赤いトラロープ〜たぶん、きっと運命の

ようさん

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初めてのご主人様……だ、と……?

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「あんたと話してんのはスマホじゃなくてこの俺だろうがよ。『ぷりーずすぴーく、もあすろーりー』くらい言ってみろや。このアンポンタンがぁ……ふごっ?」

 ユーラの野郎、目のすわった薄ら笑いを浮かべながら片手で俺の両頬を掴みやがった。

「意味は全然わからなくても、ディスられてるってのは伝わるんだよねえ?」

 にゃんらほぁ、あるっへんは なんだコラ、やるってのか?」

 体格差が何だってんだ。おセレブなジムで鍛えた筋肉になんざ負ける気がしねえ。こちとら土日のたんびに指差確認で身体張ってんだ。上等だコラ。

「そう言うところが野蛮で、玄英に相応しくないって言ってんの、わかんないかなあ。彼は上等で上質な物しか似合わない、美しく繊細な人だ。無計画にボロバイクで連れ回して野宿させたり、安酒場に誘ったりしていいような人じゃないよ?」

「あ?あんへあんふぁら何であんたが……」

 何でこの人、バイク旅行のこと知ってるんだ?それに安酒場って何?

 バイクが古いのは否定しないけど、ボロじゃない。きっちりメンテして大事に乗っている。出発前にもちゃんと点検してもらったし、彼の分の保険にも入っていた。

 急に二泊分余計に休暇が取れたのでほぼ行き当たりばったり旅だったのは否めない。一泊だけ野宿もしたし、一日は台風にぶち当たって移動できなくて……いや、それはまあいいや。
 それも含めて玄英は、これまでの自分の生活では体験できなかったと言って喜んでくれた。玄英の希望した茅葺き屋根ではなかったが昔ながらの宿場町にも泊まったし、モーターパークで2ケツの練習もした。
 ハプニング込みで二人の一生のいい思い出だ。赤の他人にとやかく言われる筋合いはない。

 奴はぐっと顔を近づけて、さらにネチっこくこう囁いた。

「玄英の性癖は僕もよく知ってるが、野外で木に縛りつけて愉しむのは君の趣味か?」

「……はあっ?」

「それより君、玄英のなかをまだ知らないようだな。それならまだ手放せるか……」

 俺は頭と顔面に血がのぼり、後先考えず奴の気持ち悪い顔面に拳を放ったーーが、奴は俺をつき飛ばしてギリギリかわしやがった。俺は拳を空振りした勢いで、デッキで二度ほどバウンドする盛大な尻餅をついた。くそっ。

「そう言うところが下品ではしたないと言っている」

「っざけんな!わざわざ見てたのかよ!この出歯亀野郎!」

「デ…バ…?」

 ユーラは憎たらしく首を傾げ、肩をすくめた。

「あいにくそこまで暇じゃない。人に調べさせただけだ。褒められた話じゃないのはどっちかな?」

 奴はニタニタ笑ってすましている。

「くっそ……」

 結論から言うと、最後の晩に宿が見つからず、野宿しがてら一回だけお外で盛り上がってしまった。木に……というのは玄英のリクエストだし旅の満足度が上がったのも確かなのだが……ぢゃ、なくて!

 あんな山の中、周りに人家もなかったし絶対他に誰もいないって思ってたのに!何で何で何で?

 動揺したら負けだと思って平静を装ってはいるが、内心めちゃくちゃビビってる。

「僕は口外なんかしないよ?君はともかく、玄英の体面にも関わることだからね。わが国のパパラッチはもっと悪質だ。望遠レンズにドローンに監視衛星……世の中には便利なものが溢れているんだから。気をつけて欲しいな?」

 気がつくと、デッキは花火を見に出てきたパーティ客で一杯になっていて、一触即発の俺達の周りは正義感半分、興味本位半分の野次馬達が何重にも取り巻いていた。
 恥ずかしいのとムカつくのとで俺は完全にパニックになり、飛び起きてユーラに再び飛びかかろうとした。

「恒星!」

 真っ青な顔をした玄英が人垣をかき分けて突進して来て、俺とユーラの間に割って入った。

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