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十皿目 ワンとニャー
16(sideアゼル)
しおりを挟む機嫌のいい俺に気がつくと、一瞬でゲッ、とでも聞こえそうな顔になったリューオ。
しかし俺がなにか言う前にツカツカと歩いてきて、ガシッと腕を取った。
なにしやがるこの年中御無礼野郎。
「よう魔王ッ! 今から飯か? つまり暇だろ? 暇だな? 昼飯俺に付き合えよ」
「は? お断りだ。俺は今から執務室で飯を食って、その後魅惑のティータイムなんだよッ!」
「けちけちすんなやテメェッ! 俺とティータイムどっちが大事なンだオラ!」
「ティータイムに決まってンだろ。間抜けかお前? デコピンすんぞコラ」
「おいやめろ指をこっちにむけんじゃねェ。テメェのデコピンはデコピンじゃねェンだわ。指型殴打装置だかんな。自覚しろチートの擬人化がッ」
無礼なリューオは人間と魔族のポテンシャルの違いを説明しながら、ギャーギャーと一人で騒がしい。
脳筋風情が、俺のティータイムへの道を邪魔すんじゃねえ。
何人たりとも足止めさせるか。
舐めんなよ、俺のシャルタイムへの執念を。
馬鹿じゃねぇのかと一蹴しながら騒ぐリューオをあしらうと、リューオはギロッ! と凶悪犯罪者バリの鬼気迫る顔で睨んできた。
「魔王よォ……大人しく俺の相談に乗るなら、この間二人で鍛錬した後顔洗ったシャルに貸したタオルをやる」
「お前の部屋でいいのか?」
「…………」
なにしてんだ? 早く来やがれオイ。
こちとらこう見えて忙しいんだよ、暇じゃねぇわアホ。
多忙な俺が慈悲深く馬鹿勇者の話を聞いてやるって言っているのに、なにぼうっとしてんだコノヤロー。
腑に落ちない様子でついてきたリューオを急かし、俺たちはリューオの部屋──もとい、シャルの使用済みタオルへ向かって歩き出した。
リューオの部屋には、すぐに到着した。
俺はもっくもっくとサンドイッチを食べながら、昨日シャルに聞いたことを実践した結果らしいコイツの話に、耳を傾ける。
しかし話半分に聞きながら、俺の視線はリューオの手にあるタオルに釘付けだったりした。
ちゃんと話を最後まで聞かないと渡さないと、残酷な仕打ちを受けているのだ。
クソ、コイツ勇者じゃなくて魔王じゃねぇか? 違う。魔王は俺だ。チクショウめ。
「テメェ話聞いてねェだろ。シャルに収集癖バラすぞオイ」
「それをバラすなら今のうちに口封じがてらワンパン決めるかんな。そしてこの悪の所業をユリスにバラすぜ」
「!? 悪魔かッ!?」
「ハンッ。魔王様だぞ、クククッ……!」
あっちこっちにいろんなものが置いてある散らかったリューオの部屋で、暗黒系の笑みを浮かべる。
それを見たリューオは、ガオウッと吠えてふてくされた。
まあすねんなよ。こう見えてそれなりに、ちゃんと聞いてる。
俺だって人に相談されるという稀有な状況に、シャルを参考にすることで多少慣れてきたんだぜ?
褒めてくれてもいい。ふふん。
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