私との子を授かれば殿下は側室を持てるので妊娠したフリをしたら、溺愛されていたことを知りました

弓はあと

文字の大きさ
20 / 29
ラブコメ短編バージョン(※長編版とは展開が異なります)

しおりを挟む


「ん……」

 殿下とキスをしたのは、これで二度目。
 一度目は私たちの結婚式の時。
 それ以来のキス。

 結婚式の時は、向かい合わせに立つ殿下がそっと私の肩に触れ、唇同士がチュッと軽く重なるだけのキスだった。
 幸せすぎてドキドキしたから長く感じられたけど、実際にはほんの一瞬の出来事だったはず。

 でも今しているキスは、違う。
 殿下にうしろから抱きしめられ、私は殿下の方へ振り返るように左を向かされ唇を奪われている。
 お互いの唇が触れてから、もうどのくらい時間が過ぎているのだろう。

 唇の柔らかい感触を教え込まれるような、長いキス。
 殿下とキスをしているのだと意識させられて、顔が熱くなってくる。

 口を閉じたままだから、息ができなくて苦しい。
 唇を離すために頭を動かそうとしたのに。
 胸までふわりと伸びる私の亜麻色の髪の根元へ指を差し込んだ殿下に、頭を固定されてしまって動けない。

 苦しくて、もう、限界……。
 そう思った時に、ようやく殿下の唇が離れていった。
 
 ぷはッと息をして、新鮮な空気を取り込む。
 髪の根元から移動した殿下の左手が、私の右頬をスルリと撫でた。

「ミーネ……」

 切なそうに眉を寄せた殿下の、青い瞳が微かに潤んでいる。
 こんな殿下の表情、初めて。
 憂いを帯びて、なんとも言えない色気を醸し出していて。
 思わずポーッと見入ってしまう。

「本当は、幼馴染のネイブルと結婚したかったのか?」

 少し掠れた、殿下の声。

「そ、ン……」

 そんな事はありません、と言おうとした私の唇に、頬を撫でていた殿下の左手の親指がフニ、と触れた。

「そうだという返事を聞くのは、ごめんやっぱりつらい」

 ふにふにと唇を揺さぶられる。

「柔らかいな、ミーネの唇は」
「っ……」

 先ほどのキスの感触を思い出してしまい、なんだか恥ずかしい。

「ミーネ、これから言う俺の質問に答えて」

 ふにふに触られているのは唇なのに、不思議と身体の奥の方がくすぐったい。

「ネイブルのことをどんな男だと思う?」

 どんな、男……?

 幼馴染だったネイブルと、小さな頃はよく一緒に遊んでたびたび喧嘩もした。
 室内で私が遊びたい時も、外で遊ぼうと言って強引に連れ回されることが多かったから。
 さすがに大きくなってからは一緒に遊ぶこともなくなり、喧嘩なんて一度もしていないけれど。
 小さな頃の印象は、強く記憶に残っている。

 殿下の親指が、私の唇からパッと離された。
 質問に答えて、ということかしら。

「ええと、ちょっと強引なところがありますね……」
「ふぅん……ちょっと強引な、ね……」

 あれ?
 再び殿下から、どす黒いオーラを感じるのは、気のせい?

 私の右頬を撫でながら、殿下がにっこりと微笑んだ。
 見惚れてしまうくらい、麗しい笑顔。
 でも、笑顔なのに笑っているように見えないのは、なぜ?

「では俺も、ミーネの望み通りの男になってやろう」
「んッ!」
 
 右頬から離れた手で後頭部を支えられるのと同時に与えられた、記憶に新しい殿下の唇の感触。
 ふわっっ
 まさか今日だけで、2回もキスをすることになるなんてっっ


 ん?
 んん??
 ムんン!?
 何か、入ってきた!?





しおりを挟む
感想 203

あなたにおすすめの小説

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。