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泥まみれのプライド!!
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セームを除いたカオスシンガースのメンバー4人は、練習の前に話し合うことにした。或斗はリーダーとしてメンバーに意見を求めた。
「もし練習をやるのであれば、セーム君抜きでやることになる。一応私にも考えはあるけど、なるべく皆の意見を尊重して練習をやるべきか、やらないべきかを決めるわ」
「……やる」
「私は……ごめん……なんか気になっちゃって集中出来ないと思う」
「やるに決まってるさ! これぐらいの事気にしてちゃ、上手くなんねえしよ!」
「皆の意見はそんな感じなのね。私の意見はやる。一応、皆に教えている立場の人間でもあるし、こんなことで自分の仕事を放棄するのは私自身が許せない。例えセーム君がいなくても練習する人が一人でもいるのなら私はやるわ。アデルちゃんは、モチベーションが上がらないというのであればお休みしてもいいわよ。私は歌というのは気持ちでかなり左右されるものだと思っているし、出ろなんて強制はしないわ」
「で、でも、皆練習する気だし……」
「じゃあせめてセーム君の様子を確認してくれないかな?」
「分かったよ、それぐらいだったら」
「アデル! あたしのかわりに練習さぼったセームをはたいてやってくれよ!」
「いやいや、セーム君相手でも流石に暴力は可哀そうだよ!」
「じゃ、今日は基礎トレーニングメインでいくわよ」
左京、馬上、或斗はコミュニティに残って練習することになり、聖アデルは先に練習会場を抜けて、サークルの連絡網をもとに、セームのアパートへと向かった。
セームのアパートはコミュニティセンターからあまり離れていないところであり、聖は自転車で15分ほど漕いで、セームのアパートについた。
聖はアパートの階段を上がり、一番奥のセームの部屋のチャイムを鳴らした。
ピ ン ポ ン♪
チャイム音が鳴るものの、室内から物音が全く聞こえない。しかし、セームこと塩川聖夢は部屋の中にいた。彼は気配を消して潜んでいるのだ。
「う~ん、いないみたいか~」
ぴぽぱぽぴ♪
聖はセームに電話をした。しかし、まったく出る気配がない。仕方なく、近所でセームがいそうなところを探した。コンビニで立ち読みしていないか、近くのスーパーで買い物してないか、そんな予想を立てて探したが見つからなかった。仕方なく聖は或斗に連絡を入れる事にした。
「或斗ちゃんごめん、セーム君に会えなかった! アパートに行ったし、電話もしたし、近所も探したんだけどいないの!」
「分かったわ。練習は終わったし、アデルちゃんは家に直行していいわよ。」
「分かったよ。ごめんね役に立てなくて」
聖は電話を切り、そのまま家へと帰宅した。
現在自分のアパートにいるが、全くゆっくりとできていない。明かりをつけず、物音を立てず、携帯の電源は切り、とにかくこの部屋に誰もいないと思わせる行動をとっている。昭和に建った木造アパートだけあって、抜き足差し足でも、ぎぃ~と音が鳴る。まだ寝るには早いが寝てしまおうかなと思った。
ピ ン ポ ン♪
チャイムが鳴った。さっき聖が来たから、今度は他の奴か? それとも某協会が受信料払えと催促に来たか?
「お隣の村山で~す。宅配のお荷物預かっているので、渡しに来ました~」
お隣さんが宅配の荷物を預かっていたのか。ならば、出なければいけないなと思った。そういえばお隣って女だった気がするけど、今の男の声だったようなと思いながら、アパートのドアを開けた。
「こ・ん・ば・ん・わ」
部屋を開けると、現れたのは或斗の笑顔だった。その顔を見た瞬間、脊髄反射的にドアを閉める動作に入った。
「ちくしょう騙された! なんだよ村山って!!」
しかし、ドアを後数mm引けば、閉まるというところで、ぴたっと動きが止まる。指がもげそうなくらい力を入れても、ぴくりともドアが動かない。自分が入れてる力に反発するように、ドアがゆっくりと開かれる。
「うふふふふふふ♪」
或斗の笑顔と笑い声がめっちゃ怖いんだけど! 絶対これは怒っているやつだ! 逃げたい! いや、逃げようにも今自宅だ!
「逃げちゃ駄目よ♪ 逃げちゃ駄目よ♪ 逃げちゃ駄目よ♪」
抵抗は空しく、我がテリトリーに或斗が入ってしまった。
狭いアパートに二人の男子が座布団に正座で座って会話する光景があった。
「さあてと、何から話しましょうかね?」
或斗は優しい声で会話をスタートさせた。絶対自分がさぼったことを怒ってここにきたに違いないと思った。何も考えずにただ謝ろうと思った。
「申し訳ありませんでしたぁ!!!」
壁の薄いアパート全体に響きそうな大きな声で或斗に土下座で全力の謝罪をした。
「では、申し訳なく思っているなら頭を上げなさい」
謝らなくてもいいんだよという感じの声で或斗が俺にささやいた。
一安心して頭をあげた。
ずぼぉ
自分の、みぞおちに圧迫感、そして鈍い痛みを感じた。或斗の拳が自分の身体に突き刺さっていた。
「う゛え゛!」
「まだ申し訳ないと思うなら、いくらでも腹パンしてあげるわよ♪」
「……いえ、もう充分です……」
或斗はしばらく腹パンの痛みに苦しむ自分を考慮し、自分が話を聞ける状態になるまで待ってくれた。
「ごほん、本題に入りましょうかね。あなたの気持ちも大体分かるわ。同情出来ないこともない。でもね、無断で休んだら皆心配するでしょう。あなたがただ休むだけでも他の人が心配するし、練習に集中できないことになってしまう。自分が何かやらかせば、他の人にも迷惑をかけるのだという事を今後意識しなさい」
「も、申し訳ないです……」
今この時間がとても苦しく感じる。この手の身に染みるお説教。怒鳴られるタイプの説教もつらいもんだが、或斗のように優しく語るような説教はかなり精神的に来る。合唱祭の失敗で心が弱り切っていた自分の目から自然と涙が出てくる。第三者から見れば、自分は今とんでもなく無様な姿を晒しているんだろうな。次の言葉が飛んでくるかというタイミングで、或斗が一呼吸おいてから言葉を発した。
「あとね……あなたに申し訳ないことをしたと思っているの……私はあなたの成長のため、音楽の楽しさを教えるために、無茶を承知であえてソロを任せた……ここ最近セーム君の成長や変化が見られて、良かったと思ってた……でも、結果的にあなたを傷つけた。私はあなたに謝罪したい……どうすれば許してくれるかな……」
或斗が酷く落ち込んだ顔をしている。こんな顔を見るのは初めてだ。むしろこんな顔されたら逆に自分が申し訳なく思う。
「お、お前は悪くなんかない! 失敗した自分が悪いんだ! 自分はプレッシャーに負けてソロとして全力を出せなかった!! 自分が練習しまくったと思っていたからだ!! 練習日以外でも自主練習したり、練習が終わっても、アパートに帰ってから風呂場でソロの練習して、隣の部屋から壁ドンまでされたり! それでも自分の努力が足りなかったんだ! いいや、そんな言い訳通じない!! ソロを任された以上、上手く歌うのが当たり前なんだ! だからお前が悪いと思うことはないんだ! 責めるなら自分を責めてくれよ!」
「ありがとう……そして、よく言ったわ……今のあなたは鼻水たらしながら泣いていて、無様でカッコ悪いわ……でもそれはあなたが人一倍歌人としての誇りを持っているからよ……泥臭いけど、かっこいいわよ……」
或斗に指摘されて、自分がとんでもなく酷い顔をしている事に気づいた。途端に滅茶苦茶恥ずかしくなった。おまけに自分らしからぬ熱い発言までしてしまっては、穴があったら入りたい気持ちである。
「あっ、いつものセーム君に戻っちゃったわね、とりあえず顔を洗ってきなさいな」
「……うん」
やはり自分はどこか決まらないな……。
少々の時間をおいて、会話が再開された。
「どう? 次の練習は行ける?」
ついにこの質問が来たか。自分は弱気な態度で答えを返した。
「……行ってもまともに歌えないと思う……今歌う事がとても怖いんだ……アパートに一人でいても自然と歌う程、歌は好きだった……でも今は歌うことに拒否反応が出ている……口から音色を出すのも嫌だ。歌を聴くことすら嫌な状態なんだ……」
「……こういう場合の治療法知っているけど、知りたい? ちょっとお金はかかるけどね」
「話聞くだけなら……」
「もう一度ソロをやって成功させることよ」
「はぁ!? 無理! 無理! ソロどころか歌うことすら困難な状態なのに!」
「もし相手が強大な敵であれば逃げる選択肢をとるのもよし。でも現実というのはそんなに甘くないのよ。音楽以外の場面で、あなたにもう一度似たような場面あると思うわ。結局の所、トラウマを克服するにはトラウマに勝つのが一番なのよ」
「自分は逃げたいな……」
「さっきのあなたの歌人の誇りはどこへいったのよもう……というわけでこれね」
或斗がビラを一枚渡した。そのビラにはAKT大学音楽講座と書いている。
「今度の土日に、市民向けに大学内で声楽講座があるの。AKT県発祥の歌を学びながら声楽の技術を身につける事を目的にしているわ。最終的にみんなの前で歌の発表もあるの。私もよく知っている先生だからおすすめするわ」
「おい……お前、もしかして今日は営業目的で来たんじゃ……」
「隠す気はないから言うわ。あなたを誘うと、多少私にもメリットがあるの♪ もちろん参加費は自分で払うように。嫌なんて言わせないわよ、さぼり部員君♪」
「きたねえ……こっちが弱い立場なのをいいことに……」
断ろうにも断りづらい気持ちであり、或斗に音楽講座の前払い金として1万円を支払った。これは今月は少々節約しないといけなくなったな。お金を支払ったら或斗はさっさと帰宅準備を始めた。
「次の練習は出なくてもいいけど、ちゃんと土日の講座で勉強してくるのよ。成長したセーム君の姿を見るのを楽しみにしているわ♪」
というわけで短いお休みを頂いたが、土日はゆっくりもできず、音楽の勉強をすることとなった。
「もし練習をやるのであれば、セーム君抜きでやることになる。一応私にも考えはあるけど、なるべく皆の意見を尊重して練習をやるべきか、やらないべきかを決めるわ」
「……やる」
「私は……ごめん……なんか気になっちゃって集中出来ないと思う」
「やるに決まってるさ! これぐらいの事気にしてちゃ、上手くなんねえしよ!」
「皆の意見はそんな感じなのね。私の意見はやる。一応、皆に教えている立場の人間でもあるし、こんなことで自分の仕事を放棄するのは私自身が許せない。例えセーム君がいなくても練習する人が一人でもいるのなら私はやるわ。アデルちゃんは、モチベーションが上がらないというのであればお休みしてもいいわよ。私は歌というのは気持ちでかなり左右されるものだと思っているし、出ろなんて強制はしないわ」
「で、でも、皆練習する気だし……」
「じゃあせめてセーム君の様子を確認してくれないかな?」
「分かったよ、それぐらいだったら」
「アデル! あたしのかわりに練習さぼったセームをはたいてやってくれよ!」
「いやいや、セーム君相手でも流石に暴力は可哀そうだよ!」
「じゃ、今日は基礎トレーニングメインでいくわよ」
左京、馬上、或斗はコミュニティに残って練習することになり、聖アデルは先に練習会場を抜けて、サークルの連絡網をもとに、セームのアパートへと向かった。
セームのアパートはコミュニティセンターからあまり離れていないところであり、聖は自転車で15分ほど漕いで、セームのアパートについた。
聖はアパートの階段を上がり、一番奥のセームの部屋のチャイムを鳴らした。
ピ ン ポ ン♪
チャイム音が鳴るものの、室内から物音が全く聞こえない。しかし、セームこと塩川聖夢は部屋の中にいた。彼は気配を消して潜んでいるのだ。
「う~ん、いないみたいか~」
ぴぽぱぽぴ♪
聖はセームに電話をした。しかし、まったく出る気配がない。仕方なく、近所でセームがいそうなところを探した。コンビニで立ち読みしていないか、近くのスーパーで買い物してないか、そんな予想を立てて探したが見つからなかった。仕方なく聖は或斗に連絡を入れる事にした。
「或斗ちゃんごめん、セーム君に会えなかった! アパートに行ったし、電話もしたし、近所も探したんだけどいないの!」
「分かったわ。練習は終わったし、アデルちゃんは家に直行していいわよ。」
「分かったよ。ごめんね役に立てなくて」
聖は電話を切り、そのまま家へと帰宅した。
現在自分のアパートにいるが、全くゆっくりとできていない。明かりをつけず、物音を立てず、携帯の電源は切り、とにかくこの部屋に誰もいないと思わせる行動をとっている。昭和に建った木造アパートだけあって、抜き足差し足でも、ぎぃ~と音が鳴る。まだ寝るには早いが寝てしまおうかなと思った。
ピ ン ポ ン♪
チャイムが鳴った。さっき聖が来たから、今度は他の奴か? それとも某協会が受信料払えと催促に来たか?
「お隣の村山で~す。宅配のお荷物預かっているので、渡しに来ました~」
お隣さんが宅配の荷物を預かっていたのか。ならば、出なければいけないなと思った。そういえばお隣って女だった気がするけど、今の男の声だったようなと思いながら、アパートのドアを開けた。
「こ・ん・ば・ん・わ」
部屋を開けると、現れたのは或斗の笑顔だった。その顔を見た瞬間、脊髄反射的にドアを閉める動作に入った。
「ちくしょう騙された! なんだよ村山って!!」
しかし、ドアを後数mm引けば、閉まるというところで、ぴたっと動きが止まる。指がもげそうなくらい力を入れても、ぴくりともドアが動かない。自分が入れてる力に反発するように、ドアがゆっくりと開かれる。
「うふふふふふふ♪」
或斗の笑顔と笑い声がめっちゃ怖いんだけど! 絶対これは怒っているやつだ! 逃げたい! いや、逃げようにも今自宅だ!
「逃げちゃ駄目よ♪ 逃げちゃ駄目よ♪ 逃げちゃ駄目よ♪」
抵抗は空しく、我がテリトリーに或斗が入ってしまった。
狭いアパートに二人の男子が座布団に正座で座って会話する光景があった。
「さあてと、何から話しましょうかね?」
或斗は優しい声で会話をスタートさせた。絶対自分がさぼったことを怒ってここにきたに違いないと思った。何も考えずにただ謝ろうと思った。
「申し訳ありませんでしたぁ!!!」
壁の薄いアパート全体に響きそうな大きな声で或斗に土下座で全力の謝罪をした。
「では、申し訳なく思っているなら頭を上げなさい」
謝らなくてもいいんだよという感じの声で或斗が俺にささやいた。
一安心して頭をあげた。
ずぼぉ
自分の、みぞおちに圧迫感、そして鈍い痛みを感じた。或斗の拳が自分の身体に突き刺さっていた。
「う゛え゛!」
「まだ申し訳ないと思うなら、いくらでも腹パンしてあげるわよ♪」
「……いえ、もう充分です……」
或斗はしばらく腹パンの痛みに苦しむ自分を考慮し、自分が話を聞ける状態になるまで待ってくれた。
「ごほん、本題に入りましょうかね。あなたの気持ちも大体分かるわ。同情出来ないこともない。でもね、無断で休んだら皆心配するでしょう。あなたがただ休むだけでも他の人が心配するし、練習に集中できないことになってしまう。自分が何かやらかせば、他の人にも迷惑をかけるのだという事を今後意識しなさい」
「も、申し訳ないです……」
今この時間がとても苦しく感じる。この手の身に染みるお説教。怒鳴られるタイプの説教もつらいもんだが、或斗のように優しく語るような説教はかなり精神的に来る。合唱祭の失敗で心が弱り切っていた自分の目から自然と涙が出てくる。第三者から見れば、自分は今とんでもなく無様な姿を晒しているんだろうな。次の言葉が飛んでくるかというタイミングで、或斗が一呼吸おいてから言葉を発した。
「あとね……あなたに申し訳ないことをしたと思っているの……私はあなたの成長のため、音楽の楽しさを教えるために、無茶を承知であえてソロを任せた……ここ最近セーム君の成長や変化が見られて、良かったと思ってた……でも、結果的にあなたを傷つけた。私はあなたに謝罪したい……どうすれば許してくれるかな……」
或斗が酷く落ち込んだ顔をしている。こんな顔を見るのは初めてだ。むしろこんな顔されたら逆に自分が申し訳なく思う。
「お、お前は悪くなんかない! 失敗した自分が悪いんだ! 自分はプレッシャーに負けてソロとして全力を出せなかった!! 自分が練習しまくったと思っていたからだ!! 練習日以外でも自主練習したり、練習が終わっても、アパートに帰ってから風呂場でソロの練習して、隣の部屋から壁ドンまでされたり! それでも自分の努力が足りなかったんだ! いいや、そんな言い訳通じない!! ソロを任された以上、上手く歌うのが当たり前なんだ! だからお前が悪いと思うことはないんだ! 責めるなら自分を責めてくれよ!」
「ありがとう……そして、よく言ったわ……今のあなたは鼻水たらしながら泣いていて、無様でカッコ悪いわ……でもそれはあなたが人一倍歌人としての誇りを持っているからよ……泥臭いけど、かっこいいわよ……」
或斗に指摘されて、自分がとんでもなく酷い顔をしている事に気づいた。途端に滅茶苦茶恥ずかしくなった。おまけに自分らしからぬ熱い発言までしてしまっては、穴があったら入りたい気持ちである。
「あっ、いつものセーム君に戻っちゃったわね、とりあえず顔を洗ってきなさいな」
「……うん」
やはり自分はどこか決まらないな……。
少々の時間をおいて、会話が再開された。
「どう? 次の練習は行ける?」
ついにこの質問が来たか。自分は弱気な態度で答えを返した。
「……行ってもまともに歌えないと思う……今歌う事がとても怖いんだ……アパートに一人でいても自然と歌う程、歌は好きだった……でも今は歌うことに拒否反応が出ている……口から音色を出すのも嫌だ。歌を聴くことすら嫌な状態なんだ……」
「……こういう場合の治療法知っているけど、知りたい? ちょっとお金はかかるけどね」
「話聞くだけなら……」
「もう一度ソロをやって成功させることよ」
「はぁ!? 無理! 無理! ソロどころか歌うことすら困難な状態なのに!」
「もし相手が強大な敵であれば逃げる選択肢をとるのもよし。でも現実というのはそんなに甘くないのよ。音楽以外の場面で、あなたにもう一度似たような場面あると思うわ。結局の所、トラウマを克服するにはトラウマに勝つのが一番なのよ」
「自分は逃げたいな……」
「さっきのあなたの歌人の誇りはどこへいったのよもう……というわけでこれね」
或斗がビラを一枚渡した。そのビラにはAKT大学音楽講座と書いている。
「今度の土日に、市民向けに大学内で声楽講座があるの。AKT県発祥の歌を学びながら声楽の技術を身につける事を目的にしているわ。最終的にみんなの前で歌の発表もあるの。私もよく知っている先生だからおすすめするわ」
「おい……お前、もしかして今日は営業目的で来たんじゃ……」
「隠す気はないから言うわ。あなたを誘うと、多少私にもメリットがあるの♪ もちろん参加費は自分で払うように。嫌なんて言わせないわよ、さぼり部員君♪」
「きたねえ……こっちが弱い立場なのをいいことに……」
断ろうにも断りづらい気持ちであり、或斗に音楽講座の前払い金として1万円を支払った。これは今月は少々節約しないといけなくなったな。お金を支払ったら或斗はさっさと帰宅準備を始めた。
「次の練習は出なくてもいいけど、ちゃんと土日の講座で勉強してくるのよ。成長したセーム君の姿を見るのを楽しみにしているわ♪」
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