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潤がテーブルの上に転がした指輪を見ながら皆が固まる中、ジーク様が口を開く。

「…ジュン殿、エルフの方に貰ったと言ったの。その指輪が何を意味するか知っとるか?」
「えっと…エルフの国に来たら見せてくれれば良いとしか聞かされてないですが…何か不味かったですかね?」
「不味くはない、だがあまり見せびらかすものでもないのぉ。その指輪は言わば通行証のようなものだ。エルフェン皇国が友好国に贈るものじゃが個人で所有となると扱いがかなり難しい」

そう言ってジーク様はエルフェン皇国の階級について説明してくれる。

エルファン皇国民は別として外部から訪れる人々にはその国々の立場や地位などによってエルフェン皇国での階級を与えられる。もちろん階級が高いから好き放題できるわけでないが一定の信頼の証でもあるらしくかなり厳しく査定される。

最上級位から[大自然位オールナチュラ][自然位ナチュラ][大森林位オールフォレス][森林位フォレス][大木位ハイウッド][雑木位ウッド]となる。

一般的に訪れる人々の大体が下位二つになり、下級貴族や豪商は森林フォレス、上級貴族や王族には大森林位オールフォレスもしくは自然位ナチュラが与えられる。

そして潤がテーブルの上に転がした翡翠色の指輪を持つ人には最上位階級である大自然位オールナチュラが贈られる。

気をつけなければならないのは指輪を持ってる個人限定である為各国は基本国で管理し個人での所有は許していない。今回もクリスタリア王国からジーク様が親善大使として向かう為に国から借りてるらしい。

「ジュン殿、その指輪の事を他に言っておるか?」
「みー婆しか知らないですね、みー婆も興味なさげでしたけど」
「ならあまり言いふらさん方がええの。要らぬ厄介に巻き込まれる」

ジーク様がそういえば周りを見渡して皆さんが何なら頷いていたが今ので何かわかったのかな? とりあえず…アイテムボックスの中にしまっておこ。

それにしても…ただの指輪だと思ってたけど貴重なアイテムだったんだなぁ…大きな鳥さんあげただけなんだけど…これも言わないでおいた方がいいね。

「それにしても、ジークから聞いておったが随分と世間知らずじゃな。高位の魔獣を従魔にしてると思えばポンと国宝級のアイテムを出したり…聞けばかなり遠方より来とるらしいな?」
「えっと…日本っていう島国に住んでたんですが気がついたらみー婆と一緒に死の森にいたって感じですね…」
「ニホン…聞いた事はないが島国か。ダンジョン等の転移トラップに引っかかった口だな。無事で何よりだが帰還は絶望的じゃぞ?」
「これシュナイダー、そう脅すでないわ。ジュン殿はフリージア家がついておる。恩があるのでな」

正直に話せないのは心苦しいんだけど神様に連れてこられたとか言って大事になっても面倒だからね、転移トラップっていうのに引っかかったことにしとこう!

「ふん、まぁええわ。皆も指輪に関しては他言無用でええじゃろ。それよりジュン殿、ちと頼みたいことがあるんじゃがええか?」

ん? シュナイダー様からの頼み事ですか?いいですけどどうしましたかね?

「是非とも従魔であるみー婆と一つ手合わせしたいのじゃ。不死山猫イモータルリンクルは中々お目にかかれんでな」
「みー婆に聞いてみないとわかんないですけど…みー婆はお婆ちゃん猫だからあんまり強くないですよ?」
「ガハハ! なーに、戯れるだけのお遊びじゃ。ではみー婆に聞いてくれ、我等は鍛錬場に戻る。場所はレインに聞け、ほれジーク行くぞ」

一方的に伝えるとそのまま一気にお茶を飲み干してジーク様を連れて部屋を出て行く。んー、何だか台風みたいな人だなシュナイダー様は。せっかちさんだ。

「ジュン様申し訳ありません…なにぶん旧友であるジーク様の快癒の報を聞いてから元気が有り余るようでして」
「大丈夫ですよ、楽しそうで何よりですし。じゃあみー婆に聞いてこないとですね」

レインさんがメイドさん達に片付けと鍛錬場にお茶菓子を用意するように伝えて、みー婆に先ほどのことを話してどうするか尋ねれば……

『ナァ!ナァナ!』

いいわね!やりましょう!と部屋に入った時はごろごろと蕩けていたのに話を聞けば急にしゃんとしてフンフンとやる気一杯だ。でもみー婆?あんまり無理したらダメだよ?お婆ちゃんなんだからね?

『ナァオン』

わかってるわよ、とぺろぺろ甘えてくるみー婆を撫で回してレインさんに鍛錬場までの案内をお願いする。そんな俺達を少し離れてるところから見てるクオン達。

「クオン達もいくよ?ほらおいで、仲間外れなんてないからね」
『『『クゥン!』』』

どうやら本当に仲間外れにされると思ったのか声をかければすぐさま近くに寄ってきて三つの顔がすりすりと体のあちこちに押し付けられる。

ちょ、あんまり強くすると痛いからね?カノンとシオンほら落ち着いてって!

『『クゥクゥ』』
「ほっほ、ジュン様達は随分と仲良しですなぁ」
「そうですね、ではご案内致しますね。こちらへどうぞ」

クオン達と戯れているのに嫉妬したのかみー婆も身体擦り付けてきてみんなでおしくらまんじゅう状態になりながら前を歩くレインさん達についていく。

ほら、みんな歩きづらいからちょっと離れてよね?後で構ってあげるから!

『ナァ!』
『『『クゥ!』』』

今構え!じゃないよ全くもう…ほらよしよし…行くよみんなー。


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