本能寺燃ゆ

hiro75

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第二章「性愛の山」

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 十兵衛と、このままずっと居られると思った。

 彼が何を望み、何をしようとしていたか、戦のことも、天下のことも、子どもの権太にはまだ分からなかったが、十兵衛の傍にいることが楽しかった。

 ただ、楽しかったのに………………

 傍に居ては、いけないのだろうか?

 十兵衛の傍に居ても、何もできないかもしれない。

 戦もできなければ、まつりごとのことも分からない。

 三宅弥平次や真田八郎のごとく、役には立たないかもしれない。

 だが、傍にいたかったのだ。

 いや、いたいのだ。

 そう思うと、権太は居ても立ってもいられない。

 今すぐにでも、十兵衛のもとへ行きたい。

 もう戻ってこないなら、こちらから十兵衛のもとへと赴きたい。

 だが、十兵衛は何処に行ったのか?

『天下を取りに』と言っていたが、天下なんて………………どこにあるのか?

 権太には分からない。

 どこに行けば、十兵衛に会えるのか分からない。

 十兵衛は、どこに行ったのか?

 天下とは何処か?

 権太は考えた。

 どうすれば十兵衛に会えるのか?

 何処に行けば会えるのか?

 天下とは何処か?

 源太郎やおえい、村人たちが年越しの準備をしているのを脇で見ながら、権太は考え続けた。

 ときに、あまりに考え事に耽っているので、源太郎に怒られることもあった。

「みんな忙しんだ、ぼーっとせずに、手を動かせ」

 怒られて正月の仕度を手伝うのだが、それでもしばらくすると、十兵衛のことが頭に浮かんで、手が止まってしまう。

 すると、父が目をつけ、また小言をいわれる。

 慌てて手を動かすが、すぐに手が止まる。

 それを何度も繰り返すと、源太郎が大きなため息を吐いた。

「権太、まだあの男のことを思いだしておるのか?」

 ぎくりとして、父を見た。

 源太郎は、彼には珍しく厳しい顔をしていた。

 もしかして、心の中を気とられた?
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