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十三皿目 ラブリーキングに清き一票
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「「せーのっ!」」
「あーはっはっはっはっ!」
纏っていたタオルケットを一斉に取り払うと、グウェンちゃんはそれは楽しそうに腹を抱えて笑いだした。
なんて失礼な天王だ、と抗議をするところだが、今回ばかりは文句を言えない。
こちらは笑えないほど、げんなりしているからだ。
まず、〝ディメンションムーブ〟と言う天王の固有聖法がある。
いろいろと制約があるらしいが、端的に瞬間移動である。
一度行ったところなら行けるコレで、報告前に城下街観光をしたグウェンちゃんは、女装コンテスト会場へ向かうアゼルたちを見かけて後をつけたらしい。
聖法が魔族に感知されない特性を惜しみなく活用している。
これまでのアゼル事情やコンテストの話は、そこから知ったと言うわけだな。
そして翼を引っ込めつつ、その能力で城下街からあれやそれやと衣装を買ってきたグウェンちゃん。
彼によって、俺たちは見事なクリーチャーにメタモルフォーゼしていたのだ。
グウェンちゃんはまだいい。
魔法や擬態薬を使っていないかの検査があるらしいが、聖法は大丈夫という屁理屈で、見事な美少女になっている。
タローよりいくらか年上かなと言った年頃で、銀髪を二つ結びにした愛らしい幼女だ。
際どいミニスカとハイソックスの絶対領域は、流石の代物である。
中身は何百歳というおじ様なのだが。
女装コンテストだから少年体で衣装を女児のものにしたと言うが、見た目は普通に女の子である。
リューオが三白眼で「これはジャンル的にロリババア、違うロリジジイか。なんだよそれ意味わかんねェ」と睨んでいた。
ショタコンのリューオでも、グウェンちゃんはノーサンキューなんだな。
対する俺は緋袴に白衣、襦袢、足袋に草履だ。
黒いストレートロングなカツラまでかぶらされ、それは後ろでひとつにまとめられている。
どう見ても巫女服であった。
巫女服であるが、屈強ではなくともちゃんと筋肉はついているし、身長も高い。
間違っても女性には見られない自分の顔を加味すると、男の巫女だ。
これで腕を組んで仁王立ちしたら、甘く見積もっても神社の番人かなにかだろう。
お守りを買いたければ俺を倒していけといった風体にしか見えない。
というか、巫女さんと俺を混ぜて残してはいけないところをチョイスして残した、モンスターじゃないか。
──ふぅ……仕方ないな。こうなったらいっそ笑われたほうがいいか。
なってしまったものはどうしようもないのだから、これがニュー俺でいくしかない。
腰に手を当て堂々と立ち、目の前のリューオから目をそらしつつ、俺は深く頷いた。
「笑っていいぞ、リューオ。化粧をするまでもない。グウェンちゃんに衣装チョイスを任せたのは、関西人に大喜利を仕掛けるようなものだった。失敗だな」
「それはわかったからこっち見ろよコラ。直視しろよ。この失敗じゃ済ませない魔法少女俺を。そして笑えよ。思う存分。笑って処理してくれよ、シャル。マブダチだろ? 俺ら」
「…………あの、ちょ、ちょっと時間を貰ってもいいか?」
「おう。あくしろよ」
ドスの効いた低い声で無感情に告げたリューオに顎でクイッとさされ、俺は両手で顔を覆って視界を遮った。
よし。よしわかった。
考えるんだ。リューオの心情を。
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