本日のディナーは勇者さんです。

木樫

文字の大きさ
671 / 901
十三皿目 ラブリーキングに清き一票

23

しおりを挟む


 リューオの衣装は、ふわりとしたセーラー服のような服だ。

 襟の部分はピンクで、リボンは鮮やかな赤にフリルまで付いている。

 丈が短くへそ出し状態になり、リューオの見事に割れた腹筋が夏らしく晒された、実に愛らしい衣装なのだ。

 太ももが惜しげもなく見せつけられた短すぎるスカートも、当然ピンクである。

 白のニーソックスと赤いローファーはオーガの女児用なのか、百九十近い長身のリューオでもぴったりのサイズだった。

 そして薄いブラウンの手袋に、付け袖。
 セーラー服の後ろで絞られているらしい長いリボンが僅かに揺れ、威圧感を出している。

 頭の上には、かわいらしい飾りが付いたミニハット。こだわりの逸品だな。

 それじゃあ──話を戻そう。

 金髪ツンツンの凶悪な顔つきでアゼルよりガタイのいいリューオが、このラインナップの衣装を身にまとって出てきたら、だ。

「……ぇ、ぇう……」

 ──そりゃあ俺だって、目をそらしてしまうに決まっているだろう……!

 目を開けられずに顔を手で覆い、あんまりな惨状に震え上がった。

 笑えない。
 笑えないくらい悲惨だ。

 俺がリューオなら、三日は部屋から出たくない程恥ずかしい。

 雄々しい巫女さんなんか目じゃないぞ。
 大の大人が魔法少女だか美少女戦士だか、わからない格好をするなんて。

「あはははははは! 勇者、君は最高じゃないか! 絶対に似合うと思ったんだ!」

 どうしようかと悩み込んでいると、空気を読まない殺されたがり幼女のおじさまボイスが、冷え切った沈黙を引き裂いた。

「これほど愉快な格好なら、あの無駄に似合ってしまったナイルゴウン一行の面白みのない展開に飽いているゲテモノ食いのオカ魔族たちの票を、一気に掻っ攫えるぞ!」

 幻術に近い擬態だから声がそのままなグウェンちゃんの、非常にご満悦で全く悪意のない、無邪気な賞賛。

 拍手すら送っているそれが聞こえた瞬間、キュピーン、と未来を察知してしまった。

「……うぅ」

 俺は困りきって眉を垂らしながら、トコトコとベッドで眠るタローとマルオのもとへ向かう。

「…………結界。魔法反射三重、熱遮断三重、音遮断三重……。また部屋が壊れる。天使なんかきらいだ……」

「──炎、燃えろッ! 渦巻けッ! 百槍百弾百龍擊ィィィィィィィィィイイイィィィイイッッ!!」
「うん?」

 ──ドゴオオォォォオオンッ!!

 俺が避難を完了させた途端、魔法少女というより悪魔超人なリューオの炎魔法が炸裂した。

 噴火じみた爆炎と爆風が迂闊な幼女に襲いかかって、俺は泣きたい気分でグウェンちゃんごと吹き飛んだ部屋の壁を見送る。

 偽幼女と女装した聖剣の勇者が外でやり合う声を聞きながら、肩を落とした。

 ポケットマネーで足りればいいんだが……、と自分の貯金を思い返し、修理費用に震え上がるしかない。

「ん……んー……? んー……おとさ……うーしゃるー、ぎゅーしてぇ」
「……ムッ! オキタ、マルオ! オキタ! オハヨウシャル! ギュー、マルオモ! イイカ? ダメカ?」
「いいよ。おいで、二人とも。できれば寝ぼけたまま、俺の格好には触れないで二度寝をしてくれると、シャルは嬉しい」

 こうして意図せずゼオと同じく光のない瞳で諸行無常を噛み締め、悟りを開くこととなった午後。

 俺は癒し担当のタローとマルオを抱きしめてなで、寝かしつけることしかできなかった。

(ただアゼルの応援に行きたいだけなのに、魔界はどうしてこうなるんだ……?)



しおりを挟む
感想 216

あなたにおすすめの小説

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

処理中です...