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恒星、SNS王相手に啖呵を切る

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「ふむ。玄英に近づいてくる人間にはふた通りいる。表面的な部分だけを盲目的に崇める連中と、彼の才能と善良さにつけ込んでどうにか得をしようとする連中。君はどちらとも違うようだ」

「そうですか」

「天才と馬鹿は紙一重」って言葉があるが、IQが10違うと会話が成り立たないという説も聞いた事がある。きっとこういう事なんだろうなーーこの人が何を言いたいのか全然わからない。ただ、一見友好的な態度ながら、向けられているのが善意じゃないって事もわかる。

 玄英くらい頭が良ければこの人の意図せんとするところが理解できるのか?

 同じく頭の出来がレベル違いでも、玄英とはくだらない話だろうが真剣な話だろうが一晩中でも喋っていられるのに……もしかして玄英が俺に合わせてくれてるのかもしれないが。まあいいや。

「今日はお招きいただきありがとうございます」

 俺は軽く頭を下げ、不毛な会話を打ち切って中に戻ろうとした。玄英も仕事の話ばかりで腹減ってるだろうし、即席パーティ丼でも作ってやって二人で食おう。

「コウセイ」

 が、ユーラにまた呼び止められてしまう。

「まだ何か?」

「僕らの間にはまるで天と地ほどの違いがあって、住む世界も違う。だが思いの外共通点が多いようだよ。ルーツがアジア系であり、日本語を話す」

「それもそうですね」

「そして、玄英のご主人様である事」

「……はあっ?」

 その瞬間、ユーラの背後から俺を目掛けてすさまじい轟音と閃光が走り、艦砲一斉射撃でもされたのかと思ったーーが、同時にここは死んでもビビったら駄目なところだと悟る。

「さすがに玄英は君にそこまでは話してないようだな。僕は玄英の最初のご主人様で、最初の男なんだ」

 次の瞬間ちゃんと生きていたので、絶妙なタイミングでド派手な花火が上がっただけだとわかった。色とりどりの光に照らされながら逆光になった奴のニヤけた顔に、仁王立ちのまま思い切りメンチを切り続けていた。

「だったら何ですか。喧嘩売ってんなら買いますよ?」

「訂正。行儀良く礼儀正しいのはやはりつけ焼き刃だったな?底の浅い、下品な貧乏人めーーおよそ玄英には似つかわしくない。彼は返してもらうよ」

 物理的にも見下ろしながらしたり顔でホザきやがる。上等だ。

「俺が下品って言うならあんたも大概だな。返すとか返さねえとか大の大人の男を何だと思ってやがんだ。百均の傘じゃあるめえし。
 あんただって虚業とあぶく銭で成り上がった元庶民だろうがよ。こちとら『ボロは来てても心は錦、お天道様に顔向けできねぇこたぁするな』ってな、祖父ちゃんにきっちり叩き込まれて29年真っ当に生きてんだ。見下げられるいわれなんざねぇや。
 そもそもマウント取りたがる奴ってのは、自分の中に何かが欠けてる可哀想な奴と相場が決まってんだ。『天は人の上に人を作らず、人の下に人を作らず』ってなぁ、パールハーバー前から福沢諭吉翁もおっしゃってんだよ。
 何が自由と平等とアメリカン・ドリームの国だい。リンカーン様が泣くぜ」

 と、俺がフルスィング初球打ちヘッドスライディングばりのフルスロットル啖呵で切り替えしてやると、ユーラは面食らったようにスマホを取り出し、画面をのぞき込んだ。

 Untrancelatable 翻訳不可能」と英語で表示された画面をこちらにかざし、肩をすくめる。しまったーー相手に通じてないんじゃ言い負かしたことにならない。
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