょうか」

 組対課にも少年課にも葵という人物はいない。その上である刑事部長も違う名前だ。御器所には心当たりはなかった。

「愛知県警警務部監察室の葵雷蔵警視正が父です」

「監察の葵警視正って──監察の青いイナヅマですか!!」

「そう呼ばれているようですね……問題警察官には」

にこやかに言う葵と対象に、御器所はどんどん顔面蒼白になっていく。

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