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玄英VS清武 腹芸リベンジバトル
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「僕はビジネスとプライベートは分ける主義です」
玄英は優雅な営業スマイルを浮かべた。
「清武さんの職人としての仕事や仕事に対する姿勢は全面的に信頼できると思いました」
「……」
「今日の研修も素晴らしいものでしたし、流し素麺にも最初から最後待て感動しっぱなしでした。竹の樋や食器が目の前で見る見る出来上がっていくのも見事で、すっかり魅せられました」
「みんな、職人ですからね。手仕事は慣れてるんで」
感情の読めない、いつもの清武に戻ってしまったが「仕事を褒められて悪い気はしない」といったところか。
「流しそうめんと竹の食器は、みんな坊ちゃんのアイディアですよ。本当は少し早いですが、梅雨明け前だってのに馬鹿に暑いですからね」
「動いて汗をかいた後だから、本当に美味しかった。恒星っておもてなしが上手ですね。プロデュースの才能がある。こないだも僕のパーティーを手伝ってもらったんです」
「……」
「竹の器は持って帰ってオブジェにします」
「あんな物を?」
清武は困惑したように眉をしかめた。
「ちゃんと洗って乾かして、ニスでも塗らんとカビますよ。この陽気ですし」
「そうなんですか?」
「社長さんが御所望なら、あんなやっつけ仕事でなくてちゃんと仕上げたもんを後日お届けしますよ」
竹細工はもちろんここの社員の本業ではないが、ここで首を縦に振れば老舗料亭でも通用するような出来栄えの物が届くだろう。
「いえ、今日の物の方がいいです。僕の前で恒星が作ってくれたんです。記念にしたい」
清武は忌々しそうに顔をしかめた。
「あんた、とてつもない人たらしだな」
「ヒトタラシ、とは?」
「坊ちゃんは社長さんのために張り切ったんでしょうが、俺はあんたを信用してない。坊ちゃんが会社で困らないよう仕方なしに協力しただけだ」
見えない闘いのゴングが再び高らかに鳴る。
無邪気に笑い、そう言い放つ玄英。清武は鼻先に連続パンチを喰らったような表情で睨み返した。
「恒星は自分のことを『人見知りで気が利かない』なんて言ってますが、優しく聞き上手で一緒にいると安心できるんです。仕事の時も、細かいことまでちゃんと事前に目配りしておいてくれるから打ち合わせもやりやすい」
「坊ちゃんの性根が優しいんは生まれつきでさ。他人様にはよく誤解されたり、かと思うと反対につけ込まれがちだ」
防戦一方だった清武がきっちりと刺し返す。が、すっかり惚気モードの今日の玄英は無敵である。
「そうですね。会社での仕事だって、普段からちゃんとアピールしたらいいのにと思うんです。本当はもっとクリエイティヴな事に向いていると思うのに」
清武は顔をしかめた。恒星の会社での様子はよく知らない。
「……なら、それこそビオトープは坊ちゃんに頼んだらいかがですか。最近の小洒落た品種は俺なんかよりよくご存知だ」
「恒星とビオトープ作り?ますます楽しそう!」
恒星のカッコいい職人姿がまた見られるのは純粋に嬉しいが。
「って……、あの、清武さんは?」
「派手な睡蓮を胡散臭いくらい植えて煩いウシガエルでも飼えばいい。俺は金輪際、あんたとは関わらない」
清武は吐き捨てるように言うと、背中を向けて事務所の中に入ってしまった。
玄英は優雅な営業スマイルを浮かべた。
「清武さんの職人としての仕事や仕事に対する姿勢は全面的に信頼できると思いました」
「……」
「今日の研修も素晴らしいものでしたし、流し素麺にも最初から最後待て感動しっぱなしでした。竹の樋や食器が目の前で見る見る出来上がっていくのも見事で、すっかり魅せられました」
「みんな、職人ですからね。手仕事は慣れてるんで」
感情の読めない、いつもの清武に戻ってしまったが「仕事を褒められて悪い気はしない」といったところか。
「流しそうめんと竹の食器は、みんな坊ちゃんのアイディアですよ。本当は少し早いですが、梅雨明け前だってのに馬鹿に暑いですからね」
「動いて汗をかいた後だから、本当に美味しかった。恒星っておもてなしが上手ですね。プロデュースの才能がある。こないだも僕のパーティーを手伝ってもらったんです」
「……」
「竹の器は持って帰ってオブジェにします」
「あんな物を?」
清武は困惑したように眉をしかめた。
「ちゃんと洗って乾かして、ニスでも塗らんとカビますよ。この陽気ですし」
「そうなんですか?」
「社長さんが御所望なら、あんなやっつけ仕事でなくてちゃんと仕上げたもんを後日お届けしますよ」
竹細工はもちろんここの社員の本業ではないが、ここで首を縦に振れば老舗料亭でも通用するような出来栄えの物が届くだろう。
「いえ、今日の物の方がいいです。僕の前で恒星が作ってくれたんです。記念にしたい」
清武は忌々しそうに顔をしかめた。
「あんた、とてつもない人たらしだな」
「ヒトタラシ、とは?」
「坊ちゃんは社長さんのために張り切ったんでしょうが、俺はあんたを信用してない。坊ちゃんが会社で困らないよう仕方なしに協力しただけだ」
見えない闘いのゴングが再び高らかに鳴る。
無邪気に笑い、そう言い放つ玄英。清武は鼻先に連続パンチを喰らったような表情で睨み返した。
「恒星は自分のことを『人見知りで気が利かない』なんて言ってますが、優しく聞き上手で一緒にいると安心できるんです。仕事の時も、細かいことまでちゃんと事前に目配りしておいてくれるから打ち合わせもやりやすい」
「坊ちゃんの性根が優しいんは生まれつきでさ。他人様にはよく誤解されたり、かと思うと反対につけ込まれがちだ」
防戦一方だった清武がきっちりと刺し返す。が、すっかり惚気モードの今日の玄英は無敵である。
「そうですね。会社での仕事だって、普段からちゃんとアピールしたらいいのにと思うんです。本当はもっとクリエイティヴな事に向いていると思うのに」
清武は顔をしかめた。恒星の会社での様子はよく知らない。
「……なら、それこそビオトープは坊ちゃんに頼んだらいかがですか。最近の小洒落た品種は俺なんかよりよくご存知だ」
「恒星とビオトープ作り?ますます楽しそう!」
恒星のカッコいい職人姿がまた見られるのは純粋に嬉しいが。
「って……、あの、清武さんは?」
「派手な睡蓮を胡散臭いくらい植えて煩いウシガエルでも飼えばいい。俺は金輪際、あんたとは関わらない」
清武は吐き捨てるように言うと、背中を向けて事務所の中に入ってしまった。
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