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序話 またきてしかくい精霊王
04
しおりを挟む「出張。俺たちも一緒に行くんだが……タローは精霊だろう?」
「うん! そうなんだよ~」
「ふふふ、だったらきっと行けば楽しい。卵だったから記憶がないかもしれないが、出張先は精霊界のお城。タローの故郷だ」
「っ、ぅえ……!」
きっと興味を持つと思い、何気なく告げた出張先。
けれどタローは驚いたように目を見開き、それからしゅんと目線を下げる。
これはどうも、いけない。
タローの唇が「うん、わかったよ」と紡ごうとするのを見て、俺はなぜか咄嗟に、タローの頭にポンと手を置いた。
「ぅ、……しゃる?」
「うーん……そう思ったんだが、故郷でも、タローを連れていくのは心配になってきたな」
「えっ」
「タローはまだ学校にも行っていないから、他国なんて遠い国へ行くのは、例え俺たちと一緒でも許せそうにない。タローの楽しみを奪ってしまうけれど……」
「あ……」
「霊界への出張、タローはお留守番だ。俺とアゼルで危険がないか見てくるからな」
──だからタローはゆんちゃんたちと一緒に、お城で待っていてくれないか?
そう言うと、タローはぽかんとしたが、ゆっくりと強ばっていた表情を安堵させる。
そして丁寧にこくりと頷いた。
いいこだと言い、優しくなでる。
大丈夫。大丈夫だぞ。
今まで、自分が精霊だと自覚しているタローに、精霊界へ帰りたいかと聞いたことはない。だからあんな顔をした理由は、わからない。
しかし理由はわからなくても、自分の家族にはいつでも笑っていてほしい。
どんな理由であれ、タローが幸せであればなんだっていいんだ。
俺はニコリと明るく笑って見せて、両手をパシンと打ち鳴らした。
「さあ! マルオたちが取りにくる前に、クッキーを作ってしまわないと。そうしたらお昼ご飯まで、鬼ごっこをして遊ぶぞ? ふふふ、シャルは遊ぶのが好きだから、張り切って作るからな」
「あうぅ、しゃ、しゃるっ」
「んー?」
「あ、あり……う、私、くっきー待ってる! おにごっこもするよ!」
背を向けて歩き出そうとすると、背後から元気な声が聞こえる。
振り返ってピースをしつつ、俺は今度は少し茶目っ気を混ぜて笑った。
「愛してるぞ、タロー」
お前が精霊だとかは、俺には関係ない。他種族だということの弊害は、もう胸がすり減る程承知している。
だって俺は人間で、アイツは魔族の王だから。
種族が違っても、血が繋がってなくても。
異性じゃなくても、世界が違っても。
俺とアイツは家族になれたんだから──お前とだって、家族になれるだろう。
(まったく……天使に大人気のアゼルだが、もしかして精霊にはタローなのか?)
洗い物をするために水魔石のついた蛇口に触れながら、フッ、と笑いとも溜め息ともつかない息を吐く。
守るには敵が多くて大変だけれど、それでも譲れないものだから仕方がない。
できればもう操られたり死んだりは、したくないな。
けれど嫌な予感は当たるところが、俺が巻き込まれた異世界人であるが所以なのかもしれない。
しかしなにがあっても、もう離れないのだ。愛する人たちは、きっちり守る。両腕の届く範囲でも、懸命に。
(お前がそうしているように、な)
俺は左手を握り、親指で薬指の彼をなぞった。
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