深見小夜子のいかがお過ごしですか?

花柳 都子

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怖い話

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 さて、今日は〇月〇日。皆さん、いかがお過ごしでしょうか。春からの新生活に向けて着々と準備を進めている、そこのあなた。せっかくの春なのに、何も変わらないというそこのあなたも。今夜もこのラジオを聴いてくれて、ありがとうございます。
 私が初めて一人暮らしをしたのは大学生の時ですね。東京には遊びに行ったことはあれど、住むのは初めて。“上京“という二文字は、私のような地方出身者からすると、いわば憧れの新天地。もちろん楽しみもあれば不安もありました。とはいえ、いわゆる寮みたいなところでしたから、朝夜とご飯がついて、男子禁制、門限は深夜0時。厳しすぎず、かといって最初からアパートに一人暮らしよりは断然安心ですよね。上京したら、電車でどこまでも行けて、自由に買い物もできて、楽しいこといっぱいと思ってましたけど、怖いことももちろんあります。
 たとえば電車。地元の普通列車は単線で、しかも2両編成が当たり前。カタンカタンとゆっくりホームに進入します。かたや、都会の電車は十何両もあって、ゴーっとホームに入ってきますよね。端っこに立ってると、ふわぁっと意識が遠のきそうなくらい。あれが怖くてね~。いまだにあの感覚には慣れません。あとは電車繋がりで痴漢でしょうか。別にそれほど色っぽくも可愛くもない私でも遭ったことがありますから、きっとたくさんの女性が経験していることでしょう。
 私の場合、住まいはさっきも言ったようにそこそこ安全でしたから、門限ギリギリまでアルバイトをして帰ってもわりと明るい道を通れましたし、部屋自体も狭いながら快適でした。住まいに関して言うと、私は実家のほうが怖いんですよね。古い家ですから隙間風でカタカタと窓や戸が鳴ったり、ギシギシと誰かが歩くような音がしたり。昔、夜中に部屋の中に干されているつなぎを見た時は、ぎょっとしたものです。とはいえ、長く住めば慣れるものですが、皆さんはいかがでしょう?
 どちらかと言うと、幽霊や目に見えないものが怖いという方も多いはず。私もよく「怖いものはありますか?」なんて質問をされますが、ここで想像してみてください。一人暮らしの夜、枕元に幽霊が立ってるのと、枕元に人間が立ってるの。後者のほうが怖いと思いません? まぁ私自身が幽霊に関して“怖い"という認識がないからかもしれませんね。存在を否定するわけではありませんが、私の目には見えないので、いてもいなくてもわからないでしょう? それに、何も幽霊が悪さをするとは限りませんよね。以前、金縛りにあった時、知り合いの幽霊が私にのしかかっているとはっきり認識したことがあります。それでも私は、そんなことする人じゃないという思いと共に、私は幽霊が見えないからこれは幽霊でないという半ばこじつけを駆使して、幽霊の仕業とは認めていません。きっと疲れが溜まっていて、夢と現実が混同したのでしょう。それくらいの認識なのです。幽霊だからと言って、私たちに危害を加えると決まったわけではありません。むしろ見守ってくれているのかも。
 話を戻して、枕元に生身の人間がいるほうが怖いという私の持論ですが、幽霊はまぁ壁抜けもできるでしょうし、天井も窓も、高層階だって関係ありませんよね。でも、生身の人間は物理的にどうにかして侵入しているはず。合鍵を持っている、窓を壊して入ってきた、待ち伏せていた。どれを取っても、どう考えても、幽霊より怖い!!
 幽霊がどこまで生きている人間に干渉できるかはわかりませんが、少なくとも生身の人間はなんだってできますよね。しかも目の前の寝ている人間は無防備、無抵抗、無意識です。なんだってできますよね? 大事なことだから2回言いましたよ?
 ホラー映画やホラーゲームは苦手ですが、どちらかというと音や演出に驚いてしまうたちで、出てくる存在に対してはわりとフィクションと割り切ってしまいます。もちろん、音もなく近づかれて急に姿を現されたりするとぎゃーっと叫びますが。それは演出のうちですよね? 屁理屈? いえいえ、そんなことありません。
 それはともかく、私は基本的に幽霊より人間が怖いという認識なので、ホラー映画も邦画以上に洋画のほうにある種、別の恐怖を感じてしまいます。邦画に登場する幽霊は、生きている間の無念を晴らそうと行動しますよね。行動原理もわかるし、こちらからすると無秩序な動きをするのもわかります。だって、幽霊ですから。目に見えないのは怖いですが、いえ、目に見えてもそれはそれで怖いですが、『幽霊だから』で納得できるじゃないですか。
 でもね、海外のホラー映画の主人公って『人間』が多いんですよ。行き着くところまで行き着いてしまった、もしくは生まれながらにそうだった『人間』です。私たち、特に日本人の感覚がそうなのかもしれませんが、生きている人間は理性があって、無意味にこんなことしないみたいなことを、平気でやってくるんですよ。音もなく接近して躊躇なく葬ったり、チェンソーを振り回したり。もちろんフィクション、エンターテイメントですから、実際にはそう滅多にあることではないのでしょう。ただスプラッター系が流行る海外と、オカルト系が流行る日本とでは、恐怖への意識が違うというだけで。
 対戦型のホラーゲームもありますが、やっぱり生身の人間のほうが怖いなぁと感じますよね。まぁ私だけかもしれませんが、そんな冷酷なことできるプレイヤーがいるんだぁとか、それこそホラー映画のごとく音もなく忍び寄る忍耐とその技術を持ってる人がいるんだぁとか。そう考えると、目に見えない死後の世界よりいま生きている現実世界のほうがどれだけ怖いのかと、慄いてしまうことがあります。
 視点を変えて、もう少し現実的な話をすると、他に私が怖いものは『静電気』と、あとは『雪道の運転』でしょうか。ずいぶんベクトルが違うなと思われたかもしれませんが、日常的に遭遇する確率が高いですからね。恐怖せずにはいられません。空気が乾燥する時期はおいそれと車のドアに触れられません。ひどい時は火花が見えます。雪道の運転に関しては言わずもがな。自分だけが気をつけていてもダメだし、周りに気を取られすぎてもいけない。本当に神経を使います。そんな冬も過ぎ、これからは湿気と戦わねばならない時期が迫って来ましたね。暑いのも苦手なので、これからの季節が怖いです。
 さて、そろそろお別れの時間です。図らずも今夜は"ある意味"で、眠れない夜のお供になってしまいました。また来週お会いしましょう。深見小夜子でした。














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