赤いトラロープ〜たぶん、きっと運命の

ようさん

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「D-クロエ」シリーズ、大ブレイク?

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 それから数ヶ月。

 ガルテン松山がD’sTheory社との共同開発で発売した、地球環境に配慮した家庭向け園芸用品の「D-クロエ」シリーズは、コンセプトのユニークさと事前の話題性で発売直後から売れ行きは絶好調、第一弾のグリーンカーテンとベランダ菜園のシリーズは業界でも異色のヒット商品となったーーそこまではよかった(何年かぶりにボーナスも増えたしね)

 一時期、生産が追いつかず販売地域の園芸店やホームセンターから品物が消えるという事態が起きた。その品薄ぶりがネットで「露出のレアなイケメンセレブ社長」「美しすぎる天才研究者」などと玄英のキャラクターと結びつけられて話題になると騒ぎはさらに拡大し、ネット転売屋が横行して偽物が出るほどの騒ぎになった。
 フリマサイトやオークションサイトの利用者になった事はあるが、そこを監視して当社商品の出品規制を要請したりするなんて事は人生初めての経験だ。

「60cmプランターの単品なんてホムセンで一個数百円で売ってるんだぞ?一万円近い値段がついてて誰が買うんだ?出す奴も(いないとは思うが)買う奴も頭おかしいんじゃねえの?」なんて俺も思ったが、偽物は許せない。

 誤認や勘違いで誰かがポチってくれる事を狙って、ワンチャン高値出費する連中も相当だと思うが、そこいら辺の安物にラベル貼り替えて人を騙す気満々の恥知らずな輩は迷惑ユーザーの風上にもおけない。アカウント削除なんて生ぬるい事言ってないで国家権力に逮捕させるか大赤字覚悟で損害賠償請求するくらいするべきだ!

ーーって、古賀さんがうちの法務担当の尻叩いてくれないかな。

 耐久性に優れ、初心者でも風除けやネットの設置も容易にできて用途が終われば作物と一緒に地球に還る、当社自慢の優れものなんだぞ。俺と玄英を含めてどれだけ労働時間×のべ人数プラス血と汗と涙が費やされたかーーいや、血は流れてないが(たぶん)
 
「日本人は品薄の人気商品が定価以上で売られる事を嫌う人が多いようですね。欧米圏では供給に対して需要が大きい物ほど高価になるという感覚は普通なのですが」

 と、玄英は前置きした上で(確かに某◯マゾンとか、ネットの旅行予約サイトとかそうだよな)

「あ、もちろん、食料品など生きていく上で必要な物は例外ですよ。ですが私も、ネットの狂乱だけが一人歩きするのは本意ではありません」

 増産体制について話し合う会議の場で、そう発言して眉をひそめた。

「僕らがこだわった『身近な緑を楽しむための道具で環境に負荷をかけない』というコンセプトとか、誰にでも扱いやすい商品の機能性とかーーそういった本質的な部分が評価されて段階的に売り上げが伸びるのが理想でした」

 本来なら「爆発的」とも言えるヒットぶりなので手放しで喜ぶべきなのだろうが、エコーチェンバー的に過熱し過ぎたブームは冷え切って忘れ去られるのも早い。
 増産をかけた途端に飽きられて大量の在庫を抱える羽目になるーー業種に限らないこのあるあるパターンを僕らは嫌というほど見たり聞いたりしている。

「購入者様からは製品そのものの良さを評価する声が続々と届いておりますし、極端な品不足さえ解消されれば『人気定番商品』として定着する素地は十分あります」

「全工場が既に増産体制をとっていますが、需要の動向は注意深く見守っていきます。育成時期の限られる『グリーンカーテン』シリーズは予約制とし、第二弾の「季節のエコ花壇」シリーズの発売を前倒しします。冬には業務用資材も発売予定ですので、広報にもより一層力を入れる方針です」

 水島課長に続いて営業課長の報告を聞いた玄英はリモート画面の向こうで納得したように頷き、「ぜひよろしくお願いします」と答えた。
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