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3.もう一番目じゃいられない
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しばらく抱き合ったあと。
安心が冷静を連れて戻ると恋の熱が解け、冬を目前にした夜の冷気に二人揃って身震いした。
自然に夜鳥の部屋に招かれた朝五は、バイト帰りの疾走で汗をかいていたためシャワーを借りた。風邪を引くとせっつく夜鳥に従ったのだ。
シャワールームから出ると新品の下着と夜鳥のスウェットが用意されていた。
寝間着姿だった夜鳥には不必要だったはずなのに、わざわざ買いに行ってくれたらしい。
暗に宿泊を推奨されていることもあり、朝五は洗面所で一人自分の恋人の愛らしさに感動していた。
久しぶりでもある今夜はサービスしてやらねば、と気合を入れる。
暗雲の中で自己嫌悪に身動きが取れなくなっていた朝五は、好きだと気づいて、同じ気持ちを貰って、実にふわりふわりと浮かれていた。
「夜鳥~」
単身者向けのワンルーム。
洗面所のドアを開ければ、すぐにベッドが見える。
そこには上掛けを被らずに朝五に背を向けて横になる、気の利く恋人の姿もあった。
夜も遅い時間の訪問からずいぶん経っているので、夜鳥はついに睡魔に見舞われてしまったようだ。
朝五とて明日は朝から講義を入れているため、本来なら夜鳥に倣うべきだろう。
奮わない成績でも、学んでいるからには維持しなければならない。しかし翌朝の苦労より、今夜は夜鳥を愛したかった。
(夜鳥も同じだと思ったのによ~……)
拍子抜けした朝五は残念に思うが、無理強いする気はなかった。
とはいえ、このまま眠るのも寂しいというのが事実である。
暖房が吐き出す暖かい空気を切って歩く。返事をしない夜鳥の体を跨ぐようにベッドに両腕を突き、顔を覗き込んだ。
「夜鳥、寝てんの?」
潜めた声をかけてみる。夜鳥のまぶたは閉じられ、身じろぎもしない。どうやら本当に眠っているようだ。
(疲れてんのかねー……普段いつ寝てんのとかも知らんし、仕方ないよなー……)
朝五はこれ以上甘えて起こすのもかわいそうだと納得し、部屋の照明をオレンジ電球に変えた。
多少名残惜しんだことは仕方がない。
朝五は夜鳥を受け入れるつもりでシャワーを浴びていたので、自分で中に触れていた。期待に疼いてしまうのは当然だろう。
せめて体温を分け合おうと布団の中に潜り込み、未練がましく夜鳥の背に身を寄せる。
夜鳥の項に鼻先を当て、静かに深呼吸もした。言い表せないが、安心する香りだ。今夜はこれで構わない。
「おやすみ」
朝五はまぶたを閉じ、夜鳥と同じく夢の中へと意識を落とそうとした。──……が。
「…………」
しばしカチ、カチ、と秒針が奏でる子守唄を聞きながら、朝五は眉間にシワを寄せ、意味もなくモソリと足を組み替えた。
大学にアルバイトと忙しい一日だったはずが、一向に眠気がやってこないのだ。
それどころか夜鳥の匂いに興奮して、無意識に手が自分の股座に触れている。素直なお手手だ。
そういえばこの二週間、夜鳥のことばかり考えていてろくに処理もしていなかったことを朝五は思い出した。
思い出すと、朝五の手はスウェットの中に触れ、下着の上からその気になりつつある茎を引っ掻く。
ピクン、とももが震える。
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